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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
8章 新郎と人魚の子守唄
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死神『裏』話

 日が沈んで夜になった頃。クロエを除くミノリア島の死神達がもう一度集まっていた。

「本当に入口を見つけたのか?」

 その質問をしたのはフィリップだ。

「間違いないです」

「二人同時で展開をして見つけたのだ。間違いなかろう」

 モルテとソロンは同時に頷いた。

 それを聞いたマックスは腕を組むと考え込んだ。

「……入口は?」

「風車の近く。その下にあった」

「本当に島にあったんだな」

「ああ。だが、道を作らなければならない」

「だから俺とマックスの力が必要、か」

「そうだ」

 異界へ至る第二段階に必要なことを直感で悟ったフィリップはマックスと顔を見合わせて、マックスが言う。

「異界へは歌が響いた頃でもいいか?」

「そんなに早く!?」

 マックスの言葉にモルテが検討していた時間よりも早いことにソロンは驚いた。

「大丈夫か?私は明け方がいいだろうと考えていたのだが」

 モルテも同じだったようでマックスに尋ねると、マックスは申し訳なさそうな顔をした。

「本当はそうしたいのだがな……クロエを安心させてやりたいんだ」

 そう言うことかと納得するモルテとソロン。

 クロエの不安は生霊リッチの歌でエミリオスが異界へ誘われて行くこと。だったらクロエがエミリオスを押さえ込んでいる内に異界へ行き生霊を討伐した方がいい。

「確かにそれはそうです」

「だがマックス。お前は大丈夫か?」

「何がだモルテ?」

 唯一賛同出来ないでいるモルテがその理由となる心配を口にした。


「飲み過ぎていざと言う時に動けないということはないだろうな?」

「あ~……」

「それはない!」

 モルテの言葉に急に心配になったフィリップ。だが、それを遮りマックスはきっぱりとはね除けた。

 さすがに自信満々で即答に答えられた為にモルテとフィリップは疑いの眼差しをマックスに向けた。

「信用出来んな」

「さすがにこの状況で飲み過ぎるということはしないな」

「そう言っておきながら、9年前に現れた幽霊船ゴーストシップにマックスは酒の飲み過ぎで参加出来ず、私とフィリップの二人で刈る羽目になったのを忘れたのか?」

「あったか?」

「忘れた振りをするな!」

 当時のことを掘り返されたマックスはモルテから視線を反らした。


 9年前にミノリア島に突如前触れもなく現れた幽霊船。

 当時ミノリア島の死神はモルテ、マックス、フィリップの三人だけであり、三人で対処しなければならなかった。

 ちょうどその時にマックスは酒の飲み過ぎでダウンしており、酒が大分抜けた頃には既に肩が付いていた。

 後に幽霊船を対処したモルテとフィリップからそこまでの無茶のし過ぎを聞かされ、怒鳴された挙げ句に酒の量を減らせ、程々にしろと注意されたのだ。


 だが、その注意があまり聞いていないと見ると、モルテとフィリップは顔を見合わせた。

「手綱を握れるか?」

「やってみよう」

 歌が聞こえたらと言い出したのだ。それなら動けませんでは済まない。言ったからには責任を持ってもらわなくてはならない。

 モルテとフィリップはマックスに酒をあまり飲ませないと心に誓った。


 その様子を見て心配になってしまったソロンは話がまとまったと見ると、もう一つの心配事を口にした。

「あの……ずっと気になってたんですが、ここで堂々と話してよかったんですか?」

「問題ない。何せ……」

「ははははは!!」

 モルテが言おうとした時、何処からともなく笑い声が複数同時に聞こえた。

「あそこのばか騒ぎで掻き消されているからだ」

 仏頂面で指差したそこは、キャシミアンの食堂テラスで知り合いを集めて婚前パーティー真っ最中。そこでエミリオスの父親と兄達が思いっきり騒いでいる。当のエミリオスは恥ずかしさのあまり顔を赤くしている。


「まあ、そんな中で話しをする俺達もどうかと思うが?」

「別の場所で話す時間があるか?」

「ありません」

 婚前パーティーに参加しておきながらその最中に隅でこれからの生霊対応について話していた死神達。

 モルテが言った通り切羽詰まった状況で今日と言う日は時間など作れないのだ。出来てパーティーの最中に抜け出す程度なのだが、どうせ騒がしい親子の声と行動に掻き消されて注目されることはないからとある程度の念入りを持ってパーティー中に報告と予定を組み立てたのである。

「しかし、上手くいったものだな……」

「言われた時はここでと思ったが出来るものだな」

「あの親子がいるから出来たことだ。いなければ出来ん」

「終わってしまえば納得してしまう」

 結果的に誰にも気づかれなかったことに、この方法を提案したモルテのどや顔にフィリップががっくりと頭を下げた。マックスも上手く行くと思っていなかった為に苦笑いを浮かべている。


「それにしても……」

 そんな年長者を置いといてソロンは不機嫌になっているエミリオスを弄る四人をじと目で見た。

「此の親にして此の子ありって感じですね」

 エミリオス以外、あまりに父親と性格が似すぎていることにソロンは驚きを通り越して呆れていた。

「あれに触れたら負けだ」

 ソロンの感想にまたも苦笑いを浮かべたマックスは忠告をする。

「クロエには誰でもいい。隙を見たら話してくれ」

「そうだな。エミリオスと共に相手をしているんだ。いつ解放されるか分からんな」

 そうしてエミリオスの横に付いて困った表情を浮かべているクロエに死神達は頑張れ、辛抱と心の中で声をかける。

「それじゃ、パーティーの続きをするか」

「飲み過ぎるなよ」

「分かっている」

「……フィリップ!」

「任せろ!」

 そうして、パーティーへと戻る一人を除く死神達はこの間に誰かが行動不能に陥らないことを祈ったのである。

婚前パーティーの状況は明日です

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