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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
9章 教皇選挙(前編)
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状況変化

 とある裏路地、夜の暗闇の中で複数人の人間(・ ・ )が集まっていた。

「どうだ?」

「半分が戻って来ない」

「そうか」

 昼間にサンタリアへ侵入させた仲間が半分戻って来ない知らせに質問をした者が落胆する。

「思っていたよりも死神の動きが速かったな」

「それだけ予期していたということだ。帰って来ない仲間を考えるととても多すぎる」

「そもそもこんな時に我々の目的を達成出来る機会を奴らが許すわけなかろう」

「動かない理由などないか」

 恐らく犠牲となった仲間達を各々が抱く死神の憎悪を交えて呟く。


「それにしても、もっと早く知っていたら増援を呼べたのだが……」

「仕方なかろう。あの教皇が何の前触れもなく朽ちたのだ」

「何をやっても死ぬことがないと思っただけにな」

「突然だものな」

「不気味なくらい呆気なくな」

 ヴァビルカ教皇の死去の知らせはもちろん驚いたが、それ以上に死なないと思っていたのに死んだら呆気ないものと話して、一人が叫ぶ。

「増援など呼べるわけがないではないか!」

 話は最初に戻り、そこから追及をする。

「何故死んだか分かるか?」

 尋ねた者は全員に顔を向けるが、殆どが無言、表情を一切変えない。

「蓋がされていたとはいえ、あの棺の中にあの教皇の姿はない。恐らく別の場所に安置しているだろう」

「そうなると地下の墓地か……」

 仲間の一人が持つ『目』のお陰で死んだ理由が分からないながらもヴァビルカ教皇の遺体が力ない人間が目にする場所とは違う所にあることを知る。

「それじゃ次は中か?」

「いや、俺達はこのまま外だ。中は前からいる奴らに任せる」

「はあぁぁぁぁぁ?」

 一人の提案に不服と声を上げる者がいたが無視して付け加える。

「それと中は増援が来てからだ。それまでは目立つな」

「死神にあったらどうする?」

「奴らは知っているだろうから聞き出せるようなら聞き出せ。誰かを犠牲にしてもいい」

「おお、残忍!」

 最後に付け加えられた指示に全員の目がギラギラと輝いて笑う。ここにいる全員が既にその気になったのだ。

 仲間を蹴落としてまでも目的を達成するという歪んだ思想に。

 受け入れられたと見て今まで指示を出していた者がずっと黙って聞いていた存在に尋ねた。

「これでいいか?」

 その言葉にそれはニヤリと口を開いて笑った。

 そして、夜の暗闇は朝日の光により終わりを告げることとなったが、裏路地にいたはずの複数人の姿はそこになかった。



  ◆



 エクレシア大聖堂の死神デスの区画では朝からちょっとした変化に驚いていた。

「まさか、アイオラが味付けをしていたとは……」

「スープだけですけどね」

「いやいや、スープだけっていうけどよくやらせてくれたな」

「そこは仲良くなったからとしか言えません」

「やっぱりそうなるのか……」

 今朝の朝食に出たスープの味付けが違っていたことに驚き、何故だと話していたらアイオラが味付けをしたと発覚したのだ。


 こういった大量の料理を作り出される場所では料理の味付けは二種類に分けられる。

 味付けが毎度違う大雑把か、味を統一するために分量が決められた変わりのない味のどちらかである。

 それが今回、アイオラという予想外イレギュラーによってスープの味に変化が起きたのだ。

 当然不意打ちの様なものであるために話題となる。


 朝食が終わってもスープの話しは続いていた。

「そもそも、何故アイオラがスープを作ることになったんだ?」

 アイオラの行動理由が分からないハロルドは質問をした。

「ほら、私が料理人達に話を聞くってなったじゃないですか。その為に赴いたんです」

「それは別に朝早くからじゃなくてもいいだろう」

「いや、話を聞く時間が限られているんだ。だからまだ仕事が始まっていない時間に聞きに行ったんだ。そういうことでしょ?」

「はい」

 さすがは一日共に行動をしただけのことはあり、オティエノの推測にアイオラはその通りだと頷いた。

「それで、どうして料理を?」

「それは話を聞く為です。あまり重要そうなのはありませんでしたが私個人としていい話しは聞けました」

 アイオラとしては理由が料理人達から聞き出せるチャンスを増やしているために積極的に参加をしているが、また行くかは不明となっている。


「それで、重要な方はどうだ?」

 モルテの質問にアイオラは暗い表情を浮かべた。

「始めに昨日話した料理人を覚えていますか?」

「確か教皇が亡くなった日の朝食を担当したという方ですね。その方がどうかしたのですか?」

「今日訪れていないんです」

「それはまた……」

 思っていなかった方向に全員の顔が僅かに強ばる。

「それで朝食前に外の死神に調べてほしいと手紙を送って、先程連絡が来たのてす」

 そう言ってアイオラは懐からまだ開けられていない手紙をテーブルに置いた。

 朝食後の会話をする前に一度部屋へ赴いて渡りの伝達文箱(メールボックス)を確認すると入っており、そのまま持って来たということだ。

「まだ見ていないんだ」

「これからです」

「だったら早く見よう」

 ただの料理人のはずなのに、訪れない理由が何か分からないだけで妙に気になってアイオラに口やら視線で急かしてしまう。

 そもそもただの安否確認だけなのに何故と思わないところはない。


 そんな雰囲気を感じながらアイオラは封筒を開けて中の便箋一枚を取り出して、

「え……!?」

 書かれていた文章に絶句した。

「どうした?」

 心配してと言うよりもアイオラの様子に驚く一同。

 そして、

「悪魔に魂を食べられて殺されてと書かれています」

 全員が絶句した。

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