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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
8章 新郎と人魚の子守唄
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エミリオスの想い

 エミリオスは周りの目など気にせずに岩肌が剥き出しになっている岩場の海岸へと行ってしまった。

 それを見ていたディオス、ファズマ、ミクは顔を見合わせた。

「どうする?」

「つうか、何でここにいんだ?」

 本当ならキャシミアンで総支配人の仕事をしているはずである。

「そもそも総支配人ってのは簡単に抜け出せるものなのか?」

「出来ないと思うよ」

「それじゃ何でいたのかな?」

「知らないよ!」

 知らないのに期待されても困るとディオスは眉間にシワを寄せて言った。

「見間違い?」

「いや、俺ら全員が総支配人と思ってんだから違うってことはねえと思うぞ」

「それじゃどうして?」

 そうして数秒考えた三人だが、結局分からず、

「追うか」

「うん」

「は~い」

 エミリオスが向かった岩場へと向かった。


 岩場の海岸へ降りてエミリオスが向かって行った場所は岩肌が削り取られた様になっていた。

「島の裏?いや、横か?こうなってんだな」

 一部が大きく削り取られた岩肌を見上げながら歩いてファズマが言う。

「ねえ、どうしてここだけ削れてるの?」

「多分だけど、波で削られたんじゃないかな?」

「どうして?」

「水って強い力を持っているってことは知ってる?」

「うん」

「水は流れる速さで重いものを動かすことが出来るんだ。その時に一緒に流れる石が削れるらしいからそれと同じと思う」

「そうなんだ」

 不思議に削られた岩肌の話をするディオスとミクをほっておいてファズマは遠くにいるエミリオスを見つけた。

「いたぞ」

 ファズマの声にディオスとミクが気がついてファズマが見ている先を見る。

「本当だ!」

「ねえ、何してるんだろう?」

 よく見るとエミリオスは海に近い岩場にしゃがみこんでいる。

「行って聞いてみよう」

 ディオスの言葉にそうと駆け出した。

「おーーい!」

 駆け出してすぐにミクが大声でエミリオスに叫んだ。

 聞こえるのかな?とディオスとファズマが思っていると、聞こえたようでエミリオスが気がついて立ち上がったのが見えた。


 岩に足を取られないように走って三人はエミリオスの元へと着いた。

「どうしたんですか?」

「エミリオスさんを見かけたのでそれで」

 何故と思うエミリオスにディオスがそう言うと、聞かされた本人は何とも言えない困った表情を浮かべた。

「ねえ、どうしてここにいたの?」

「報告、ですね」

「報告?誰に?」

「……母です」

 ミクの質問に答えたエミリオスであるが、最後の答えに三人は驚いた。

「あの、報告って……どうしてここで?」

 驚きのあまりエミリオス母親について聞きたい気持ちを堪えてどうにか後回しに質問をしたディオス。

「ここなら観光客も島の人もあまり訪れないからです」

「それはどういうことだ?」

「本当は夜に流したかったんですが、あいにく婚前パーティーをすることを決めていた為に今流しても問題ない場所がここだったんです」

「今日もパーティーなの?」

「ミク、それは後にしろ!」

 パーティーと言う言葉に目を輝かせるミクにファズマが待ったをかけた。

「流すって、何を流したんですか?」

「舟です」

「船……舟?」

 エミリオスの言葉から色々と考えたディオスが答えに行き着いた。

「もしかして御舟渡りですか?」

「昨日の話を覚えていたんですか!?」

「ああ~、ディオスは記憶力がいいからな」

 まさか昨日少しだけ話した御舟渡りを覚えていると思っていなかったエミリオスはディオスに驚いてしまった。

 だが、それは同時にエミリオスの母親について知ってしまった。

「エミリオスさんの母親は、亡くなっているんですね」

「……恐らくそうかと」

「恐らく?」

 歯切れが悪い言葉に三人は顔を合わせた。


 もはやエミリオスが言い出した為に遠慮することを忘れてディオスが代表して尋ねた。

「あの、それはどういうことですか?」

「母は11年前に突然いなくなったんです」

 いなくなったと聞かされて言葉を失う。

「いなくなった理由は誰も何も知らないんです。いなくなること事態は覚悟していましたが、予想していなかった消え方に驚かされましたが」

「覚悟?」

「母は私を産んでから体が弱くなったんです。そんな体で私達兄弟を育て店を切り盛りしていた。だから、いつか無理が出たことでいなくなること覚悟をしていました」

 そこまで聞いていないのに淡々と話すエミリオスに止めるタイミングを失った三人は聞き手に徹するしかなかった。

「母は尊敬出来ますが父は出来ません。母が体を壊したと言うのに毎日釣りばかり。それなのに母は文句一つ言わなかった。これだけは理解出来ませんし理由も聞けませんでした」

「それじゃ直接聞いたら……?」

「趣味と返されました」

 いつの間にか愚痴になっている気がして、それを止めるためにファズマとミクからどうにかしろという視線にディオスが恐る恐る尋ねて、呆気ない返答に意識誘導が即終了した。

「ですから、クロエを見た時は同じ思いをさせたくないと思ったんです」

「え!?クロエさんが!?」

「はい。クロエさんも両親と祖父をなくしています。8年前まではモルテさんがいましたがそれ以降は一人だったんです。正直、母と同じ様に見えて見ていられませんでした。」

 エミリオスの話が予想外の方向に動いていることに驚く三人。

「あの時は気になって声をかけただけなんですが、気がついたらクロエに引かれていました」

「それで結婚か」

「はい……あ!」

 ここでエミリオスは三人が何とも言えない表情をしているのに、自分が今まで熱を込めて話をしていたのだと気づかされた。

「……すみません」

「いえ、多分話の流れでこうなるかもってことは感じていたので……はい……」

 愚痴から尊敬、のろけと聞かされた三人としては非常に疲れるのだが、どれもいずれは質問をしたりして聞くのだからどのみち同じ結末だと責めることは違うと割り切る。

「本当にすみません」

「いえ、もういいです」

 もしかしたら、エミリオスはのめり込む性格なのではと思う三人である。



 ようやく立ち直ったエミリオスは三人に尋ねた。

「それで、皆さんはこれからどうするのですか?」

「そうだな。もう少し回って土産物買ってから宿に戻るな」

「そうですか。それではお昼はどこかで?」

「そうなるな」

「それでは美味しい所を紹介しましょう」

 エミリオスの思いがけない言葉に三人は驚いた。

「エミリオスさん、今何て!?」

「何を驚いているんですか?私もここの住人ですので食べ歩いたりもしています」

 まさかのことに何とも声をかけていいか分からない三人。

 そのままエミリオスからおすすめのレストランを紹介された。

「それでは夜にお会いしましょう」

 そう言ってエミリオスはキャシミアンへと戻ってしまった。

「何か、色々すごかったね」

「ああ」

 まさかエミリオスの母親が行方不明と思わなかったディオスとファズマはどこか遠い存在のように言った。

「あーー!!パーティーのこと聞くの忘れた!」

 その時、ミクの大声に何かと思ったが、その言葉に苦笑いを浮かべてしまった。



 その後、三人は紹介されたレストランで昼食をとり、島を歩いたのであった。

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