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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
9章 教皇選挙(前編)
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問題の朝食

 エクレシア大聖堂へ訪れて3日目。

 朝早くから七人の死神(デュアルヘヴン)の表情は強ばっていた。

「これがか……」

 部屋のテーブルに置かれたものに向けて皆の目が行く。

「これが教皇が最後に食べた朝食ですか」

 頼んでいた朝食が並べられているのを見て全員が色々と思う。

「御老体としては随分と食べるのだな」

「多すぎるだろ……」

「しかもこれ、朝に食べるようなものじゃないのもあるんだが?」

「これでは昨日頼んでも無理な訳か……」

「野菜が多いですね」

「肉が少ないです」

「注目するところ違うと思うんだけど……」

 散々出された朝食に対する突っ込みにラルクラスが苦笑いした。

「ヴァビルカ教皇はあの歳でかなりの大食いだったからこれくらいは出るんだ」

「いや、大食いって……朝からこんなに食べられるとは思えないんだが……」

「食べるんだ」

「……本当ですか?」

「本当です」

 ヴァビルカ教皇の食事量について話すラルクラスとユーグの言葉に殆どが信じられないと呆然する。


 その出された朝食の品は、硬く焼かれたパン、夏野菜のサラダ、スパニッシュオムレツ、ミートパイ、ミルクスープ、果物の盛り合わせ。

 ロード教では朝食が大事とされているために質素なイメージを取り払っているが、今度は逆に量と種類の多さと豪華さに頭を抱えることとなる。

「70歳が食べるようなものじゃないと思うんだけど?」

「歯が丈夫なのでしょう」

「それに、何度見ても量が多すぎる……」

「品数も多いですね」

「絶対に一人じゃ食べきれません……」

死神デスが言った意味が分かった気がする……」

「ああ」

 散々好き勝手にヴァビルカ教皇と朝食について話すと、ハロルドの言葉に同意だと頭を抱えていた死神は深く頷いた。


 ラルクラスが朝食について七人の死神(デュアルヘヴン)に前もって言っていたこと。

 それは……

「適当に取り分けた方がいい」

 と言ったのだ。

 エクレシア大聖堂に訪れてから差し入れ以外は一人前が盛られた皿が置かれていたためにそれはどういうことなのかと分からなかった。

 だが、今日出された朝食を見ればその意味が分かる。

 ヴァビルカ教皇が食べている朝食は一人前以上あるのだ。とても70代の御老体とは思えない程の量の多さである。

 これでは死神デスが朝食を「取り分ける」なんて言う訳がないと全員が納得するのである。

 それでも、料理をまとめて少ない人数分で頼むと、何とか全員で食べきれるだけの量にはなる。



 気を取り直して七人の死神(デュアルヘヴン)は椅子に座ると改めて朝食を真剣な目で見る。まだ誰も朝食に手は出さない。

「見た感じ、おかしい感じはしないな」

「けれど、これのどれかとなるとゾッとするな……」

 朝食を見て一番に呟いたアルフレッドの言葉にファビオが呪のことを思い出して気持ちが縮こまる。

「毒と同じ方法で入れたとして、怪しいのはこれになるな」

 呪の掛け方はわからないが、毒と同じと仮定してハロルドはミルクスープを睨んだ。

「液体に入れるのは確かに定番ですが、今回は呪です。そして、呪ならどれにでもかけられるはず」

「そうだな」

「そうすると、全ての料理に呪がかかっていたかもしれないと言うことですね。もしかしたら呪をかけていた一品を偶然食べないと考えれますし」

「そうなると、料理人が怪しいな」

 現状最も犯人の可能性として高いのが朝食に呪を仕込む料理人となる。

「一先ず料理人と調理場を調べよう」

「料理人だけじゃなく調理場も?」

 オティエノの提案にファビオが首を傾げた。

「調理場にも何かあるかもしれないから。それと、ヴァビルカ教皇の料理を作った人が今日の料理を作った人と同じとは限らないからそこも調べないと」

「確かにそうだな」

 調べ事には的確なオティエノに反対意見を出す者はいない。

「そうなると誰が行くかですが……」

「私が行きましょうか?」

「アイオラ?」

「はい。私なら上手く出来ると思うのです」

「それじゃ俺も行くよ。一人だと怪しまれるかもしれないし、役割分担をして聞いた方が話は進みやすい」

「そうなのですか?それではお願いします」

 こうして調理場と料理人の確認はアイオラとオティエノの役割となった。



 話は今日の予定と役割分担へ移った。

「ラルクラス、許可の方は?」

「もう少ししたら来るだろう。大方認められる方針でいるのだからな」

「それを聞いて安心したよ」

 念のために確認を取ったアルフレッドは安堵をついた。

 ヤードもそれを聞いて安心すると昨日あらかじめ決めていたことを決める為に進行係として指を立てた。

「それでは、これからやることは4つ。1つは料理人達の調査。これは先程話した通りアイオラとオティエノにお任せします」

「はい」

「うん」

 ヤードの言葉にアイオラとオティエノは頷いた。

「2つ目はエクレシア大聖堂及び周辺に不審な者がいるか探し出すことです」

「それは多い方がいいな」

 サンタリアは広いとファビオが呟くと、同時に声が響いた。

「そっちには俺がやるよ」

「僕がやろう」

 アルフレッドとハロルドが同時に名乗りだして、ハロルドが驚いてアルフレッドを見つめる。

「それでしたら私達の方が終わったらエクレシア大聖堂の方は任せてはもらえませんか?」

「……そうですね。アイオラとオティエノは調理場の方が終わりましたらお願いします」

「はい」

 突然のアイオラの提案に全員が一瞬だけ飲み込めずに硬直するが、すぐに理解したヤードが改めて頼む形として二人の方針に追加させる。そして、更なる追撃が打ち込まれる。

「それでは、エクレシア大聖堂の外はアルフレッドとハロルドに任せよう」

「ああ」

「えっ!?」

 これからの役割も考えるとこの役割はこの二人で決定だろうと勝手にモルテが進行して決定してしまう。

 アルフレッドは何も気にせず肯定したがハロルドだけは戸惑っていた。

 しかし、反対意見を出す暇もなく、ヤードもそれには賛成だと言う様子で勝手に話を進める。

「3つ目は教皇の経歴です」

「4つ目のことを考えるとやっぱりそれは俺とヤードの方がいいんじゃないか?」

「そうですね」

「ふむ」

 役割が振られていないが為にファビオの出した提案にモルテとヤードは頷いた。


「決まったようだな」

 話を黙って聞いていたラルクラスは終わったと見て声をかけると促した。

「それでは朝食を食べようとしよう。終わるまでには許可書がくるはずだ」

 その言葉に今まで緊張感を抱いて話してた七人の死神(デュアルヘヴン)は僅かに気を緩めて朝食へと移った。



 なお、4つ目を知らないラルクラスが朝食の途中に何かと尋ねて、そや役割に困った表情を浮かべて、何とか自由だけひ認めてほしいと懸命に説得するのであった。

次回から場面展開が複数になります。

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