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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
9章 教皇選挙(前編)
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情報共有

「そんなにもいたんですか!?」

 七人の死神(デュアルヘヴン)が集まった部屋でアルフレッドとハロルドの話を聞いていたアイオラが驚いて声を上げた。


 今は夜、情報を共有しようと集まった場で最初にアルフレッドとハロルドが悪魔のことについて述べると、討伐した多さに驚きの声が出たという訳だ。


「ちょっと信じられないな」

「モルテ、前回はどれくらい悪魔が侵入してきたか覚えていますか?」

「少なくとも今よりも多い。まだまだ増えるだろう」

「なっ……」

「うげぇ……」

「嘘……」

「うわぁ……」

 前回はどうだったのかと呼ばれた経験があるモルテに尋ねるヤード。そして、帰ってきた回答に今回初めての招集者数名が驚いて呻き声を上げる。

「悪魔と接触して分かったことがいくつかある。さっきも話したけど、悪魔が既に入り込んで来ていていること。これは多分選挙に向けての偵察だと思う」

「数で来るってことか……」

「外の死神と連絡を取り合った方がいいかも」

 数がまだ増えること、そして現状の目的を考えるて七人の死神(デュアルヘヴン)に緊張が走る。

「やはり死神デスの護衛はこのまま続けた方が……」

「ラルクラスと話して3日と決めたではないか。それに私達がいなかった時があったのだ。狙われているのなら既に狙われているだろう」

「しかし……」

「不安なら先伸ばし出来る言い訳でも見つけておけ」

 ラルクラスの安全を心配するヤードにモルテが護衛をしていた時の話を思い出しながら制するとまだ続きがあるとアルフレッドが続きを言う。


「それと、接触した悪魔全部がヴァビルカ教皇に呪をかけていないこと悪魔の数がヴァビルカ教皇の死去が発表されてから増えている」

「ん?それはどういうことだ?」

 話がよく分からないと尋ねるファビオにハロルドがアルフレッドに指を指す。

「こいつが言った通りだ」

「おいおい、こいつはないだろ。少なくともアルフレッドは年上なんだからせめて名前で言えよ」

 アルフレッドをこいつ呼ばわりしたハロルドにファビオが呆れて名前で言えと促す。

 ハロルドはふん、と鼻を鳴らして顔を叛ける。それだけでアルフレッドのことをまだ受け入れきれていないことが分かる。

 当のアルフレッドは苦笑いを浮かべるが、すぐにハロルドに話したことと同じことを言うと、全員が唸った。

「つまり、悪魔も教皇の死去が発表されるまでは知らなかったと言うことですか」

「ああ。それに、遠回しに聞いても反応が知らないように思えたんだ」

「それってつまり……」

「侵入してきた悪魔じゃない悪魔が独自に生み出したか、そもそも存在しないかのどっちかだ」

 アルフレッドの予想に全員が黙り込んでしまった。

 今まで呪がかけられている前提で、いや、実際に呪がかけられているのだからその方針で考えていたのだが、ここに来て新たな可能性が頭を出したのだ。

「ラルクラスは前列がないと言っていたが……」

 護衛をしていた時にの話をまた思い出しながらモルテが呟く。

 護衛であった為に報告出来そうなことはないと集まって最初に言ったモルテであるが、時折こうして思い出しては呟いている。

死神デスが?」

「ああ」

 前列がないと言う言葉に食いついたファビオにモルテは肯定すると、場が何とも言えない雰囲気になる。

「前列がないってことは死神デスでも初めて……認識していない?」

「そんなことが?ですが……」

「あり得ると思いますか?」

「まだ分からない。それに今は情報を共有するのが目的なんだからそれからにしよう。アルフレッド、話が終わりなら話してもいいかな?」

「ああ」

 新に出た可能性を一旦横に置こうとオティエノは言うと、意識を自分へと向け始める。



「先ずは調理場と料理人を調べてみたけど、こっちは怪しいところはなかったよ。今のところは」

「今のところ?」

