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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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拒まれる死神

 レナードとエステル、ダーンとベルモットが別れたちょうどその頃、サンタリアの別の場所でもやはり死神が忙しなく動いていた。

「見つけたぞ悪魔!」

「死神か!」

 サンタリアへ向かう悪魔の進路をルーベンは塞ぐと手にしている戦鎚ウォーハンマーを横に振るう。

 しかし、悪魔はそれ見切って後ろに跳んで回避する。

「アハハハハ!何だそれは!速くもなければ振り切れていないではないか!」

「口が軽い悪魔だ」

 やっと仕事が一段落して次の仕事の準備の為に移動していた所をこの日も悪魔を見つけたことで死神として対処に当たっている。

「あいにくこっちは不機嫌なんだ。少しでも生き長らえたいと思うなら口を慎むべきだな」

 悪魔を見つけたことで休憩と昼食の時間が減ってしまったと表情に出す。

 ヘルミアは悪魔を討伐する機会が多い為にこんなことはしょっちゅうなのだが、これが連日でひっきりなしの対処となると気が滅入る以前に苛立ちが募る。

「ハハハ!それはこっちの台詞だぞ死神!」

「実力差が分からずによく言う。本当に言う下級だ」

「ハハハ!俺様は中級に上がる悪魔だ!その差が真に分かっていないのは死神、貴様だ!」

「そこは上級と言わないんだな。むしろ現実味過ぎてかわいそうに思うな。本当にかわいそうだ。それに悪魔の下級と中級に大差ないだろう」

 威張る悪魔に呆れを通り越して哀れみを抱くルーベンの視線に下級悪魔に怒りが込み上がる。


 死神からしたら悪魔の下級と中級は領分クランの能力が一部変化する以外実力は同じと思っているから真実しか言っていない。

 故にルーベンは目の前にいる下級悪魔を容易く対処出来る自信がある。

「ならば俺様の実力を味わえ死神!」

「下級の力を受けたところで全く嬉しくないのだが」

 散々愚弄したことで自暴自棄担って間合いを図る下級悪魔だが、その隙をルーベンは一気に詰め寄りながら持ち手を短くして片手で戦鎚ウォーハンマーのハンマー部分で頭から叩き付けた。

 瞬間、頭は潰れて僅かに鮮血が吹き出るが、潰されてもなお下級悪魔の体はルーベンへと向かう。

 面倒だと思いながらも先程短くした戦鎚ウォーハンマーの持ち手を長くすると両手で握りしめて思いっきり振りかざして悪魔の胴体を真っ二つに潰したことで今度こそ下級悪魔は動かなくなった。


「全くうるさいものだな。うるさすぎる」

 戦鎚ウォーハンマーを一振りして付いた血を払いながら言うと、直後にまた悪魔の気配を感じた。

 感じ取った方を向くとそこには悪魔とエジェがいた。

「まったく!」

 ルーベンは先程しまった戦鎚ウォーハンマーを再び握ると領域で近くまで跳んで一振り。

 先程のように真っ二つとまでいかないがエジェに飛ばすには十分の威力であった。

「うおっしゃぁぁぁ!」

 飛ばされてきた悪魔を突然のことでも対応して鎌で切り裂いたエジェはルーベンを見た。

「助かったぞ」

「ならいい。あれの対処は一人でも出来たはずだがどうしてああなったんだ?」

「あの悪魔、妙に足が速くてな」

「……そういえば速かったな。それに無傷でもあった」

 先程吹っ飛ばした悪魔の特徴を思い浮かべてルーベンはめんどくさい悪魔だったのだと理解する。

「そうなんだよな。ま、とにかく助かった。ありがと……なっ!?」

 悪魔わ止めてくれたことにお礼を言おうとしたエジェが血相を変えた。

「どうした?」

「まだいやがった悪魔!」

「何だと!?」

 エジェが慌てて走り出した先には今にも悪魔がサンタリアを囲む壁に着こうとしている所。

 エジェは走っては間に合わないと領域で悪魔の元まで跳ぶ。ルーベンはここから狙い打つと死神の武器を小型の拳銃の形にして標準を合わせて、距離重視で引き金を引いた。


 エジェは現れるなり手に持っていた鎌を悪魔の背後から振るった。

 しかし、ルーベンが放った力と鎌が何故か何かによって途中で受け止められて弾かれてしまった。

「っ……」

 何とか体制を建て直したエジェだが悪魔は既にサンタリアの壁を登り終えて内側へと侵入してしまった。

「くそ!」

 取り逃がしてしまったことに悔しさで吐き捨てるエジェだが、その原因となった悪魔がサンタリアを囲む何かを見る。

 そこに先程の出来事が以上であると感じたルーベンが駆け寄って来た。

「エジェ無事か?」

「逃がした」

「それはいい。問題はこれだ!」

 結果が出るまで出来るだけ触れないように使用としていたサンタリアを囲んでいる何かに死神が拒まれたことが問題であるとルーベンもそれを見る。

「弾かれたな」

「何なんだ一体これは?」

 死神の攻撃をもろに受けたのに見た目に変化がないそれにルーベンとエジェは頭を抱えた。



  ◆



 それからちょうど6時間後。

「一つ聞いていいかね?」

「おう、何だ?」

 ありえないという様子でエステルがダーンに尋ねた。

「どうして私達よりも速くここにいるのかね?」

「そんなもんお前さんらが遅いからだろ。お陰で長く歩いたじゃねえか」

「70代のご老公であるよな?」

「年寄りにこんなに歩かせやがって!」

「それは失礼。それでカフェで休憩ですか?」

「お前さんらが遅いから一服していたんだ」

 エステルとダーンの会話に紅茶が入ったカップを片手に苦笑いするベルモット。


 何故彼らが本来なら一日、二組に別れて半日かかるサンタリアを囲む壁の外周を6時間で終えてカフェで再開したかと言うとやはり死神の力が大きい。

 死神は一般人に比べたら基礎能力が非常に高い。それは現役を引退して70代という高齢であるダーンにも言えること。

 一般人が歩く速さ以上と休憩なしで歩いたことで半日がさらに半分の6時間で周り終えたのだ。

 そしてダーンとベルモットがレナードとエステルよりも長く歩いたのは悪魔とそれほど遭遇しなかったからである。

 お陰でベルモットに悪魔の対応の仕方をそれほど教えられなかったと言うのはダーンのぼやきである。


 ダーンとベルモットがカフェて一息入れていたのは分かったがもう一つ疑問がある。

「それはいいのだが、どうしてエジェもいるのだ?」

「そりゃ俺も一息入れているからさ」

 二人と同じテーブル席に座って紅茶を飲んでいるエジェは手を上げるが、すぐに真顔になる。

「というのもあるけどこっちも伝えないといけないことがあるから待っていたんだ」

 その言葉にレナードとエステルはもしかしてと顔を見合わせる。

「こっちも話がある。いい機会だ、まとめるとするか」

 未だにサンタリアを囲む何かについての話し合いをレナードはこの場でまとめると切り出した。

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