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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
8章 新郎と人魚の子守唄
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騒がしい父親

「あははははははは!!そりゃいいな!!はははははっ!!」

 部屋で寝ていたディオス達がエントランスへ訪れると、一人の男がモルテ達の前で口を開けて大笑いしていた。

「だから、ここエントランスだから静かにして」

「おお、悪いな。はっははは!!」

 注意しても全く聞いていないとエミリオスは肩を落として溜め息をついた。

 エミリオスだけではない。クロエが声をかけようかどうか戸惑っており、モルテは呆れている様子を浮かべている。

 三人は完全に男と知り合いであり、困っていた。


「師匠?」

「どうした?」

「どうしたって言うよりもこの人は?」

 いつの間にかいたディオス達に内心驚いたモルテであるが、答える前に男が口を開いた。

「おお、お客か。エミリオス、粗相のないように接待するんだぞ」

「父さんよりは上手くやれる」

「父さん!?」

 エミリオスと男の話しにディオスが驚いて声を上げた。

 今は教えたくなかったのかモルテは溜め息をつくと渋々教えた。

「この男はエミリオスの父親、ビル・ケイオルンだ」

「なぁんだモルテの連れか。しかし、久々に会うってのにその顔は何だ?」

「お前がうるさいからだ」

「だろうな。俺は声がでかく、度胸も大きいからな!はははは!!」

 自覚しているのに全く自重しないビルにモルテがまた溜め息をついた。


「すみませんモルテさん」

「ビルがこう言う奴であることは分かっている。気にするな」

 反省が全くないビルに代わってエミリオスが頭を下げた。

「そう言ってるんだ!お前も少しは気を楽にしろ!」

「父さんが自重しないからじゃないか!!」

「ははは!歳いった男に自重は必要ないだろう!」

 バンバンと肩を叩くビルに我慢の限界とエミリオスが声を上げて怒鳴るも、豪快に笑うビルの前では意味がなかった。

「……大変ですねエミリオスさん」

「そういや上の三人の兄が自由奔放つってたか?」

「うん。言ってた」

 二人の子を無言で見ていたディオス達であったが、あることに気がついて顔を合わせた。

「エミリオスさんのお父さんみたいな人があと三人?」

「いるな」

「……うん」

 これは大変な騒ぎになるのではと心の中で思うのであった。


 怒鳴っていたはずなのに逆にしばかれた様に意気消沈するエミリオスをよそにビルが大声を上げる。

「そうそう、俺が釣った魚があるんだ。思う存分食ってくれ」

「それと同じくらい粘り強く自重してくれれば……」

「無理だな」

 突っ込み、それに対して一つの返答しかないと分かっていてもやらざるをえず、そしてまた肩を落とすエミリオスに色々と憐れに思ってしまうディオス達。

「お義父(とう)さん、釣ったのは?」

「グアルーギョが4匹、スマラシが7匹にイナフナが5匹だな」

「大漁じゃないですか」

「はは!明日はもっと釣るぞ!」

 どうだと笑うビルだが、クロエはモルテに提案をした。

「先生、イナフナどうですか?」

「ふむ、この時期のイナフナは油が乗っているからいいな」

「はい。すぐに焼きますね」

 ビルが釣ったイナフナを料理すると決めたクロエ。

 それにビルが思い出した様に尋ねた。

「クロエ、今日の飯は……」

「今日は先生達と食べます」

 クロエの思ってもいなかった言葉を聞いたビルは面白いと笑った。

「ははは!省かれたなエミリオス!」

「……うるさい!」

 省かれたと言うよりも気を使っただけなのに、何故かビルに言われると落ち込みとモルテに妬いてしまいぶっきらぼうに返した。

 そんなエミリオスをビルが背中を叩いた。

「ははは!妬いてるなエミリオス!愛した女を男に取られて!」

「ビル、私は女だが?」

「分かっている!モルテも冗談が通じないな!」

「お前の冗談は冗談と分かっていながらもその様な素振りが見えん」

 ビルに睨み付けるモルテであるが、それはモルテも言えないのではとディオスが凝視する。

「エミリオス!飲むか!」

「何で!?」

「そりゃ妬いてるお前の気を晴らすためだ」

「必要ない!そもそもまだ仕事があるんだから飲むなんて……」

「真面目だな。だが、たまには俺や兄みたいに気を緩めろ」

「緩めすぎたら父さん達みたいになるから絶対にしないね」

「ははは!だが、無理矢理飲ます!」

「痛い!離して!!」

 そうしてビルによって居住区へ連れていかれるエミリオスを見送ることとなったモルテ達。


「エミリオスさん……」

「行っちゃった……」

 最近もこれと似たようなことがあったが、それ以上の嵐を持つ人が巻き起こした一連は初対面の者が殆ど口出し出来ずに過ぎ去った。

 心配するディオスとミクにクロエが心配ないと語りかける。

「エミリオスはお義父(とう)さんの扱いを知っているから大丈夫よ」

「何か犬猫の扱いみたいに聞こえるのは気のせいですか?」

 犬猫と言うのは浅さか軽すぎるだろう。例えるなら躾がなっていない大型のペットと言ったところだろう。言うことを聞かないのに微妙な距離感で上手く共存する努力をしているのだからエミリオスの苦労は人一倍であろう。

 それを知ってなおエミリオスの告白を受け入れて苦労を共にすることを選んだクロエも相当のものである。


「相変わらず騒がしい奴だ」

「ここ最近は特にです。結婚式が近いからと思います」

「それでも限度はあるだろう。残りの三人が来たらどうなるか……」

 モルテもエミリオスの兄達が来たら騒ぎにしかならないと溜め息をつき、クロエも釣られて苦笑いをしてしまう。

「あ、イナフナすぐに焼きますので先に待っていてください」

「ああ」

 そう言ってクロエは調理場へと駆け出した。


「店長、いつの間にクロエと食べることになっていたんですか?」

 今まで口を開くことを避けていたファズマはクロエとの夕飯の件を尋ねた。

「昼食の後にな。話していたらそうなったのだ」

 経緯を聞いたら特に理由はないかと思い、それ以上聞くことを止めた。

「これから出掛けるのか?」

「いや、近くを散歩するだけです」

「そうか。夕飯はここで食べる。それまでに戻って来い」

「はい」

「分かりました」

「うん」

 モルテにこれからの予定を話した三人は周辺の散策も兼ねて外に出て、日が落ちた頃に戻って来たのだが、夕飯の席で驚くこととなる。

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