「ヴァビルカ教皇が亡くなった日に担当した料理人達がお休みなんです」

「後はその料理人を調べればいいってことか」

 オティエノの意味深な言葉に何事かと思ったが、そういうことかと全員が理解する。

「そう言えば、ずっと調理場ばかり気にしていたが、食材の保管場所はどうなっていた?」

「そこはアイオラが調べてくれた」

 モルテの発言にやはり女性らしい視線があるのだと思ったオティエノは説明をアイオラに変える。

「全て見させてもらいましたが怪しいものはありせんでした」

「そうか。そうすると器材もか?」

「はい、全部」

「よく見せてくれたものだ」

「それは仲良くなったからとしか言えませんね」

 関心すると言うモルテにアイオラが微笑む。


 実際に事情を知るオティエノはアイオラの活躍を予想以上と思っている。

 あっという間に料理人達の輪に入ったかと思うと、気づくと準備を手伝うと言って食材の保管こへ赴いているは何故か料理を手伝っていると当初の予定は?いや、目的は?と叫びたくなったが、アイオラは自分のやり方で必要なもの全てを集めてしまったのだ。

 これは自分がいる意味があったのかとオティエノは地味にへこんだものである。


 アイオラは微笑みながら目の前のテーブルに置いた紙の束に手を置いた。

「それからこれです。半年分の献立の記録を借りてきました」

「そこまで!?」

「はい、言ったら貸してくれました」

 驚くファビオにアイオラはまた微笑んだ。

 調理場に至ってはアイオラさまさまと思う七人の死神(デュアルヘヴン)である。

「後は大聖堂の中ですが、今の所おかしい人はいませんでした」

「そうか」

 それからとエクレシア大聖堂内部の様子のことも話してアイオラとオティエノの報告は終了した。



 アイオラは話すことがないと言って最後の報告をとファビオに促す。

「それじゃ俺達も報告だけど、先にもう一人手伝ってくれ」

「は?」

 いきなり何を言い出すのだと全員が目を丸くする。

「情報を得られる記録はありました。ありましたが膨大なんです」

 ファビオの気持ちに同意すると共に調べていたヤードが憔悴しきった様子で肯定する。

「そんなにも?」

「ああ。どれだけ要約しようとしても数日で終わるものじゃない」

「記録の資料だけで山が出来ているくらいです」

「そんなにか!?」

 ヤードの例えでどれだけ資料が多いのか理解したハロルドが驚いて叫ぶ。

「精々多くて十冊くらいって思ってたけど、そっちも甘くなかったんだ」

「そっち?」

「こっちの話しだから気にしないで」

 オティエノも見通しの甘さに痛感したが、まだ本題を口にしていないと問う。

「けれど、調べられた所はあるんじゃないか?」

「ああ、3ヶ月前までの公務だけだ。その中に2ヶ月前に外で公務をしていた記録があった」

「そこは?」

「トンだ」

「トンか……」

「トンにはダーンの工房がある」

「それじゃ彼に?」

「頼んでみる」

 まだダーンから報告が来ていないから追加しても問題ないとオティエノは本人の許可なくダーンに追加の調査を頼むことを決めた。


 もちろん、その依頼書にダーンが悪態をつくも孫娘であるベルモットと同じく依頼を受けて勝手に滞在をしているミゲルに促されてやらざるを得なくなるのだが、それを七人の死神(デュアルヘヴン)は後日知ることとなる。




 一通り情報を共有し終えると、話は明日へと向く。

 明日の予定を話すのはまだ情報が不足していて纏められないからである。

「それでは明日のことですが」

「俺がファビオとヤードの手伝いをしようか?調理場の方はアイオラ一人でも大丈夫って分かったから」

「いいのですか?」

「ああ。アイオラもそれでいいかな?」

「はい、任せてください」

 確認が後になってしまったがアイオラは気にしてはおらず受け入れる。

「それじゃ俺とハロルドはこのままサンタリアを見回るよ」

「私もラルクラスの護衛を続けよう」

「分かりました。こちらも記録の要約を続けます」

 こうして明日の予定があっさりと決まった七人の死神(デュアルヘヴン)は各々明日の準備へ動くのであった。

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