七人の死神
死神の言葉に七人の死神は一斉に被っていたフードを脱いだ。
そして、現れたのは七つの素顔である。
こうして初めて素顔が露になったことで顔を隠していた全員が他の死神がどの様な顔なのかと目で見回す。
そこにユーグが進み出た。
「それでは紹介に移ります」
そう言ったことでコルクスは近くにいる女性の死神へ飛んだ。
『この者はアマーベル国ノンウィルのアイオラ・ユエルソン・ゲンマだ』
「初めまして、アイオラ・ユエルソン・ゲンマです」
コルクスの紹介にアマーベル国民の大半の特徴と言っていい長い銀髪を一本の三つ編みにして纏めたものを肩から下げており、白い肌に緑の目をしたアイオラは会釈をした。
その身のこなしは優雅で見とれてしまうほどである。
アイオラの紹介が終るとコルクスはアルフレッドへと飛んだ。
『この者はエクエス国ブランドのサイフ・ノイマン・アルフレッドだ』
「サイフ・ノイマン・アルフレッドだ。よろしく」
「……《騎士王》」
アルフレッドの紹介にここで初めてアルフレッドの素性を知った遅れた死神と思われる肌の色が僅かに褐色の死神が呟いた。
『異名を持つことから悟っていると思うがアルフレッドは前回の招集に呼ばれている。この件が終われば皆にも異名が付くであろう』
まだ先ではあるが予定ではそうなるとコルクスは胸を張って言った。
死神の異名は通り名の様に人知れずに渡り歩くものではない。死神に招集された死神が賜るものなのであるものであり、それ相応の意味がある。
死神に招集された死神は七人の死神として招集された目的を全うするとその礼として異名が与えられるのである。そして、異名を持つと言うことは力ある死神として認知される。
死神に招集されることが名誉であるとされる理由がこれである。
アルフレッドの紹介を終えたコルクスはモルテへと飛んだ。
『この者はシュミラン国アシュミストのモルテ・アストロ・ケセド。アルフレッドと同じく前回の招集に呼ばれた者だ』
「モルテ・アストロ・ケセドだ」
モルテの紹介がされた直後、場の空気が僅かだが張りつめた。
「あの人が……」
「まさかここで会うとはな……」
そんな呟きが漏れた。
その理由はモルテが持つ異名がとんでもないものであるからだ。その異名はそれだけでモルテの実力が高いことを示唆すものである。
『先に言うが前回も呼ばれた者はモルテとアルフレッドのみだ』
驚きと戸惑いの声が聞こえたからかコルクスが一応これ以上の前回呼ばれた七人の死神がいないことを伝えると褐色の死神へ飛んだ。
『この者はズィンゴ国ジケンダのオティエノ・ハリス・イザールだ』
「オティエノ・ハリス・イザールです。よろしくお願いします」
オティエノは褐色がかった肌に短く刈られた黒髪に茶色の目をしている。加えて部屋に入って来た時のようなおどおどとした態度は見られない。あれは本当に招集の時間に遅れそうで不安で慌てていたからと思われる。
『ちゃんと言えたな』
「言う時は言います」
コルクスにもその点を心配されていた為に指摘されたオティエノは軽く睨み付けた。
オティエノに言うだけ言ったコルクスはオティエノよりも僅かに年下と見える死神へ向かった。
『この者はイストリア国ワシリナのハロルド・ルイス・アルギエバだ』
「ハロルド・ルイス・アルギエバだ。よろしく」
ぶっきらぼうに紹介に応えたハロルドは茶色の髪にヘーゼルの鋭い目付きをしている。
そして、ハロルドの雰囲気はどこか敵対心がむき出し、特にアルフレッドへと向けられている。
アルフレッドの実力は異名を聞いて理解している。だからこそ超えたいという気迫である。
ハロルドの雰囲気を無視してコルクスは中年の死神に飛んだ。
『この者はスアウィード国キシュカのヤード・イアスト・ハダルだ』
「紹介された通りヤード・イアスト・ハダルと言う。よろしくお願いします」
会釈をしたヤードは銀髪に灰色の目をした男である。
加えて集められた者の中では特に余裕そうに、周りを見回して観察しているように見える。
そうして、コルクスは最後の一人に飛んだ。
『最後にこの者がパシオン国サンチェスの・ファビオ・ロベス・シェダル』
「ファビオ・ロベス・シェダルだ。さっきも話したが《歩く隠者》カルロスの弟子だ。改めてよろしく」
カルロスの弟子てあることを改めて認めたファビオは赤い茶髪に茶色の目をした男である。
モルテに見破られたとはいえ領域の使い方には驚かされる技術力を持つことから分かる通りファビオもまたただの領域使いでない。
一通り紹介が終るとコルクスはラルクラスの元へと飛んだ。
「これが今回の七人の死神だ。これからの勤めにしっかりと携わってもらう」
ラルクラスの言葉に死神達は静かに聞き入った。
死神に呼ばれると言うことは即ちこれから起こることに関わることを言っているからその責任は駐在する場所よりも思いのである。
そして、ラルクラスの雰囲気が一瞬にして変わった。
「自己紹介はここまでだ。集まった者達の中にもいるだろう。教皇の死に関する不自然を抱くものが」
本当に自己紹介の時に砕けていた口調と雰囲気が失い、誰もが思う死神へと変わる。
そして、ラルクラスの言葉通り何人かの死神にも緊張感が抱かれた。
「今ここで話そう。教皇の死について」
そして、いきなり思ってもいない流れへと動いた。




