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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
9章 教皇選挙(前編)
313/854

安置所、再び

 ファビオの驚く声に何事かとハロルドが問いかける。

「うるさいな、どうしたと言うんだ!」

「ああ、ごめん。どうやら墓地に侵入者が入ったらしいんだ。な?」

「はい」

「えっ!?」

「そうなの?」

 ファビオとユーグの言葉に驚く七人の死神(デュアルヘヴン)だが、唯一ハロルドはそれに怪訝を抱く。

「どうして侵入したって分かるんだ?」

「そういえば!」

 ユーグがの慌てっぷりから釣られてしまったが、思い返せば自分達は墓地に誰が侵入したのかそれを知る方法を知らないことに気づかされてユーグへ視線が行く。

「どうして墓地に誰かが侵入したって分かったんだ?」

「皆さんも鈴の音を聞いたと思いますが、あれは墓地に誰かが扉を開けて入るとここへ知らせる様になっています」

「あれか」

 ユーグの説明に七人の死神(デュアルヘヴン)は先程聞こえた鈴の音はそういうことなのだと理解する。

「確認しますが、墓地の扉の鍵は?」

「ここにあります」

 ヤードの言葉にユーグは手に持っている鍵束を見せた。

 どうやら鍵は死神デスの区画にあったのだと理解するが、それなら何故扉が開けられたのかと疑問に思う。


「確認をして参りますのでこれで失礼します」

「何言っているんだ。侵入されたってことは一人で行くには危険だ」

 ユーグが急いで墓地の様子を確認したく七人の死神(デュアルヘヴン)に早口で言うと鍵もなく墓地への侵入がどんな人物か分からず危険だとファビオはユーグを止める。

「ユーグと墓地に行ってくる」

「僕も行こう」

「私も行きましょう」

 ファビオが同行の意を示すとアルフレッド、ハロルド、ヤードも着いて行くと言い出した。

 こんなにいっぱい行かなくてもいいんじゃないかと思うところはあるが誰もそれについて突っ込みがなく、その為に否定もない。

「私は死神デスにこのことを伝えてきます」

「俺はさっきのことがあるからここに残るよ」

「分かった」

 アイオラとオティエノも自分がやることを決めるてユーグと共に墓地へ行く四人と頷きあった。

「行くぞユーグ」

「はい!」

 アルフレッドに促されてユーグは四人と共に駆け足で墓地へと向かった。



  ◆



 墓地へ続く間に設置されている二つの扉は無惨にも壊されていた。

「酷いな……」

「感傷に浸る暇があるならさっさと行くぞ!」

 ハロルドに促されて扉の奥、安置所へとたどり着く。

「ここは、何ともない、のか?」

「ですが、何が起こってもおかしくないと思います」

 見た感じ異変がないことに唖然とするファビオにヤードが警戒をする。

「ヴァビルカ教皇は?」

「……大丈夫、中にある」

 安置所に唯一置かれている木製の棺の中に納められているヴァビルカ教皇の遺体はちゃんと納められたままで無事であることをアルフレッドが死神の力を目に纏わせて透視で確認をして言う。


 ヤードも念の為にと透視で無事であることを確認する。

「確かに。そうすると扉を壊した者はこの奥に向かったと言うことですか」

 ヤードの言葉に全員が地下にある墓地へと続く階段に視線を向ける。

「何が目的かは分からないが行くしかないか」

「そうですね。私とファビオで下に行きましょう。アルフレッドとハロルドは念の為にここで待ってもらえますか?」

「分かった」

「……ああ」

 ヤードの人選にアルフレッドとやや不満げなハロルドは頷いた。

「ユーグ、案内をお願い出来ますか?」

「あ……はい」

「どうした?」

 ヤードの言葉に間を置いて答えたユーグの様子が不審に感じたファビオが心配になって尋ねる。

「考えていたんです。扉の破壊が悪魔のものなら、悪魔は既に大聖堂の中にまでいるのではと」

「……確かにそうだな」

 ユーグの言葉に死神四人は先程まで抱いていた気持ちを肯定する。


 大聖堂にはサンタリア周辺に張られている結界が張られているのだが、結界が弱くなると悪魔の侵入を許してしまうのだ。

 意識が邪悪な存在は聖なる場所に近づくことがないという前提である為に既に潜んでいるという予想が抜けてしまうものである。

 辛うじて五人が悪魔が既に大聖堂に潜んでいると考えたのはやはりサンタリアに多くの悪魔が既に侵入してきているから大聖堂にもとの考えである。



 嫌な予想が脳裏に浮かぶのだが、ユーグが反応が遅れた理由を言う。

「それで、上手くいくかどうか分からないんですが少し考えていたんです」

「ちょと待て!上手くいくとか考えてたって、何かやろうとしているのか!?」

「今思い付いただけだが……」

「今かよ!」

 ファビオとユーグのやり取りにアルフレッドがわざと咳払いをした。

「ごほん。あ~、一体何を考えていたんだ?」

「もしかしたらこの騒ぎに侵入している悪魔がここへ来るかもしれないと思うんです」

「……あり得て怖い」

「そもそも大聖堂の横を通って来たから奴等にしてみたら見えていたかもしれないな」

 意識あるものは気になる騒ぎがあると確かめたくなるもの。それは悪魔でも同じことであり、見つからずに墓地へ訪れることは難しいことではないと頭を抱える。

「だからこれを考えていたんです」

 悪魔が来るのならそれに備えればいいとユーグが案を出した。



 それから数分後。

「それじゃここは頼んだ」

「ああ」

 ユーグのとんでもない案に乗って大急ぎで準備を終えると、ファビオとヤードはユーグの案内で更に下の墓地へと向かった。

 三人を見送ったハロルドはアルフレッドに問いかけた。

「上手くいくと思うか?」

「なるようになるんじゃないかな?」

「また出たとこ勝負……どうしてこうも……」

 上手くいくかどうかも分からないのにどうしてあっさり乗るのか分からないハロルドは不満をまた抱いて、すぐに口を閉ざした。

「……聞こえる?」

「ああ」

 突然聞こえてきた足音にアルフレッドとハロルドはユーグが出した案に乗るように行動を開始した。

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