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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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トラウマ

「時間だ」

 ディオスの説得はファズマの時間切れを告げる言葉によって終了された。

「で、でも……」

「言ったはずだ。時間を守れと」

 説得途中なのに打ち切りを言ったファズマ不満そうな表情を向けるディオス。だが、約束だからと言われては口が出ない。

 ファズマは男の娘に一礼した。

「長話をしてしまい申し訳ございません。俺達はこれで失礼させていただきます」

 そう言ってディオスの手を引いて早々と撤退した。


 二人の小さくなる背後を見ながら男の娘は呟いた。

「……あのクソ親父!」

 嫌々しく呟かれた言葉に顔を歪める。分かってた。本当は嫌いになれなかったことを。

 家にいると何もしない父親に父親らしくいてほしいから色々と要求してはエスカレートしていき罵声に発展していた。

 そんな自分に嫌気がさして父親と会いたくなくなっていた。そして、父親が死んだと警察から聞かされた時は嫌気から父親と会いたくなく遠ざかった。

 これでいい。これなら傷つかないですむ。そう思っていたのに今さっき父親と同じ店で父親と知り合ったという若い男、その内の一人が会うように説得してきたのには驚いた。

 勝手なことを言うなとも言ったがその男はまるで最初から見抜いていたような説得をしてきた。

 さすがに焦った。何て言い訳をすればいいのか分からなかった。仮に言い訳が出来たとしてもその言い訳に対して突いてくる気がして気が気ではなかった。

 幸いと言っていいのか二人には時間がなかったようですぐにどこかへと行ってしまった。

「はぁ~……」

 男の娘は溜め息をつくとそろそろ夜空になろうとする空を見た。

(明日、警官に行こうかな?)

 そんなことを思いながら扉を閉めた。


 市場でファズマは夕食と明日の食事に使う食材を買っていた。その後ろではディオスが少しだけ不機嫌な表情を浮かべていた。

 その表情を無視することに決めていたファズマだがあれから大分時間が経つのに崩れない表情から溜め息をついて尋ねた。

「どうしたんだ?」

「何が?」

「不満そうな顔してるぞ」

「不満は抱いていません。始めから時間は守るようにと言っていたんです。説得が途中になったのは確かにすっきりしてないけど、問題が父親よりも金問題だったのが……」

「なるほどな……」

 ディオスの表情の理由を聞いてファズマは納得した。

「そういや、ディオスも借金で苦労してたな」

 ディオスが葬儀屋フネーラに初めて訪れた時、ディオスは家族と共に巨額の借金を抱えていた。なかなか返せなかった金額と家族の危機をモルテが救ったことで今はそう言った危機はないが金関係の問題となるとディオスにとっては嫌なものでしかない。

「まさか金問題になっているとは思いませんでした。しばらく聞きたくなかったのに……」

 そう言ってへこむディオス。

(おいおい、まだへこむには早いぞ!)

 そんなディオスの様子に心の中で突っ込むファズマ。はっきり言ってへこむタイミングは今ではないし事情も違う。

「そうとう重症だな……」

 ディオスのへこみようにファズマは金額の借金がディオスを金問題嫌いにさせたと睨んむ。

「とにかくこっちに戻ってこーいディオス。袋持て」

 市場ではあまり見ていられなくなりファズマはへこんでいるディオスを現実に戻すと買ったばかりの食材の袋を無理矢理持たせた。

「それで、説得をしたがよかったと思うか?」

「はい」

 ファズマの説得してよかったかと言う質問にディオスは頷く。

「ディオスはどう思っている?」

「多分会いに来ます」

「そうか」

 ディオスの説得の態度から何となく感じていたファズマ。

「よし、買い物終了。帰るぞ」

 そして、買うものを買ったファズマはディオスに声をかけると帰路についた。

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