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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
356/854

教皇選挙お休み

 教皇選挙4日目。この日の教皇選挙は前日に行われた選挙で一定数の投票がなかった為に初めての休みとなった。

 教皇選挙が休みの日、出馬している枢機卿は雑談等をしてゆっくり一日を過ごしたりする。


「……と言うわけです」

「ほう、それは興味深いです」

 秘密の中庭にある食堂ではヘイゼル、ササイ、ルナマリア、シャルマンが座って話していた。

「おや皆様、何を話しておられるのですか?」

 そこに不思議な表情を浮かべたカルミニアンが声をかけてきた。

「おや、カルミニアン殿ではございませんか」

「もしや騒ぎ過ぎましたかな?」

「いえ、迷惑になる程ではございません。皆様があまりにも楽しくお話をされていたので気になっただけです」

 周りの迷惑になっていないと言われて4人は安堵する。

「そうですか。実はシャルマン殿が話している話が興味深いのです」

 カルミニアンに説明したヘイゼルの言葉にシャルマンは僅かに照れる。

「それほど興味深いお話をなさっているわけではありません。この様なことがあったとお話をしているだけです」

「そのお話が興味深くおもしろいと仰っているのです。特に『ロード様は天使様の子供であったのか』とは。子供が考えることは本当におもしろいものです」

 謙遜するシャルマンにルナマリアが詰めよってはっきり言う。


 話を聞いてカルミニアンは成る程と思いながら空いている椅子に座る。

「それは確かにおもしろいです。そう言えばロード教が確立した当初はロードの持つ力から天使様の子であると広まっていたと聞いたことがあります」

 昔を思い出してカルミニアンかそう言うとヘイゼルとササイも思い出したのか懐かしそうにする。

「それは私も存じています。天眷術によって不治の病や飢えを救われたことで奇跡の力を持つお方は天使様かその子しかおられないと」

「聖人や聖女ですね」

「はい。ロードはまさしくそのお方であると信じられたそうです」

「おもしろいですねそれも」

 ヘイゼル、ササイ、カルミニアンの会話にシャルマンは興味を抱いた。


「ですが、それは民衆の見方であって真実は異なります」

 しかし、真実は違うとルナマリアが口を挟む。

「そうですね。ロードは死神デスの弟子のお一人。そして天使様から初めて加護を授かったお方です」

「しかし、偉大なお二方から直接力を授けられたのはやはり偉大と思われます」

 どの様に解釈されてもやはり今を生きる者達、特にロード教の信者からしたら先導者であるロードは偉大であるとなってしまう。

「きっとその子供もロードの偉大さからその様に思ってしまったのでしょう」

「我らが先導者ロードに信仰をもってくださって嬉しいことです」

 そうして話が最初に戻ったことで五人は微笑んだ。


 ちなみに、5人は全く気づいていないが、彼らは教皇選挙においての有力者でありかなりの票を獲得している。そんな有力者が一つのテーブルに集まって話している様子はどうであろうか。誰の目からしても注目の的となる。

 よって、他の出馬している枢機卿は驚くは興味を抱くととにかく五人の様子を伺うのであった。



  ◆



 秘密の中庭で投票から離れてのんびりと話をする一方で慌ただしく動いているのが二ヶ所。


 その内の一つである死神デス側は集まれるだけ集め、エクレシア大聖堂の外に出ている七人の死神(デュアルヘヴン)は領域による参加で会話を行っていた。

「今日は選挙が休みとなっているが昨日以上に訪れると思う」

死神デス、どうしてそう思うのですか?」

 ラルクラスの言葉にアイオラが尋ねた。

「投票があった時期は決まる瞬間を見たく集まった者達が訪れていた。その期間を殆どの観光客がサンタリアへ訪れるのを避けている」

「もしかして今日はお休みですから避けていた観光客が訪れるのですね?」

「そうだ。それと教皇選挙の下調べなく訪れた者もだ」

 アイオラの疑問をハイエントがこういうことだと教える。

「要するに人が多いから注意をしてほしいということか」

 ラルクラスが言いたいことを理解してハロルドが今日の難易度を思って肩を落とす。


『それは分かったけど、選挙の方はどうなっているんだ?』

 そこに領域でアルフレッドの声が響いてきた。

「そうですな。コルクスからの報告によりますと昨日の時点で8人に絞られたようです」

『8人か……』

「多いな……」

「少ないくらいです。私が出馬した時は12人ほどで全く絞られなかったのですから」

「うっわ!多すぎるだろそれ!」

 何故か笑みを浮かべて20年前の話をするヴァビルカ教皇の告白に初めて知った一部の七人の死神(デュアルヘヴン)が驚いた。

「それでよく教皇になれたな……」

「ロードのお導きのお陰です」

 そこでロードの名前が出る辺り決まるまでかなり長かったのだなと知っていてもそう思ってしまった。


「それと悪魔だが」

「日に日に多くなっています」

「そう言えば傷付きながら侵入して来た悪魔もいたんだっけ?」

 ファビオの言葉を切っ掛けに悪魔についても話始める。

「もしかしてですが、ヘルミアで対応しきれないほどの数が押し寄せている?」

「それとここにあらかじめ潜んでいた悪魔が動き出したことも考えられる」

 あり得る可能性に場が静まり返る。

「エクレシア大聖堂内の見回りも必要かもしれないな」

『そうですね。死神デス、いかがでしょうか?』

 ファビオとヤードの要求にラルクラスはすぐに頷いた。

「そうだな。モルテとハロルドで見回りを頼む。歩いていれば向こうから現れるだろうから領域による感知はしなくていい」

 そうしてモルテとハロルドに指示を出し、領域と目で探す役割を担うファビオとオティエノに外だけをと言う。

「アイオラは残ってくれ。場合によってはどちらかを頼む」

「分かりました」

 アイオラは現在ラルクラスが割り振っている3つ全てを出来る立ち位置にいる。

 言うなれば助っ人としての役割が強い。

「それじゃ頼むぞ」

 ラルクラスがそう言うとすぐに忙しなく動き始めた。



  ◆



 もう一方のヘルミアにある鳩の宿では話がまとまったところであった。

「手が空いたらとにかく頼む」

「りょーかい」

「やれるだけのことはやるよ」

 軽口で分かったと返事を返す死神がいるが、殆どは表情を強ばらせていた。

 ヘルミアにいる死神が抱えている2つの案件はそれだけに大問題なのである。

「俺達の方も調査を再開する」

「場合によっては強力をたのむからよろしく頼むよ」

 レナードとエステルの声もどことなく張り積めている。

「小まめに連絡を取り合ってくれ。それじゃ今日も頼みます」

 そう言って深々と頭を下げたオウガスト。

 そうして全員が何かを話ながら部屋を出て持ち場へと行く。


 教皇選挙4日目、本来なら休みのはずなのに全く休みでない死神達は休み以上の働きを強いられることとなる。

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