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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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囲っているもの

 話が長くかかると見たレナード達は追加で飲み物を頼んでからサンタリアを囲んでいるものについて話始めた。

 始めに話したのはエジェ。エジェは何故レナード達と合流したのか、その時のことについて詳しく話した。

 そして、囲んでいる何かに弾かれたと聞かされた途端、レナード達は表情を強張らせた。

「悪魔のものとは予想していたが、死神の力を弾くとはね」

 貴重なことであるが死神として見捨てられないものにエステルが目を鋭くする。

「それで追いかけるにも追いかけられなかったんだ」

 もう少し早く気がついていればみすみすサンタリアに侵入させなかったのにと悔やむエジェ。

「……きっとそれだなエステル」

「そうだね」

「何がだ?」

 一方でレナードとエステルはエジェの話を聞いて納得していた。

「ダーンと別れてすぐにあれが震えたのだよ。僅かにだけど」

「あ、それ私達も感じました。だよねおじちゃん?」

「ああ。何かと思ったがあれはお前がやったことか」

「いや~、触る気も近づく気もなかったけど悪魔がね……」

 ダーンに睨まれたエジェは何とか言葉を並べて自分は悪くないと取り繕うとするが、結局は出ずに口を閉ざした。

「だが、あれは何度かあったはずだぞ」

「は?」

 次いでダーンから言われた言葉にエジェは何を言っているのだと呆けた声を出した。


「ああ、それは多分私達だろう」

「……何をした?」

「少し領域をぶつけていたのだよ」

 エステルの告白にダーンは眉を寄せて表情を怖くさせる。

「何の為にそんなことを?」

「あれの特性がどんなものか見るためだな。直接触れるわけにいかないからね」

「おい、領域をぶつけたのは俺だが?」

「そうだな。レナードのお陰で分かったことがあるのだからいいだろう?だからそんな怖い顔はやめてくれないか?」

 悪ぶれず笑うエステルにダーンは表情を崩さずに尋ねる。

「どうだった?」

「だから顔が怖いから」

「さっさと話せ!」

 二人の会話によく素直に言えるものだと話を聞いて呆れるエジェ。


 そしてエステルは仕方ないなと咳払いを一つする。

「ごほん。あれは死神の領域と似て非なるものだね」

「似て非なるもの?」

「……そういうことか」

「おじいちゃん分かったの!?」

 エステルの言葉に唯一ダーンだけが理解した。

「ダーンなら理解すると思っていたが分かっているのはそれだけだ。もう少し調べなければ確実には言えない」

「それでもあれがどういうわけか死神の力を受け付けないというのは分かったな」

「面倒なものだ」

「そうだな。その時の様子を他の死神も見ているはずだ。遠くからどうなっていたか聞く必要があるな」

「そうだね。近くで感じた私達じゃ分からないことがあるかもしれない」

 勝手に知る者、理解する者で話を進められ置いていかれたエジェとベルモットは表情を不満そうにする。

「お~い、勝手に話進められて困るんだけど……」

「しばらく待て。分かったら教えてやるからよ」

「おじいちゃん約束だからね」

 孫娘に釘を刺されるまでもなく死神全員に教えるつもりだからとダーンはベルモットと約束するのであった。


「ところで悪魔が出来るものなのかあれ?」

「ふ~む……物欲や貧欲なら出来るかもしれないが、何しろこれ自体が初めてのことだから何とも言えないな」

 囲んでいるものの大雑把な特性は分かっていてもそれをしたのがどんな領分クランの悪魔か分からないと頭を悩ますレナードとエステルにベルモットが声をかける。

「あの、こっちも報告があるんだけど」

「そうだな、それでそっちはどうだったのだ?」

「これを見てほしいの」

 ベルモットはカバンからハンカチを出すとテーブルに置いて広げると、包んでいたものを見せた。

「これは?おい、これって……!?」

 ハンカチに包まれていたものに初めて見た三人がダーンとベルモットを凝視する。

「悪魔の何かだと思います」

 白く薄くて小さい欠片から感じられる悪魔の力と同質のものにこれは何かと思考する。

「……他にもあったか?」

「ねかったな。だが、これ一つとは思っていねえ」

「他の場所にも同じものがあるってことか」

「ああ。だがこれを見つけた場所に手が加えられていた」

「悪魔か」

「恐らくな。何かを回収し損ねたのがこれなんだろうな」

 欠片の大本が複数あってそれを回収しているという予想に何故そんなことをするのかと疑問を抱く一同。

「回収しているのはやはり私達に見つけられては困るからか?」

「すると、これをやっているのは上級か?」

「かもしれないね。そうするとあれを囲んでいるのも上級ってことになるね」

 証拠隠滅する思考があるなら上級悪魔と見当を付けて、ついでに囲んでいるものも上級であるという見当がさらに濃厚になる。


「ダーン、これはどこにあったんだ?」

「壁に面した雨水流す溝だ」

「そんな分かりやすい所に?」

「……もしかしたら別の場所にあったんじゃないか?」

「どういうこと?」

 欠片があった場所にエジェはそれはないんじゃないかと考え付いたことを言う。

「溝って言うのは何をしても溜まるものだろ。だからその欠片は何かの拍子に溝に入ったんじゃないか?」

「つまり欠片の元は溝にはないってことか」

「そう言うこと。それに溝って壁に近いが囲っているのはもう少し壁から離れているんだ」

「言われてみたらそうかも」

 欠片と囲む何かの位置が違うことに納得する。


「そう言えばダーン、あれに歪みはあったか?」

「ねえよ。天族が張っている結界まで包み込んでいやがる」

「おい、本当かよそれ!?」

「本当だよ」

 衝撃事実に驚くエジェをサンタリアの壁を歩いていた四人があっさり肯定する。

「あれは天族の結界を包み込むほど大きいのに歪み一つないんだ。それにずっとこの街にいた私だから気づいたことだが、あれは徐々に強度を増している」

「……どういうことだよそれ?」

「考えられるとすればあれをやっている悪魔が力を付け始めたってことだよ」

「おい、それ異常事態じゃないか!」

 囲っているものが力を付け始めていると言うのにエステルは冷静を装っていた。

「そうだ。だが今私達が手を出せることは限られているし、何よりも先にしなければならないことがある」

 そう言ってカップに入っている紅茶を全て飲み干した。それはレナードとダーンもである。

 レナードは領域を使ってすぐにオウガストに繋げた。

「俺だ。ああ、すぐに死神を集められるだけ集めてくれ。すぐにだ!」

 ヘルミアにいる死神へ現状わかったことを伝えることである。

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