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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
10章 教皇選挙(後編)
332/854

大広間に集う者

 夕焼け空がサンタリアを照らした頃、エクレシア大聖堂の大広間へ集礼の儀の為に枢機卿に所属する大司祭が次々と集まって来ていた。

 その殆どの外見は若いとは言えず、所々にシワや白髪が混じっていることから平均すると50歳は越えているだろう。

「これはヘイゼル殿ではございませんか」

「ササイ殿ではありませんか。お久しぶりです」

 そう言ってヘイゼルとササイ・ラシュバック大司祭は頭を下げた。

「ササイ殿、マドレーア教会はどうですか?」

「何事もありません。日頃から信仰して下さる方々達が訪れて祈りを捧げてくださいます」

「ロードと天族の加護があってこそですか」

 かつてヴァビルカ教皇の一向としてマドレーア教会へ赴いた時に知り合ったササイと他愛もない話をするヘイゼル。


 教皇選挙は必ずエクレシア大聖堂に所属する枢機卿でなければならないという理由はない。

 枢機卿は他国にも席を置いている。それ故に教皇選挙は枢機卿である大司祭なら誰でも教皇選挙に参加出来るのである。


 そしてもう一つ。

「これはヘイゼル殿とササイ殿ではありませんか」

「もしや、ルナマリア殿ですか?」

「いかにもそうですよササイ殿」

 ササイが知っていることが嬉しいのか微笑む女性の姿、ルナマリア・シュイッセンがいた。


 教皇選挙は枢機卿に所属する大司祭なら男女を問わない。

 これは初代ロードが決めたことであり教皇選挙が始まってから今日の間に多くの女性大司祭も教皇選挙に参加を表明している。

 歴史を見ると多くは男性が教皇となっているが女性の教皇も存在している。

 その為に集礼の儀には少なくない人数の女性も集まっている。


 初めて対面するルナマリアにヘイゼルはまじまじと見ながら話始めた。

「ルナマリア殿も教皇選挙に出られるとは。これは遅れる訳には参りませんね」

「何を仰るかヘイゼル殿。有力者のお一人である貴方がそれを申しますか?」

「貴女もそうではありませんか?」

「その言葉はササイ殿にも申してくれるかの?」

 そう言って両者は急に話を振られたにも関わらずそれほど驚いていないササイを見た。

「私はお二方ほど有力ではございませんよ」

「何を仰いますか?貴方のお噂も聞いておる」

「お二方に比べたら他愛もない噂です」

 比べてしまうと本当に些細なことと言うササイにルナマリアが険しい表情で詰め寄る。

「何を申すか!貴方が行ったことは実に素晴らしいことです。胸を張ってよろしいことですよ」

「ササイ殿は少し謙虚になりすぎです」

「いえ、正直に申しているのです」

「例え正直であったとしても誉められたことに対し素直に受け入れたらどうかの?」

「ははは……これは参りましたね」

「参る話ではなかろうに」

 ササイの受け答えに不満を抱くルナマリアは呆れてしまう。

 そんな二人、特にルナマリアに対してヘイゼルは微笑むが内心では本当に負けられないと思っていた。

 なお、三人は気がついていないが、教皇選挙有力者の内の三人が集まって話をしているという様子は三人の周辺にある枢機卿からしたら驚くことで殆どがその様子を見ており、さらには集礼の儀が始まる前であるからさらに緊張感が膨れ上がっているのだ。


 妙に周りがが静かであることに気がついた三人は様子から事情を察した。

「それでは私は他の方への挨拶が終わっておりませんので失礼いたします」

「そうですね。私も失礼します」

「集礼の儀が始まったらまた話しましょうかの」

 三人一礼するとその場から解散をした。

 これによって緊張の一幕が引いたことに周辺にいた枢機卿は安堵すると挨拶回りを再開させた。




 それから時間は僅かに過ぎて……

「いよいよ、か……」

 大広間の扉を前にしてモルテが呟いた。

「リストに書かれた名前を見た時は驚いたけど、ここから先は何が起きても後戻りは出来ない」

 決意の眼差しで扉を見つめるオティエノもこれからのことを、そして先をも思って呟く。


 何故二人がここまで怖い表情を浮かべて扉を見つめるのか。

 それは七人の死神(デュアルヘヴン)とコルクスが集めた悪魔もしくは悪魔関係者を纏めたリストに心当たりがある名前がいくつもあったからだ。そしてその名前の人物の一部が大広間にもいる。

 本来はあってはならないことなのだが現に起こってしまったこと。

 だからモルテとオティエノは集礼の儀に参加するラルクラスを守りながらその行いに不審なところがないかと監視をし、さらには他にいないか探すのが務めである。


 ラルクラスは被っているフードを被り直すと後ろに控えているモルテとオティエノに語りかけた。

「時間だ」

 たったそれだけでモルテとオティエノ、そしてラルクラスの横に立つユーグは羽織っているローブに付けられているフードを被った。

 黒ローブは死神の象徴であり正装である為にエクレシア大聖堂の祭典では常に身に付けることとなっている。

 三人がフードを被ったのを察するとラルクラスは扉の両側に控えている警備員に向けて言った。

「扉を開けてほしい」

 その言葉に警備員は相手がどんな人物であるのか分からないが黒ローブの人物が訪れると上から聞かされていた為に不審に思うことなく大広間の扉を開けた。

 そしてラルクラスとユーグを先頭に、次いでモルテとオティエノが大広間へ入り、扉が閉められた。

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