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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
342/854

上級悪魔

 夕焼けと夜が空に境目が生まれた頃、死神側は今までとは違う状況に追われようとしていた。

「北西から8、北東から……え!?」

「どうしたオティエノ?」

 目で悪魔の存在を確認していたオティエノの表情が変わったことにラルクラスが眉を寄せた。

「数は4。その内一体が上級悪魔!」

「上級……!?」

「おっ?」

「早いですね」

 オティエノの言葉に顔を青ざめるユーグ。しかし、ハイエントとヴァビルカ教皇は問題ないという様子で紅茶を飲む。


 その様子を怪訝に思ったユーグが二人に尋ねる。

「どうしてそんな気にしていないんですか?」

「発見が早かったことと腕のいい七人の死神(デュアルヘヴン)がいるからだ。上級は少しばかり翻弄されるだろうが問題ないなだろ」

 七人の死神(デュアルヘヴン)の実力に信頼を置いているハイエントの言葉にオティエノの表情が僅かにだが嬉しいと浮かぶ。

「しかし、上級が侵入して来るのは早いですな」

「ああ。前回の教皇選挙の時は5日目だったはずだ」

「俺の継承の儀は3日前だ。初日に上級が来るとは聞いたことがない」

 しかし、前回の侵入時を比べると早いことを不安視するヴァビルカ教皇の言葉に同意する今代と先代死神(デス)

「単独でないところからしますと、やはり一枚噛んでいるの」

「ああ。上級はもっと後にぶつけてくるものだ。今ってことは何か企んでいるとしか思えないな」

 上級悪魔の予想以上に早い侵入に良い予想はないと顔が強張る。


「上級に近いのは?」

「近いのはアルフレッドとファビオ。その次がモルテとヤードです」

「ならば、アルフレッド、ファビオ、ヤードに上級の対応を。アイオラとハロルドは北西の悪魔。モルテは次に備えてその場で待機だ」

「分かりました」

 ラルクラスの指示を領域でそのまま外にいる七人の死神(デュアルヘヴン)に伝えるオティエノ。

 それは数秒で終わり、再びで外を見る。


 あとは七人の死神(デュアルヘヴン)に任せるとラルクラスはソファーに深々と背を預けた。

「上級が初日から侵入して来た意図をどう読む?」

「分からん。その悪魔に聞くしかないだろうな」

「そう言いますが、上級が言うとは思えません」

「聞けたらの話だ。本気にするな」

 出来たらそれは儲けものであるが、下級や中級悪魔とは違う上級のめんどくささを思うとハイエントは溜め息を付いた。

「上級悪魔は下級や中級と違い自意識が低いからな」

 悪魔と言って誇りがあってかテンションを上げる下級と中級と違い悪魔であることが当たり前と思う上級悪魔に挑発が通じないことをハイエントは手間がかかると嘆くのであった。



  ◆



 北東から侵入してきた上級が率いる悪魔は今まで侵入してきた下級・中級とは違う動きでエクレシア大聖堂に近づいて来ていた。

「ちょっとぉ~、そこもっとゆっくりしなさいよぉ~」

 外見は男の姿だが口調は完全に女の話し方である。

「そう言うが、もうそこまで来ているんですよ。行きましょうよ」

「だからぁ、急がないのよぉ~」

 慌てん坊と不敵に微笑む上級を共に付いて来た下の悪魔達が急かす。

「だけど、いつ死神の奴等に見つかるとも分かりませんぜ」

「そうそう、俺なんかもう戦いたくて仕方ない」

「それに中には元凶デスがいるんですよ!そいつを野放しにしておくことなんか出来ませんよ!」

「そう慌てないのよぉ、それとそこ、何回も言ったでしょ?死神デスが目的じゃないのよぉ」

「ですが……」

「ああもう!違うって言ったら違うのよぉ!それに死神あいつらはこっちが何もしなくても来るわよぉ」

「それはつまり……?」

 尋ねようとした下級は突然、上級が何も前振りなく掴まれて近くまで引き寄せられたと思った瞬間、真っ二つに切り裂かれて血しぶきが上がる。

「来たわね!」

 しかし、上級悪魔は盾にして真っ二つに切り裂かれた下級悪魔を放り捨てると頭上から見下ろしている影3つを笑って見上げたのだ。

6月2日まで不定期で更新します。

詳しくは後程活動報告でお知らせします

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