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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
343/854

癖ある悪魔と困る死神

不定期と書いておきながら結局は忙しさのあまり一週間以上書けていない現実……

へこみまくりですorz

 アルフレッドが放った斬撃が防がれたのを見たファビオは眉を寄せた。

「あいつ、仲間を犠牲にした……!!」

 一撃で刈るつもりで放たれたはずの斬撃を上級悪魔が同じ悪魔であるはずの下級悪魔を盾にして防いだことに吐き気がするほど嫌と感じて顔をしかめる。しかし、どこかでそれは悪魔が平然とすることだと客観した気持ちでいることもあってそれほど怒りを抱いていない。

「さすが悪魔ですね」

「人間がしたならいい気持ちはしないな」

 アルフレッドとヤードもファビオと同じ気持ちであった為に続けて言う。

「もう少し力を入れてもよかったな」

 しかし、続けて言ったアルフレッドは下級悪魔を1体しか切り裂けなかった斬撃を放ったことに爪が甘かったと悔やむ。

「不意討ちに気がついた悪魔が強いという証拠ですね。単独でいたところを襲っても避けていたことでしょう」

「フォローしてくれるのはありがたいけど、様はもう少し力を入れてもいいってことだよなそれ?」

「捉え方はお任せします」

 ヤードの投げやりな反応に僅かに顔をしかめるアルフレッドだが、言われた通り斬撃に気がついた悪魔が強いことを認識している為にそれ以上これについて何かを言うつもりはない。


「それでどうする?上級となると少しだけ面倒だぞ?」

「そうだな……」

 上級を含む悪魔をどう討伐しようかと悩む三人。

 そんな三人を下から上級悪魔が独特の口調で妙に張りがある声で魅了する。

「あっら~、いい男じゃないの~」

「……」

 瞬間、三人の表情が強張る。

「何だあの上級は?」

「声と話し方……聞き間違いか?」

「……聞き間違いでないと思います……」

 この場に辿り着いて初めて聞いた上級悪魔の口調に三人はそういう趣味を持つ悪魔なのかと本来よりも別の意味で寒気を抱く。


 そんな三人の様子に気づかず下級・中級悪魔が上級悪魔に言う。

「死神が現れたって言うのに何言ってんすか!?」

「やっちまおうぜ!」

「慌てないの。私がいいって言うまでやったらダメよぉ~。もぉ~少しだけ倒す予定の死神をみていたいのだから」

 ふふふと不敵に微笑む上級悪魔に子供のように不貞腐れる下級・中級悪魔。


 対して死神三人はものすごく複雑な表情を浮かべていた。

「あの悪魔、やっぱりあれか?」

「あれだろうな」

「それでしょうね」

 上級悪魔の口調と言葉からあることを察する三人の意見は一致した。

「モルテとアイオラが来なくてよかったな」

「ええ」

 何故か上級悪魔の対応に女性二人でなくてよかったと思う。しかし、表情は優れない。

「誰がやる?」

「……」

 ファビオの切り出した言葉にアルフレッドとヤードの表情が固まる。

 上級悪魔と違いそういう趣味がない三人だが、先程の意見の一致を踏まえると、どうにかして倒すよりも誰がやるかに意識が向いてしまうのだ。

「……一応聞くけど二人は?」

「私は結婚24年です」

「俺は最近彼女出来たな」

「結婚3年だ」

「……」

 三人の間に妙な空気が漂う。

「ヤードは奥さんいるだろうとは思ってたけど、アルフレッドに奥さんいたのか!?」

「そりゃいるに決まってるだろ!今年で28なんだから!」

「こ、子供は?」

「1歳になる娘が一人」

「おお!それよりもファビオには彼女がいたのですね」

「そりゃこの年でいないのはどうかと思うし……」

「お方は?」

「行きつけのレストランのウエイトレス」

「なるほど」

 確認の為にして誰がやっても問題ないはずなのに予想外の告白に盛り上がる三人。


 そして、話しはここまでとアルフレッドが区切りを付ける。

「それじゃ誰がやるかは決まったな」

 そう言ってアルフレッドとファビオは無言でヤードを見た。

 対してヤードは無言で肩を下げて呆れ顔を浮かべる。

「先に言いますが、私にそう言った趣味はありません」

「そりゃ俺もだからな!」

「俺もそうだよ」

 上級悪魔の趣味に付き合う気も分かち合う気がないと言うヤードだが、それに若い二人が同じ気持ちであることを伝える。

 しかし、それが何だとヤードは反論する。

「それは分かります!ですが、私がやるのならアルフレッドも出来るではないか!」

「婚期が違うから!」

「婚期はあくまで目安でここでは関係ありません!」

「そもそも、婚期とかそう言うの聞く意味あったのか?」

 収まりそうにならない二人の会話にファビオが亀裂を入れた。その瞬間、またどうしようもない空気が三人の周りを漂う。


 そんな三人の様子を上級悪魔が不敵な笑みを浮かべながらくねくねと動きながら叫ぶ。

「誰でも歓迎よぉ~」

 三人の相談をいい面を見たいからとあえて見逃していた上級悪魔だが遂に待ちきれなくなり叫んだのだ。

 それには下級・中級が一瞬驚くももう突っ込まないと呆れてしまい、対して死神三人は再び背筋に寒気を感じた。

 それはこのどうしようもなくなった雰囲気を一気に脱却するチャンスであった。

「来るぞ!」

 ファビオはそう言うと懐から度が入っていない眼鏡を取り出して急いでかけた。ヤードも同じように眼鏡をかける。アルフレッドはかけている眼鏡をかけ直す。

 眼鏡はしなくてもいいのだがあくまで保険としてかけたのだ。


 そして……

「来ないのならこっちからいっくわよぉ~!」

「いっくぜぇ死神!」

 上級悪魔の開始の言葉に下級・中級が飛び出す。

「頼むぞヤード!」

「早く終わったら手伝ってください!」

「努力はする!」

 結局押し付けられたとに不満を抱くヤードはファビオの領域で下級・中級の背後、上級悪魔の正面に飛ばされる。


 下級・中級悪魔は背後に死神が出現したというのに全く気づくことなくまだ屋根にいるアルフレッドとファビオに向かって来ている。

 その様子に二人は更に確信する。

「やっぱりあの上級はヤードに任せてよかったな」

「そうだな」

 普通なら迷いの欠片が感じられるはずなのにそれがないことに対する違和感が上級悪魔の持つそれを確かなものとさせる。

 異形と化した姿で襲ってきた悪魔を余裕を持ってかわしたアルフレッドとファビオは話を続ける。

「だが、上級だから何をするか分からない」

「そうだな。気は乗らないけれどヤードに言ったからにはさっさと倒して手助けにはいよう!」

 上級悪魔の趣味に付き合いたくなければさっさと終わらせるのが一番だと目の前の下級・中級悪魔を速攻で倒してしまおうと意識を切り替えたアルフレッドとファビオはそれぞれが得意とする死神の武器で返り討ちにする為に振るい始めた。

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