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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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男の処遇

 派手な音を立てて倒れた警官にファズマは駆け寄ると手を差し伸べた。

「大丈夫ですか?」

 営業スタイルで。

「な、何で穴が……」

「ああ、重いものを落とした時に空いてしまったんです。直そうとした時に訪れたので言いそびれたんですが、まさか足を入れて転ぶとは思ってませんでした」

 申し訳ありませんと言うファズマにディオスは内心で間違っているけれどどことなく合っている事に否定も出来ず突っ込めないでいた。

「そ、そうですか……」

 これで納得したのか警官は立ち上がった。

 よくよく見るとその警官はディオスが初めて葬儀屋フネーラに訪れた時に見た新人警官であった。そしてもう一人は先輩警官。

「まったく、慌てるなと言っているだろ」

「……すみません」

 先輩警官に注意をされて謝る新人警官。

(やっぱりここはおかしい……)

 そして、そんな事を考える新人警官。

「それで、警察が何の用だ?」

 そんな会話聞を気にせずモルテはアドルフに尋ねた。

「実はな、そいつを探していたんだ」

 モルテの言葉にアドルフは新人警官が駆け寄ろうとした酒くさい男を指差した。

「この人がどうかしたんですか?」

「食い逃げだ」

 ディオスの質問に答えたアドルフの言葉は意外なものだった。

「く、食い逃げ!?」

「あ~、だから酒の匂いがしてたのか」

「今時いるものなんですね食い逃げ」

「悪いことなのにどうしてやったんだろう?」

「金銭的理由だろう。一昔 前なら常にあった」

 などと何も知らなかった五人が各々呟く。

「それで、こいつを探していたらここにたどり着いたと?」

「そうだ。鳥の被り物を被った郵便配達がそいつを背負って葬儀屋に入って言ったと聞いたからな」

 モルテの質問に頷いて答えるアドルフ。話終えるとモルテはマオクラフを睨み付けた。

「いや、だって、知らなかったし、通りの真ん中に置いておくわけにもいかなかったし、いつ葬儀屋の車に引かれるか……」

「引くわけないだろ!」

「他の車もあるだろ」

「警察とか?」

「おい!」

 マオクラフの言い訳にファズマが普段の言葉で突っ込むが、車関連から微妙に話が脱線する。

「それに、そのおっさん死んでるし!」

 そして、死んでいると言う言葉に全員が沈黙した。

「し、死んでいるんですか!?」

 沈黙を破ったのはディオスの声だった。

「そうそう。多分飲みすぎだろうな。飲みすぎてそのままポクリ」

 身ぶり手振りで話すマオクラフにモルテとファズマとアドルフが鋭い目付きで睨んでいた。

「警部どうしますか?」

 そんな様子など知らずに先輩警官がアドルフにどの様に対処するのかと尋ねる。

「ねえねえ、水飲ませたら目覚めるかな?」

 そんな時、またピントの違うことを言うミクに全員が何とも言えない空気に包まれた。

「いや、ミクちゃん、聞いてなかった?この人死んでいるって?」

 そんな空気にディオスがミクに哀れみを感じながら突っ込んだ。ミクは頭を横にした。どうやら理解していないようだ。

「とりあえず、今日一日預かってくれるか?」

「はぁ?」

 アドルフの言葉にモルテの不機嫌な声が響いた。

「営業妨害でもする気か?」

「営業妨害ではない。警察からの頼みだ。この男を今日一日預かってくれ」

「断る!んなもん教会にでも持って行け」

「いや、こちらとて手続きというものがある。それが終らん限り運べない」

「なら署に持って行け。これは警察の持ち込みだろう」

「葬儀屋が署に取りに来る必要がなくなると思ったんだが?それに、預かるのも葬儀屋の仕事と思うが?」

「仕事を盾にするか……」

「モルテも警察嫌いの癖に必要になると頼るだろ!」

「それとこれとは全く別物だ!」

 男をどうするかで討論をするモルテとアドルフ。ディオスの目から見てみればどうして二人ともこんなにも激しく討論するのか分からなかった。

「なら、預かってくれなら手続きが終わり次第取りに来る。葬儀屋は立ち合いのみ。これでいいか?」

「それでは普段と変わらんだろう」

「それから暇が出来たらコーヒーを……」

「よし手を打とう!」

 まさかの決着に目を丸くするディオスと二名の警官。

 こうして、報酬のコーヒーのつられたモルテにより男は一日だけ葬儀屋フネーラに置かれることとなった。

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