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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
9章 教皇選挙(前編)
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サンタリア

 ヘルミアの街で昼食を食べ終えたモルテは鳩の宿へ戻ると当てられていた部屋で考え込んでいた。

「決めつけることはあまりよくはないがどう考えても不自然過ぎるだろう」

 生霊リッチ関連ではこうではないかと決めつけてしまう傾向があるモルテだが、今回の教皇の死去はおかしいと見て早期に結論付けまいと心かけているが、それでも気になってしまい時折そうした傾向を含んだように呟いてしまっている。

「しかも、数日分の新聞にも載せられていない。情報も噂も殆どない。何なんだ今回は?」

 昼食を食べる目的で街へ出た際に可能な限りの情報収集を行ったが結果はよろしくない。オウガストと話していたから期待はしていなかったと言えば嘘になるがこうも何も得られないとは思っていなかった。


 せいぜい何処か一つくらい騒ぎになっていてもいいと思っていたのだがそんな所もない。完全に教皇の死去が発表されるまで知らされないことが分かる。

「前回の教皇選挙はこうではなかったのだがな……」

 教皇の殆どは自ら辞任はせず死去することで辞任する。その際は病気にかかっている等の話が広がるものである。前々教皇がまさしくそれだったのだが今回亡くなった教皇にはそういったものがない。

「……隠す理由でもあったのか?」

 考えれば考えるほど憶測しか出てこない。

 それに、真相は直接教皇死去に携わった者達に聞けば早いのだが、モルテが独自に調べているのは納得する真相への手がかりを得たいからである。

「くそっ!コルクスに聞いておけばよかった!」

 モルテはミノリア島でコルクスから具体的な教皇死去について聞いていなかったことを今になって悔やんだ。

 あの時に聞いていれば少しでも聞く気があったのならこうも悔しがるはずなかったと。

 そのコルクスはミノリア島でモルテと話が終るとすぐにエクレシア大聖堂へ戻ると言って飛んで行ってしまった為に何も教えていない。

 なお、モルテ達はこれからも知らないことだが、あの後コルクスはミノリア島を住みかとしているカモメから縄張りに入ったと誤解されたことで帰路の途中で襲われてしまい、未だエクレシア大聖堂へ帰って来ていない。


 散々呟いてモルテは予定を変更する。

「早いがサンタリアへ行くか」

 ヘルミアには求めている情報はない。ならば情報がありそうな場所へ行くのがいいと決めたモルテの行動は早かった。

 荷物を持って部屋を出るとオウガストの元へ行く。

「オウガスト、休ませてもらった。礼を言う」

「もう行くのか?」

「ああ。向こうで調べたいことがあるからな」

 モルテが言う調べたいことが何なのか悟るオウガストはあえてそれについては聞かなかった。

「そうか。気をつけて」

「ふむ」

 見送りは不要と言うようにモルテは早足で鳩の宿を出てサンタリアに入れる入口へと向かった。


  * * *


 教皇区であるサンタリアへ入る入口の前には長蛇の列が出来ていた。

「相変わらずだな」

 その列に並ぶモルテはサンタリアを囲んでいる壁をじっくりと目にする。

「相変わらず強固な結界を張っているな」

 死神の目を纏わせなくとも肌身で感じるサンタリアを囲んでいる力に関心する。

「しかし、揺らいでいるな」

 さらに詳しく見ようと死神の力を目に纏わせて結界を視覚化すると結界を結界たらしめる壁が強い力を持っているにも関わらず見慣れた者でなければ分からない程度の微弱に揺れているのが分かる。

「前教皇は役目をまっとうしたのだな」

 これはすぐに張り直す必要がないと見たモルテはそのまま45分も列に並び、荷物に不審な物が入っていないことを入門審査官に見せてようやく教皇であるサンタリアに入った。


 サンタリアはスクトゥームにおいて唯一自治区として認められた区画である。

 そもそもスクトゥームが国としてまだ形が出来ていなかった頃、ロード教の開祖であるロードがサンタリアを聖地と宣言したことで時の国々はロードの影響力を利用する為にサンタリアを聖地として認めたのである。

 その後は時の流で様々な事が起きたこととスクトゥームが国として形を作り出したことで国でなかったサンタリアは自治区を認めさせることを条件に傘下に入る形でスクトゥーム国内に収まり現在に至る。

 また、サンタリアとスクトゥームが別々であったと言う名残で建築方法や様式も異なっている。

 スクトゥームでは煉瓦や漆喰を使った建物で特有の暖かみがあるのだが、サンタリアでは規則的に切られた石と漆喰の建物に所々で模様が施されている。

 本来スクトゥームでは石を加工出来る様な場などないのだが、サンタリアでは切り揃えられた石が使われている。

 その理由と原産地は不明である。ただし、エクレシア大聖堂の言い伝えでは、ロードを祝した天使が天国シエラから切り取った石で作られた宮殿を与えた。と何とも突拍子もないことが伝えられているのだが、真相は今も分かっていない。


 サンタリアの街を形成している石作りの広場をモルテは周りを見回しなら歩いている。

「さて、大聖堂の様子を確認するとしよう」

 そう呟いて本来の目的地であるがまずは様子を見る為だけに大聖堂へと赴くことにした。



 そして、

「話にならんな……」

 サンタリア内部にあるカフェでコーヒーを待ちながら力なく呟いた。

 大聖堂へ赴いたと言うのに様子は至って普通。いや、何かの準備、恐らくは教皇の死去を発表すると参拝者が冥福を祈る為に訪れると予想しての準備以外は普通であった。悪く言ってしまえば教皇が亡くなったと言うのに司祭達が喪服しているように見えないのである。

「まあ、参拝者の相手をするのだから当たり前か……」

 喪服と参拝者の相手をするのは別かと切り替える。

「それにしてもサンタリアでも知られていないとは……いや、サンタリアで知られているのなら外でも分かっているか」

 調べた場所はエクレシア大聖堂だけではない。

 広場や公共機関、飲食店に土産物店など話をそれとなく聞いたり噂を集めたのだが収穫はゼロ。完全に惨敗である。

「ここまで情報規制がされているとは思わなかったな」

 それだけに不審と思うモルテに声をかける者がいた。

「そう眉を寄せていると不審がられる」

 そう言って声をかけた男はモルテの許可を得ずに向かい合うように椅子に座った。

「久し振りだなモルテ」

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