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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
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不穏な気配と合図

 夏の日が落ちて夜の闇が訪れてしばらく、ようやく訪れた一時の束の間に七人の死神(デュアルヘヴン)全員が集まり死神デス達と共に上級悪魔の話をしていた。

「色欲の上級悪魔だったのか」

「よりによって悪魔の中で面倒なものが入って来たな」

 上級悪魔ブザスの対応をしたアルフレッド達の報告にラルクラスとハイエントが色欲の特長を思い浮かべて僅に頭を痛ませる。しかし、もう倒されたことであるからすぐに立ち直る。

 そのタイミングと同じくハロルドがアルフレッド達に言う。

「だから眼鏡かけているのか」

 その言葉に色欲の上級悪魔ブザスのことを話しているはずのヤードとファビオが僅に目線を反らすがオティエノが追求する。

「アルフレッドは普段からかけているからいいけど、どうして二人はまだ眼鏡をかけているの?」

「……かけていたのを忘れてた」

「かけたままにしていました……」

 眼鏡をかけていた事が事であった為に深い理由があって未だにかけていたと思っていたが、死神でなくてもよくあることに一瞬だけ雰囲気が重くなる。

 その雰囲気に耐えきれずヤードとファビオはかけていた眼鏡を外した。


「……それで、色欲の上級悪魔はどのようでしたか?」

 アイオラも雰囲気に耐えきれず話を転換する。

 しかし、その言葉に三人は表情を強張らせるものとなった。

 無言で顔を会わせて短い時間の内に何かを決めて頷くと、ものすごく気まずそうにファビオが口を開いた。

「ものすごく癖のある、男の姿をした悪魔だったよ」

「ああ、私達では厳しかったかもですね」

「私達が行かなくてよかったと言うことか」

 ブザスの言動を何となく教えたくないと思ってあえて隠したことで言い具合に誤解をしてくれたモルテとアイオラに内心でホッとする当事者とその時の様子を秘かに見ていたオティエノ。


 色欲と聞いてから何か思い詰めていたユーグが隣に座っているハイエントに尋ねる。

「確か、色欲の悪魔には魅惑チャームがあるんでしたか?」

「そうだ。悪魔は領分クランごとに固有の能力があるのは知っているな?」

「はい」

「ユーグが言った通り色欲は魅惑チャームだ。認識によって自覚がない内に自由に言うことを聞かせる能力だな。性別に関係ないが異性なら特に強くかかる。死神や天眷者は殆どかからないがもしものことがある。だから反射するものを目の近くにかけることで防ぐことが出来る」

「だからわざわざ眼鏡を?」

「そうだ」

 今までの復習とハイエントとユーグは色欲の悪魔の能力と防ぐ手だてについた話す。

 その会話を聞いていた七人の死神(デュアルヘヴン)をよそにヴァビルカ教皇が唇を緩めた。

「よく教えていますね死神デス

「俺の弟子だからな」

 手抜きはしていないとラルクラスは不敵に微笑んで返す。


「しかし、上級が初日に入って来るとは思わなかったぞ」

 モルテかブザスのことに触れると、今までの和み雰囲気は一変、張り詰めた雰囲気に変わった。全員が初日に上級悪魔が侵入すると思わなかったからだ。

「本来ならこちらの様子を見極めた上で侵入してくるはずなんだが……」

「やはり、何かを企てているとしか思えませんね」

「何かは分からないのですか?」

「残念だが何も分からないから分からねえな」

 手がかりがないことに溜め息を付く一同。

「そういえば……」

「どうかしたかヤード?」

「何か思い出したのか?」

「いえ、侵入してきた理由ではなく少し気がついたことがありまして」

「何だ?」

 ヤードの呟きに全員が注目する。

「あの上級悪魔はこちらが煽ると癇癪を起こしたことから上級になってまもないのではと思いまして」

「つまり、今回は上級、上級下位とでも言おうか。それも捨て駒……か?」

 今までない可能性にラルクラス、ハイエント、ヴァビルカ教皇の表情が険しくなる。

「だが、上級を捨て駒にするのか?」

「するだろうな、魔王ならば」

 侵入してくる悪魔達の背後に控える存在の断片を感じ取った死神達は脳裏に最悪の事態を描くこととなる。



  ◆



 ヘルミアの街灯の灯りが当たらない場所でそれは静かに待っていた。

「さて、準備は整った。起動しろ」

 そう言うと、目の前でにヒビが入った。

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