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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
8章 新郎と人魚の子守唄
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観光

 一夜明け翌日。ミノリア島を訪れて2日が経った。

 キャシミアンで朝食を取ったディオス、ファズマ、ミクはすぐさまミノリア島観光へと出ていた。


「すごく綺麗!」

 鋪装された通りからミクが歓声を上げた。

 湾曲になっている海岸に連なるように建物が綺麗に並んで建っている。さらに向こう側には船が停泊する港が突き出るように桟橋が出ているのだが、その周りを小船が囲んでいる。

「漁に出てたのかな?」

「かもしれねえな。行くか?」

 どのみち湾曲になっている海岸近くの通りを歩いて港の近くにある漁港へ行く予定だからとファズマの提案に一行は港へと足を運んだ。

「師匠も一緒だったらよかったのにね」

「店長は別に行く場所があるって言ってたからしかたないよ」

 キャシミアンを出る時にモルテだけ別行動することになったことにミクは残念と思った。


  * * *


 港に着くと船から本日の獲得物を漁港へ運んで行く様子が見られた。

「すごく賑やかだね」

「うん」

 大きな声と動き回る様子にディオスとミクが感心して見た。

「あの船大きいよ!」

 周りの船とは大きさが違う船に気がついたミクが気が指を指す。

 その船は漁をする船と言うよりは人を乗せる為の船に見える。

「大陸と行き来する船じゃねえか?」

「多分そうかもしれない」

 船の大きさから連絡船の様なものと見たディオスとファズマ。

 そのまま三人は漁港へと足を運んだ。

「色んな魚があるんだ」

「これ、昨日食ったイナフナか?」

「こんな魚なんだね」

 見覚えのある顔の形をした魚を見たディオス達は初めてイナフナの焼かれる前の全貌を知った。

「あ、これ何?」

 ミクが次に目を付けたのは表現出来ないもの。一言言えるのは周りにある魚とは姿形が異なっていることである。

「何だこれ?」

「青いな……」

「青い生き物っているのか?」

「脚がいっぱい……」

「これ皮?殻か?」

「この尾?みたいなのって魚の尾びれに似てない?」

「そうか?」

 不確定生物の容姿に困る内陸出身の言葉を近くで聞いていた漁港関係者が声をかけた。

「シュルイプを初めて見るか?」

「シュルイプ?」

 シュルイプと聞いて三人はどこかで聞いたと思い、同時に思い出した。

「シュルイプって確か昨日の料理に出てきた!」

「ああ!ミクがうめえって食ってた!」

「こんなよく分からない生き物なの!?」

 美味しさとは裏腹にとんでもない姿の生き物だったことに衝撃を受ける三人。

「そうか?だが、シュルイプを食べられるのは海に近い場所でしか食べられないから見る機会がなく驚くか」

「どういうことですか?」

「シュルイプは鮮度がすぐに落ちる。だから海の近くでしか食べられないんだ」

「そうなんですか」

 シュルイプが海の近くでしか食べられないことは分かったが、それでもこの姿はどうにかならないのかと思ってしまう。

「シュルイプを食べたければここの近くに出店があるから食べていくといい。コクーラやオウローンも置いてあるから」

「は、はい……」

 何かを勘違いした漁港関係者の話を聞いたディオスはお礼を言うとファズマとミクと共にその場を去った。

「……どうする?」

「とりあえずそこに行くか?」

「シュルイプまた食べるの?」

「何ショック受けてんだ?」

「だって、見たことない姿だもん」

「そりゃ俺らも思ってることだ」

 シュルイプの姿に未だに衝撃が抜けきらない三人はとりあえず言われた出店へと行く。

 行く理由は小腹が空いたからである。


 そして、出店が出している品を見て言葉を失った。

「姿焼き……」

 シュルイプが漁港で見たまま、殻付きのまま串に刺されて塩焼きされていたのである。他の不特定生物の体の一部と同じく。しかも、青色から赤に変わっているのに引いてしまう。

 それでもせっかく来たことと美味しそうな匂いに釣られてシュルイプ、コクーラ、オウローンの串焼きをそれぞれ買って、その美味しさに舌鼓し、その後に食べた三種類の串焼きの美味しさに不敏と思うのであった。


  * * *


 漁港から高台は向かう途中で三人は足を止めた。

「何だろうこれ?」

 目に入ったのは屋根が青い建物であった。周りの白亜の建物とは異なっている。

「何だろうこれ?」

「これ教会だよ」

「本当か?」

 ディオスが何かに気がついた為によく見るとロード教の教会と分かる印があった。

「本当だ」

「ここで挙式するんだろうね」

 明日結婚式を上げる場所はここなのだと思う三人。

「でも、どうして屋根青いんだろう?」

「他の建物は青くないのにな」

「分からないな」

 しばらく教会の屋根だけが青いことを考える三人であるが、結局出ない為に諦めて高台へと向かった。


 これは翌日に分かることなのだが、教会の屋根が青いのは空の色を表しているからである。晴れ渡る空が綺麗な海と同じく誇りである為に教会の屋根と一部の建物には青色が使われているのである。

 ちなみに、白亜の島と呼ばれる由縁となっている建物が白いことにも理由がある。

 昔にミノリア島では感染病が流行り、病気の流行阻止と清潔を意味する白が壁全体に塗られたのが始まりなのである。

 それが外観をよくすることもあるために今でも壁に白い塗料、もしくは漆喰が塗られるのである。



  * * *


 ようやく高台に着いた三人はミノリア島を一望した。

「すごーーい!」

「うん!」

「こんな形をしてんのか」

 眼下には白い建物が並び立ち、そこから視線を下ろすと海岸が湾曲になり、青い海が広がり、その先に大陸が微かに見える。

「絶景だなこれ」

「うん!白い建物がすっごく合ってる!」

「絵になるって言うのが分かるよ」

 今までこれ程合う風景を見たことないことに感動する三人。

「風車かあれ?」

「え?」

 ファズマの言葉に眼下から少し視線を反らすと6つの風車があった。

「本当に風車だ!」

「だが、何でここにあんだ?」

 ファズマの疑問にディオスは持っていたパンフレットを開いて、風車の説明文を見つけた。

「あった。あの風車は小麦を引くための風車らしいよ」

「そうなのか?」

「うん」

「行く?」

「行ってみるか!」

 そうして次の目的地を風車と決めて高台から駆け降りた。


  * * *


 風車は海風を受けて回っていた。

「大きいね!」

「こんだけでけえとかなり麦引けるんだろうな」

「あ、羽って言ったらいいのかな?こんな風になっているんだ」

 風車を見て三者三様である。

「中見れるかな?」

「どうだろう?見て回ろう」

 そう言って中に入れる風車がないかと探す三人だが、残念ながら入ることは出来なかった。

「外から見るだけみたいだね」

「ガッカリ……」

 言葉と体で落ち込み様を表現するミクにディオスとファズマは苦笑いをしてしまった。


「あれ?」

 ディオスがふと、視線を上げると見覚えのある人物が目に入った。

「どうした?」

「ディオ?」

「あれってエミリオスさん?」

 ディオスの言葉に見ている方を見たファズマとミクもすぐ近くの海岸にエミリオスがいるのを見つけた。

今更ながら出てきた魚類について。

グアルーギョ→サーモン

スマラシ→ボラ

イナフナ→鯛

シュルイプ→エビ

コクーラ→イカ

オウローン→タコ


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