規格外の基準
入ったレストランは既に人で溢れていた。
時間帯は昼食の時間にまだ早いのだが、観光客などが満席になると席に着くのが遅くなるからと早めにレストランに訪れて昼食をとっている。
幸いに四人掛けのテーブル席が一つ空いていたことで四人の死神は待つことなくそこに座ると、レナード、ダーン、エステルは座るなり深刻な表情を浮かべた。
「ずっといたけれど、まさかこんなになってると思わなかったよ」
「洒落になんねえぞ。何十といる死神の目を掻い潜ってなんざ」
「そもそもこれをどうやった?」
事の大きさに三人はただ困ったと頭を抱える。
ベルモットは三人の様子から深刻であることを察してやはりそうなのかと確認をする。
「おじいちゃん、あの警察の人はもしかして……?」
「そうだ、悪魔の息がかかっている。あれは魅惑だな」
「魅惑ってことは色欲?あれがそうなんだね」
初めて色欲が使う力を目にしたベルモットは感慨深げであるが、三人が気にしているものはそれではない。
「だが、あれは警察じゃなくサンタリアを守る警備員だ。あの制服で外に出ていいはずがない」
「それはどうして?」
「ヘルミアとサンタリアでは管轄が違うのだよ。ヘルミアは国の機関だけど、サンタリアはエクレシア大聖堂が独自に設立させた独立組織。そんな組織の服装を外に出す気など出来ないだろう?」
「そんなものなんですか?」
「そうなのだよ。エクレシア大聖堂側はそれで問題を起こしたくないからな。だから有事を除いてサンタリアの外に出てはいけないのだが」
「出ているってことね」
エステルが語った警備組織の違いにベルモットはそうなのかと頷くと同時にそれはおかしいことだと思う。
だが、そんなに優しくない。
「それだけじゃない。サンタリアの中に悪魔がいるってことだ」
「もしかして侵入した悪魔が?」
「だろうな。それが七人の死神にも見つからずに潜み続けているとしたら最悪だ」
「魂は食らい続けられるし能力によって死神の動向は知り放題。しかも、これが一体でなく複数ならもっと最悪だ」
レナードの口から語られていく最悪の状況にベルモットはテーブルから身を乗り出した。
「それじゃ死神と七人の死神は……」
「生きているに決まっているだろう。彼等は易々と死なない」
「七人の死神に選ばれるくらいだ。死神を守るのもあいつらの役目だ。死にゃしねえ」
「えっ?何でそう言えるの!?」
レナードとダーンの言葉に信じられないと言うベルモットにエステルは教えることにした。
「そう言えばベルモットは七人の死神が選ばれる基準を知らないのだな」
「七人の死神に基準?」
「そうだよ。基準を合格することで死神は合格者から七人を選んで七人の死神を決めるのだよ」
基準の合格と聞いてどんなものなのかと思う一方で少しだけ不満を抱く。
「初めて聞く。おじいちゃんそんなこと教えてくれなかったから」
「ハハハそうかい。それでその基準なのだが……」
「はい」
基準とまた聞いてベルモットは興味で背筋を伸ばした。
「上級悪魔を一人で対応出来て、魔王ともやりあえる実力さ」
「……え?」
とんでもない条件に今のままでは実力不足で無謀であることにルモットは目を丸くした。
「だから七人の死神は強くてまだ無事なのだよ。無論死神も無事だろうね。死神がいなければ私たちの力が失われる。だからまだ無事さ」
「……は、はぁ……」
知りたいことと聞かなければよかったという思いにベルモットは解放されたと肩を落とした。
話が一段落したことでダーンは険しい表情のまま七人の死神であった二人とこれからのことについて話始めた。
「それでだな、サンタリアの中にいる悪魔どもと悪魔が作ったと思うものをどうする?」
「悪魔に関してはこれ以上侵入しないようにしないといけないね。場合によってはオウガストに頼んで人員を増やすしかないね」
今も増え続ける悪魔をサンタリアに侵入させてしまえば七人の死神の負担になることをかつての七人の死神であった三人は知っている為に否定はない。
「サンタリアを囲っているのも飯を食い終わったら本格的にやるか」
「そうだな。あとは魅惑の影響にかかっている奴等を調べるように他の死神に言っとけ」
「はいはい」
やはり話が早くて助かるとエステルは微笑んだ。
「そう言えば、基準で思い出したんだけど、サンタリアを囲う力を持つ悪魔がどうして上級や魔王なの?」
すっかり忘れていたサンタリアを囲んでいるであろう力を持つ悪魔の基準が何なのかとベルモットは言い出したエステルに尋ねた。
「それかい?それはレナードやダーンでも可能だからだね」
「……え?」
「だから、それ相応の領域使いなら月単位で可能なのだよ。そしてそれを元にすると可能なのが上級より上の悪魔なのだよ」
「そ、そうなんですね……」
こちらの基準も普通でなかったことにベルモットはまた肩を落とした。




