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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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葬儀屋のアルバイト

 ファズマは二階の倉庫から床の修理に必要な材料を集めては一階の仕事場にいるディオスにその材料を手渡ししていた。

 手渡し出来る理由は仕事場の上に倉庫があるからだ。倉庫には大小様々な、棺の材料となる木材も置かれており収蔵を楽にするために仕事場の天井の一部を開閉出来るようになっている。逆も同じで倉庫から仕事場に材料を下ろすこともできる。それを利用してファズマはディオスに手渡しをしているのだ。

 それを見て驚いたディオスだがあることを思い出してファズマに尋ねた。

「そういえば、俺が初めてここに訪れた時に郵便配達の人が自分から天井に飛び込んだって言ってたけど、あれってどうゆう意味なんだ?」

 仕事場の天井の穴が塞がっているのを見て思い出したように尋ねるディオス。

 ディオスが初めて葬儀屋フネーラに訪れた時、モルテのアッパーを食らい自ら仕事場の天井に飛び込んだマオクラフの行動とファズマの言葉の意味が分からなかったのだ。

「ああ、あれは言った通りだ。自分から天井に飛び込んだんだ」

「意味が分かりません」

「だろうな。俺も分からねえ」

「え!?」

「マオクラフ曰くお約束と思うからやるんだと」

「やる意味が分かりません」

「だよな。体張るには意味分かんねえよ」

「そもそも体を張ることじゃないです」

 マオクラフの謎の行動について意味が分からないと意見が一致するディオスとファズマ。

 そもそも普通の人ならそんなリアクション芸をすると大怪我をしたり首の骨を折って死んだりするのだがそんな様子を見せないマオクラフに感心以前に呆れが出てくる。

「これで最後だ」

 そんな会話をしながらも材料を下に下ろしていたファズマは最後の木材をディオスに渡した。

「それにしても、よくこんな大きな材料が二階の倉庫に入りますね」

「倉庫だからな。この辺は建物と建物が密接しているからどうしても倉庫のような建物を建てられないんだ。それに、何か必要になったらすぐに取り出せる」

 ディオスのどこか感心をする言葉にファズマは二階の倉庫に上がるためにかけたはしごを降りながら言う。

「それじゃ穴空いた周りの床板剥ぐから道具持て」

「ええっ!?板を打ち付けるんじゃなくて剥ぐ!?」

「はぁ!?段差が出来んだろ!転んだらどうすんだぁ!」

 どこか職人風な言動のファズマに驚くディオス。

 そんな二人をよそに店のドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ~」

 店内からミクの元気な声が聞こえた。

「わぁ~!ミクちゃん久しぶり!かわいい~」

 そして、店内から女性の声が聞こえた。声からしてけっこう若く聞こえる。

「ファズマいる?」

 続いて聞こえた若い男の店内から呼ぶ声にファズマは訳知り顔で店内に向かう。

「よう!ファズマ」

 店内の、カウンターの近くには若い三人の男女がいた。

「何だよザック、今日は仕事だろ?それにギベロックとリチアも」

 ファズマの後ろからそれを聞いたディオスはどうやら三人がファズマの知り合いとなのだと考えた。

「いや~、雇い先の手違いで仕事が休みになっちまってよ」

「それでフネーラに仕事がないかなと来たんだ」

 事情を説明するザック・ギフトンに補足説明をするギベロック・フロント。そして、ミクに抱きついているリチア・シャーベルト。

「ヒースとリアナの仕事を手伝えばいいだろ?」

「あっちよりもこっちの方が楽しいから」

「あのなぁ…」

 ザックの発言に頭を抱えるファズマ。

「あの、この人達は?」

 そんなファズマに何も知らないディオスは三人が何者なのか尋ねた。

「って、おいファズマ、こいつは!?」

「ザック、人に指差すな」

 ディオスの発言に今気づいたように指を指しながらファズマに尋ねるザックに注意を促すギベロック。

「こいつはディオス。店長に認められて今日から働いている」

「はぁぁぁぁ!?」

 ファズマの自己紹介に挨拶をしようとしたディオスだがそれを遮るようにザックが叫んだ。

「雇わないって言ってた店長がか!?何でこんなひょろくて頼りなさそう奴を雇ったんだ!?」

「ザック思ったことを口にしない」

「頼りなさそうなのは同意するけど」

 ザックの言葉に釘が胸に刺さるような感覚に襲われるディオス。そんなザックに再び注意を促すギベロックだが、リチアの言葉に再び釘が胸に深々と刺さる感覚に襲われる。

「それについては今度だ」

 そんな言葉を無視するファズマ。正直言って自分に向けて言われていないから痛くもかゆくもない。

「それでこっちが……おいディオス?」

「は、はい!」

「大丈夫か?」

 どこか上の空だったディオスに言葉をかけるファズマ。ディオスは首を縦に振って頷く。

「この口が悪いのがザック」

「ファズマも口悪いだろ!」

「言い方がきれいで落ち着かないがギベロック」

「まったく、ファズマもザックと同じく遠慮して敬うことを知らないな」

「そして、ミクに抱きついているのがリチアだ」

「リチアよ。よろしく」

 ファズマの自己紹介に突っ込むザックとギベロック。それを無視して自己紹介をするファズマの自己紹介らしい自己紹介はリシアくらいしかなかった。

「ファズマの紹介に上がりましたディオスです」

 そんな三人にディオスは自分の口から改めて自己紹介をした。

「こいつらは俺の仲間で時々ここに来てアルバイトをしてもらっている」

「仲間?アルバイト?日雇いじゃなく?」

 日雇いではなくアルバイトとはどうゆうことかと尋ねるディオス。それに仲間というのも気になる。

「日雇いなのは店長が人を雇いたくないからだ。アルバイト……バイトなら手伝いだけでいいから時々俺の仲間に仕事を頼むんだ」

「と言うことで仕事くれ!」

「それが人に頼む言い方か!!」

 説明が終わったと見ると早々にザックが要求をしてファズマに突っ込まれた。

「あ、給金は昼飯と弁当で」

 まったく反省をしないザックの言葉に頷くギベロックとリチアに頭を抱えるファズマ。

 その様子にディオスは三人の狙いが食事であると考え、解答を求めてミクの方を見るとミクが頷いたことで正解なのだと悟り溜め息をついた。


 結局、床の修理からモルテに頼まれていた新聞社への告知広告を頼んだことで予定よりも早く床が直り、ファズマが手の込んだ数種類の昼食と弁当を作ったことで半日が終わった。

ディオスの話し方が時々私語や敬語になるのは仕様です。

まだ目上の人(主に同世代)に私語で話せないのはボンボンの時の癖が抜けていないからです。

もう少ししたら抜けさせよ~(ファズマの為にも)

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