閑話 弟子組、反省会
本日は閑話連続投稿です。
12時と14時に投稿となります
ある日の夜。
トライアー葬儀店は珍しく明かりが灯されており、これまた珍しい客人達が居座っていた。
「全員揃ったことだし始めようか」
トライアー葬儀店住居区におけるリビングでエミリアが宣言した。
だが、出だしを挫くようで申し訳ないと思いながらもディオスは手を上げた。
「あの、すみません……」
「どうしたの?」
「どうしてトライアー葬儀店何ですか?」
「それはこの時間じゃオスローさんが遠出出来ないからだよ」
「そこは申し訳なく思っております」
エミリアの遠慮のない言葉にオスローが頭を下げた。
ディオスとオスローを除けばここに集まっている全員が死神の弟子なのだ。
普通の人では少し遠いなと思う距離でもすぐに着いてしまうことが出来る。
だから死神の弟子達は遠出する為に使う車の運転が出来ず、死神の弟子でないオスローがいるトライアー葬儀店を集合場所としたのだ。
さらに補足をするなら、現在エノテカーナに死神達が集まっているからだ。
集まっている理由が何か分かっており、それならこっちもどこかに集まろうと企画されたのが反省会である。
「それと、どうして俺も?」
「それはあの時に関わっていたから。反省会に参加るのは当たり前」
加えて、オスローとはまた違う意味で死神の弟子でない自分がどうしてここにいなければならないのか尋ね、その理由に薄々と感じていただけにガックリと肩を落とす。
そんなディオスを無視して死神の弟子達が各々持ってきたお菓子をつまみ始める。
「皆様、お飲み物です。どうぞ」
「ありがとうございますオスローさん」
飲み物を受け取ったアリアーナはすぐさまカップに入っている飲み物を飲んだ。
「お代わりをご希望でしたらもうしてください」
「それはありがたいんですが、オスローさんも反省会に参加なんですからあまり気を使わないでください」
「お気遣いありがとうございますフランコさん」
一応聞いてくれたかなと思いながらもフランコは集まっている全員に言った。
「今回の生霊騒動だけど、どう思った?」
「あたし何もしてないよー」
「ミクちゃんは別のことやってたんだからしかたないよ」
唯一騒動に参加していないミクが不満の思いを呟いて、アリアーナが別のことをしていたのなら参加は無理だと言う。
「私達って騒動が起きるとやれること限られてるよね」
「うん。生霊の攻撃に巻き込まれない様に避難誘導したり監視したりだね」
「そう。それでね、本当にそれしかできなかったのかなって思うんだ」
「と言うと?」
「予想外、イレギュラーって言うのかな?その対応がお粗末じゃないかなって?」
「ああ、なるほど」
エミリアの言葉に全員の視線がディオスへ向けられた。
「あの?」
「正直言うとね、避難とか警戒って弟子じゃなくても出来るんだよね」
「そうですね。私達とは違い死神の目を持っていないディオスさんでも出来ました」
「あの時は話聞いたから引き連れただけでそこんとこ全く考えてねかったな……」
「本当に、私達ってあの騒動で何か父さん達の為にしたのかなって思うよ」
そして、ディオス以外全員が溜め息をついた。
「しかも、ディオス君に大怪我負わせているしね」
「二重の幻影者の不意討ちだからな……」
「いや、二重の幻影者じゃなくて生霊かもしれないよ!生霊に襲われて死んでたかもしれないんだから!」
「それ言われると頭がいたいな……」
「私達ってディオス君に一番負担かけていたんじゃないかな?」
「いえ、そんな訳は……ええぇ!?」
どうやら生霊騒動において死神の弟子達が一番悔いているのはディオスの負傷であったようで、本人の目の前で自分達のやりきれなさに嘆き続ける。
「本当にごめんなさい。私達がもっと注意していたらディオス君が辛い目に遭うことなかった」
「そんな!?あれは仕方ないことじゃないですか。避難誘導は店長の指示だし、二重の幻影者がいた場所は俺とファズマがいた避難誘導していた場所でけっこう深い場所だったんです。あそこまで来て確かめるって言うのは無理があります」
「例えそうでも私達の不注意でディオス君は後遺症で動けなくなってたかもしれないの。それを考えると生霊が起こした騒動による避難誘導は確かに私達死神の弟子が最前線でするのがいい。だけど、そうじゃない人が加わったらどうなるか。私達はその人達を守らないといけないの。その認識を改めて突きつけられたのよ」
ロレッタの真剣な表情にディオスはそれ以上の言葉を言えなくなった。
「私達は少し甘えてたのかもしれないわね」
「ロレッタ?」
「生霊が起こした騒動から人を守るのが死神の役目と思ってたわ。だけど、それは私達も同じなのよ。それを全部リーヴィオ先生達に押し付けてた」
「あ~、それは一利あるかも……」
「生霊を倒すのが一番だからすっかり頼ってたかも……」
「リーヴィオ先生達に負担かけすぎてたかもしれないな」
「いつの間にか制限ってものを作ってたかもな」
「師匠、大変だったのかな?」
ロレッタの指摘に死神の弟子全員ががそうだと気づいて後悔を口にする。
「私達、認識を変えないといけないかもしれない」
「そうだね。それに、私達にしか出来ないことをしないと」
アリアーナとアンナの言葉に全員がそうだと頷く。
これから見ても今回の騒動はかなり堪えているようである。
「あたしもやれることないか頑張って皆を助けるよ!」
「ミクちゃんはまだダメ!」
「どうして?」
「ミクちゃんが私達と同じ戦線にたったらモルテさんに怒鳴られる!」
ミクの言葉にそれは止めてほしいと慌てて止めに入ったエミリアに確かにそうなると全員が苦笑いをした。
それから死神の弟子達は何が出来るかと話し合いを始めた。
そんな中で死神の弟子ではないディオスが同じく死神の弟子でないオスローに小声で尋ねた。
「あの、俺達って居る意味あったんですか?」
「それは分かりません」
「えぇ……」
「ですが、皆さんが改めてディオスさんを見て己の不甲斐なさ、実力不足を実感した上で変わろうとしている。そのきっかけを与えたと思っています」
「俺ここじゃ何もしてませんし言ってませんよ?」
「それでも、居るだけで意味はありました」
「意味、ですか……」
強くも弱くもない存在意義にディオスは急に居心地が悪くなるのを感じて、その気晴らしの為にお菓子を口に突っ込んだ。
それから二時間、死神の集まりが終わり戻って来たガイウスが見たのは、お菓子をつまみながら雑談をする弟子組であった。
少しふざけた話にするはずが大真面目になってしまい急遽サブタイ変更と言う裏話……




