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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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トライアー葬儀店

 大都市アシュミストはこの日も晴れであった。

「くぅ~、今日もいい天気だねぇ」

 新住宅街に店を構える「トライアー葬儀店」の屋根で黒髪のオールバックにサングラスをかけたがたいのいいトライアー葬儀店の社長ガイウス・トライアー・ホドがゴルフクラブを持ちながら一つ伸びをした。

「全くでございます」

 その言葉に同意するようにガイウスとは対照的な体型の社員オスロー・ヴィゴーレが頷いた。

「それじゃ今日もいっちょやろうかぁ~」

 ゴルフのスイングをするガイウスの言葉にオスローはわざわざ屋根の上に設置された平らなスペースにゴルフスペースにピンを刺しその上にゴルフボールを置いた。

 それを見るとガイウスはサングラスを外してゴルフクラブをゴルフボールの前で合わせ……

「ふっ!」

 打った。ゴルフボールは天高く長い距離を飛んでいった。

「ナイスショットです社長」

「そうかい!」

 オスローからお世辞を言われ照れるガイウスであった。


  * * *


 その頃、葬儀屋フネーラでは、

「ええぇぇぇぇぇぇ!!」

 ディオスの叫び声が響いていた。

「うるさいぞディオス」

「ちょっ、ちょっと待ってください店長!つまり、あの人は生きていたってことですか!?」

「だからそうと言っているだろう」

 モルテの言葉に茫然とするディオス。

 起床してすぐに仕事場に置いてた男が気になり足を運ぶとその男は居らずモルテから聞かされた内容に衝撃を受けていた。

「朝食出来ました」

 そんな様子のディオスを無視してファズマがキッチンからさいごに作っていた朝食を運んできた。

 今日の朝食は卵とチーズとハムのサンドイッチ、ミネストローネ、ミートボール、サラダ。そして、

「ソーセージの盛り合わせです」

 ドンとテーブルに七種類の大量のソーセージを盛った皿が置かれた。

 その量と朝食の多さにディオスはモルテから視線を外し驚いた。

「さて、説明は後にし食べよう」

 置かれた朝食にモルテが祈りを捧げようとした時だった。

「ん!」

「……あ!」

 モルテとファズマの動きが突然止まった。

「ど、どうしたんですか?」

 訳の分からないディオスは二人を交互に見る。

「もしかして来たの?」

「来た?」

 何が起きたか分かったミクはどこか楽しそうに言う。その言葉を聞いたディオスは首を傾げる。

 そして、ミクの言葉が合図となりファズマが急いでリビングを出ていき、モルテはインテリアとして設置されている暖炉の近くに置いている火かき棒を一本手に握ると急いでファズマの後を追った。

「え?え?一体どうしたんだ!?」

 何も言われず、宣言も聞いていないのに行動を起こしたモルテとファズマにディオスは後を着けないでいた。

 そんなディオスにミクが手を握ると引っ張った。

「ねえねえ行こー!おもしろいのが見れるよ」

「おもしろいもの?」

 ミクにせかされ後を追うディオス。

 二階に上がり倉庫へ。そして、倉庫から天井、今は一部が開けられ梯子がかかっている天窓を抜け屋根へとたどり着く。

「おう来たか」

 ディオスとミクが屋根に着いたのに気づいてファズマが声をかける。

「あ、あの、一体どうしたんですか?」

 事情を知らないディオス。そんなディオスにファズマが笑って言う。

「見ていればわかる」

 そう言うとモルテを見た。

 モルテはただ一点、空から落ちてくる火の玉を見ていた。

「何ですかあれぇぇぇぇ!!」

 ものすごい勢いで落ちてくる火の玉に驚くディオス。あれは何だと叫ぶ一方で心情では危険であると悟っていた。

 そんな心情を知ってか知らずか、モルテは火かき棒を両手で持つと肘を曲げ、しっかりと握り足を僅に出して構えた。

 迫り来る火の玉。その火の玉がモルテに近づいた瞬間、火かき棒をものすごい勢いで振った。

 カキーンという音を立てながら空高く飛んでいった火の玉。火の玉を打った火かき棒は途中からくの字のように曲がっていた。

「さて、朝食にするぞ」

 そんなことを気にせずモルテは三人に、今の出来事に驚いているディオスをよそに朝食を食べると言い渡した。


  * * *


 アドルフは眠たい表情を浮かべながら旧住宅街と市場が挟んでいる大通りを歩いていた。

「くっそ、眠いな……」

 そしてあくびをして頭をかく。

 四日前に逮捕した集団について深く調査しているのに深夜に別件で逮捕したことで寝不足である。しかも、生死を確かめなかった部下二名に生死の確認の大切さを長時間にわたって説いていたために仮眠の時間は殆どなかった。

 だから早めに切り上げ家で休もうとしているのだが、眠いからか帰り道が長く感じていた。

 そんなアドルフに近づくように火の玉が落ちてくる。

 それに気づいたアドルフは足を止めると長い溜め息を吐いた。

「誰だぁ……」

 周りの雰囲気が変わるのを感じながらアドルフはカバンから警棒を取り出すと構えた。

「俺は眠いんだぁぁ!」

 そして思いっきり振った。カキーンという音と共に火の玉は空高く飛んでいった。


  * * *


 新住宅街ではマオクラフが朝の郵便配達をしていた。

「ありがとうございます」

 手紙を渡し終えてその場を後にするマオクラフ。

 その直後、マオクラフは足を止めた。

「だからさぁ~」

 呆れながらに呟くマオクラフ。その頭上にはマオクラフめがけて火の玉が落ちていた。

 マオクラフはすぐさま胸ポケットからペンを取り出した。

「俺は仕事なんだから打ってくるなぁぁ!!」

 そして振った。その様子は意外にも拮抗していた。理や常識を無視したその光景は異様であった。それもそのはず、マオクラフが仕事柄様々な場所に行くために火の玉が落ちてきてそれを打ち返す回数が多いのだ。だからペンでも打つのに慣れてしまい拮抗できるのである。

 そして、バキィンという音と共に火の玉は空高く飛んでいった。

「あ~あ~……」

 火の玉と格闘したマオクラフは手に握っている折れてしまったペンを見て残念そうに呟いた。

「新しいの買わないとな……」

 これで368個目とマオクラフは溜め息を着いた。


  * * *


 ドーーンとまるで隕石が落ちたかというような音がトライアー葬儀店に響いた。

「社長ーー!」

 その音の出どころへ飛び込むオスロー。そこには頭にたんこぶを作って倒れているいるガイウスだけ。

 ガイウスは渾身の力で体を僅に起こすと手をオスローに向けた。

「なぁんでか分からないけど、戻って来たのぉね」

 そして力尽きるガイウス。

「社長ーー!!」

 そんなガイウスに叫ぶオスロー。


 これがトライアー葬儀店の早朝の風景である。

1章で起きた牛騒動で火の玉を落としたのはこの人です。なんでゴルフボールが火の玉になって落ちてくるかな……

そして、かなりの確率で打ち返されているのに懲りていないのだからたちが悪い。

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