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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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不可視の隠し通路

「どうしてここを通らないといけないんだよ?」

 ユーグは暗い廊下をランプの明かり一つで歩いていた。

 現在ユーグがいるのは東館にある隠し通路の一つ、屋根まで続くその内部である。


 何故ユーグが隠し通路を歩いているかというと、切っ掛けはモルテの一言。そのことに呟いたのを聞いたラルクラスが感慨深く言ったのだ。

「そこがあったな」

 それに先代死神(デス)であるハイエントも続くように納得して頷き、オティエノとファビオもそこがあるなと二人の考えに同意した。

 どういうことか分からないユーグは尋ねると、エクレシア大聖堂には一部が死神の領域では感知出来ない場所があり、どういう理由でそんな場所があるのかはラルクラスとハイエントのみしか知らず、それを教えるつもりはないと言う。

 しかし、仮に領域で探してもコルクスを見つけることができなかったらそこにいる可能性があるとしていそうな場所を候補にあげてユーグをそこへ向かわせたのである。


 ユーグは一度足を止めると改めて石壁で囲まれている空間を見る。

「ラルク兄はいい機会だからって言ったけど、まさかあそこから行けるなんてな」

 隠し通路は東館5階の一室、いつも食事を取る部屋から東館の最上階まで通じている。

 東館に最上階があることを始めて聞かされたユーグだが、どうしてそんな場所が部屋と繋がっているのか、領域で確認出来ないのは何故かと不思議に思う。

「行けば分かるか」

 とりあえず先に進むと意識を切り替えて歩く。


 しばらくして螺旋階段が目に入った。

「これか」

 ラルクラスから螺旋階段を上がれば最上階と聞かされていたユーグは躊躇なく上る。

 そしてようやくランプの明かりでない光が見えたユーグは駆け上がってようやく日が照らす最上階に出た。

「ここが、最上階……」

 ユーグの目の前にはサンタリアと壁向こうに広がるヘルミアの風景が広がっていた。

 無意識に周りと天井を見る。今いる場所は広くなくむしろ狭い。

 そして手すりから身を乗り出して上を見る。

「そうか、ここは東館で一番高い塔の屋根か!」

 屋根の形からと今いる場所の見当を付けたユーグはそこに黒い鳥を確認した。

「コルクス!」

『ん?その声はユーグか?』

 人語を話すカラス、コルクスが気づいて顔を下に向けて認識したのを見るとユーグはここにいたのかと文句を言う。

「何でこんな場所にいるんだ?」

『それはこちらの台詞だ。何故お前がここにいる?』

「ラルク兄が探しているからだ!コルクスの部下が待っている」

『そうか。ではもう少ししたら行くと伝えてくれ』

「今すぐ来いバカカラス!」

 せっかく見つけたのに待てと言われて待つ奴はいないとユーグに怒りが湧く。

『そうもいかんのだ。こちらにはこちらの都合がある』

「知るか!朝からカラスの鳴き声で叩き起こされたこっちの身になれ!」

 外から起きろ起きろと嫌というほど聞こえたカラスの鳴き声に起こされるのは精神的に落ち込むものでその気持ちを察しろと言う。

 ただ、それをカラスに察しろとと言うのは相手が間違っているのではという気もするがそれについて突っ込む者がいない。

「それよりも都合って何だよ?」

『情報を共有しているのだ』

「情報?部下のカラス以外と?」

『そうだ』

「誰とだよ?」

『ここの管理者だ』

「は、管理者?」

 本日二度目の始めて知ることに管理者とは何に対して誰なのかと疑問を抱くユーグ。

 コルクスは下げていた顔を上げると前を見つめる。

「管理者って何だよコルクス?」

『今知る必要はない。もう少しで終るから待っていろと死神デスに伝えてくれ』

「今すぐ来いって言っただろバカクソカラス!!」

 来ないとこっちが困るととにかく叫ぶユーグ。


 結局コルクスがいる場所に行くことが出来ないユーグはしばらく待たされることとなった。

 そして5階に戻って来たコルクスはユーグと珍しいことにラルクラスから無慈悲な制裁を加えられることとなり、七人の死神(デュアルヘヴン)が戻る頃には逆さに吊るされてペンキで白く塗られて白いカラスという悪態を披露することとなった。



  ◆



 その日の夜、ヘルミアの鳩の宿では死神サナリア・ハピカ・スピカが膨れていた。

「何で入れないのよぉぉ!」

「御愁傷様、と言いたいけどそれは確かにおかしいね」

 サナリアが膨れる理由にエステルは慰めることはせず話を不審と思う。


 サナリアが膨れているのは理由もなくサンタリアに入れないことだ。

 ヘルミアの手伝いがてら教皇選挙が行われている頃のサンタリアはどのようなものなのかと見に行こうと正規の入り口から入ろうとして、何も不審物を持っていないのに正面から門前払いをさせられたのだ。


 故に不満をぶつけるサナリアだが、聞くのに飽きたエステルは視線を変えた。

「それは追々考えるとして、オウガストはまだ仕事かい?」

「はい。数名ほどお客様が帰って来ませんので」

 閉める時間はとっくに過ぎているのに帰ってこない宿泊者を心配して時計を何度も見るオウガストにエステルは少し考える。

「どこかで時間を忘れるほど飲んでいるか悪魔と出くわしたかかな?」

「外に出た死神にも見つけたら伝えてくれと言っているが……」

「教皇選挙中だからね、分からないか」

 時期が時期だけに不安が募る死神三人。


 この時は誰も気づいていなかった。これが異変の始まりであることを。

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