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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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反撃

 青白い爆発が起こり周りが火の海となっている中でありながら中心地にぽっかりと全く燃えていない空間が存在していた。

「助かった……」

「さすがは<領域の魔術師>です。感謝いたします」

「ああ」

 普通の死神が展開する領域では間違いなく耐えきれずに崩壊する爆発力だが、レナードの強大過ぎる領域によりやり過ごすことが出来た。その証拠にレナードの展開している領域は全く壊れる様子を今も見せずに維持している。

「我らに救いをもたらす者に(ドゥルフィティリア)祝福を、でもこれ程の力を振るえるとは……脱帽です」

「脱帽じゃないだろそこは!」

「そうですね、力不足だっと言えましょう。我らを害するものを消失(アキュラ)させよでも全てを消滅させることが出来ない不肖の司祭です」

「責めているんじゃないんだが……」

 力不足によりこのような惨状になってしまったことに落ち込んでしまうクロスビーに責める形になってしまったリーヴィオがたじたじになる。

「クロスビーさん、リーヴィオの言葉など気になさることありません。あなたのお陰で私達は生霊リッチの強すぎる力に怯えることなく戦えています。あなたの力は決して無力ではありません」

「まさか司祭が励まされる時が来るとは……」

「協力者であり、かけがえのない仲間です」

 何とかフォローを入れてクロスビーを立ち直させたレオナルド。本当はリーヴィオをからかいたいところであるがそんな状況でないことを知っている為にやめて、周りの燃え広がる炎を見渡した。


「鎮火は……後ですね」

「駆けつけた消防隊の仕事が減るだろうがそれしかないだろうな」

「そもそも、領域展開している時点で火災になっていることに外は気づいてないだろ。それに、こんな大火災を消すとなると一日以上かかる上に河向こう以外の倉庫が全て燃えるだろ」

 周りが燃え移るのは分かるがその原因となった生霊を討伐しないも落ち着いて鎮火することが出来ないと後に回す方針を立てる。

「だが、少なくともここは消しておかないと生霊の力の源となる」

 それでも少しは生霊の優位となるもの一つは削らなければならないとレナードの言葉に全員が同意する。

 それをするとアドルフがその場で鎌を強く握ると体の重心を中心に、鎌は横へと大きく後方に下げる。

 気持ちと呼吸を調え、思いっきり振り切る。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 アドルフが鎌を鎌から振るった場所はレナードが張っていた領域の内側からであるが斬撃は外側から放たれた。

 本来ならあり得ないと思いたくなる本人と一定の距離を開けて出現した斬撃は周りの炎を打ち消し、ついでにと生霊へと襲いかかる。

 だが、生霊は瞬時に自身の周りに炎の渦を生み出して斬撃にぶつけさせた。それにより炎の渦が消滅したが斬撃の軌道を僅かに剃らすことに成功してやり過ごすことが出来た。

「次発来る前にやれ!」

 生霊を切ることは出来なかったが周りに燃えている火全てを鎮火したのを確認したアドルフの合図にレナードとクロスビーが最大限の力と切り札の一つを切る。

「領域変質!」

「天眷・我らを祝福する者をドゥルフィティリアーナ・害するもの達にラダマ・アキュラリオ・我らが裁きをくだん(ディスティリオ)!」

 生霊の周りに今までとは違う領域が展開され、力が凝縮される感覚を生霊は抱いた。



 領域変質とはレナードが考え実現された領域の亜種である。

 領域は生霊と対抗する最などに周りから隔離する為にただ囲むというものではない。内部に存在するものの有無を決め、時間の進退をするものかと設定を決めることが出来るのである。その設定に更なる計画を加えることで応用が使えるようになり、遠くの者と話したり見たり出来るのである。

 例外として死神は領域の制作者ということもあり領域内における縛りが存在しない。

 領域変質は設定でも計画でもない新たな条件を加えることで展開される領域である。

 領域内部に本来そこには存在しないはずの現象やないものを死神の力で書き加え領域の特性を利用して無理矢理実現させることである。

 例えば水気がない砂漠に広大な湖が突如として現れてそれが永遠とあるようなもの。効率は悪くも自然の力を持つ生霊が苦手としている状況を作り出すことが出来るために状況打破として重宝されている。


 天眷術「我らを祝福する者をドゥルフィティリアーナ・害するもの達にラダマ・アキュラリオ・我らが裁きをくだん(ディスティリオ)」は生霊の力を封じ込めるものである。

 強力な力を持つ存在には力を削減したりする術が効かなかったり破られたりすることがある。そうすると天眷者は切り札として封印する天眷術を唱える。

 永遠に封印する天眷術と一時的に封印する天眷術があるのだが今回唱えたのは一時的な天眷術である。

 永遠に封印する天眷術は常に継続が必要とするために封印が完全でないといけない。加えて封印の力が弱ければ一気に破られる為に体力と気力の消耗が激しい。

 一時的に封印する天眷術は体力と気力が持つ限りは力を封印することができる。封印する上限を越えてしまった分はどうしようもないが、封印している分は意識が保たれる間は表に出ることがない。その為にこちらを使う天眷者が多い。



 領域内に絶え間なく降り続ける雨と力の封印に生霊は一気に力を失うも、炎の体に雨粒が当たることなく蒸発して炎が消えることがない。

「切り札切ってまだこれだけ力があるのか……」

「封印しきれずすみません」

「だが、殺れないわけじゃねえ」

 一気に力を落とした今がチャンスだとアドルフとリーヴィオは雨が振る領域内へと突っ込み、一気に畳み掛けに入った。


  ◆


 レナードと同じく領域変質によって濃霧が漂う中でもう一体の生霊を対処しているモルテ達は非常にスムーズに行っていた。

「そこ!」

 つららは展開している領域変質の一部を変形させて分裂生霊の一体を領域で貫いて消滅させる。

 そもそも、領域変質は領域であるために自由に設定が出来るのである。それに領域も死神の力によるものであるから領域によって生霊を討伐しても肉体と魂の繋がりを絶つことが出来る。

「マオクラフ、そちらはどうだ?」

『こっちも今一体片付けた。後12体』

「最初の時よりも少なくなってもまだいるね」

「続けて頼む」

 ガイウスと組んで分裂生霊を対処しているマオクラフと確認をしあったモルテとつらら。

 生霊を出させない為に領域を展開し続けているマオクラフとつららがいるために四人別れてという訳にもいかず、効率は下がるも二人一組で分裂生霊の討伐にかかっている。

 場所や数の確認などはマオクラフに一任している。

「片付けてしまうぞ」

「ええ」

 もう残りは少ないのだとモルテとつららは駆け出した。

 こちらはもう少しで終わりそうである。


  ◆


 雨が降りしきる領域内でアドルフは生霊から距離を取るために離れた。

 しつこく攻撃を続けた為にこちらを睨み付けている生霊にアドルフは思惑通りと内心で微笑む。

 後は誰かが隙を見て攻撃をしやすい状況を作り出すだけ。

 気を引き締めようも鎌を持ち直そうとした時、背後から甲高い音が響いた。


 何が起きたのか分からないアドルフは慌てて振り向くと、領域変質から少し離れた場所でまだ炎上もしていない無事な倉庫から爆発が起きていた。

 力を封じられている生霊が目の前にいる死神を無視してその背後を爆発する理由がない。さらには爆発が起きた場所はまで振るえるほど力がないことを認識している。


 それでは何故と思った時、アドルフの目に信じられないものが映った。

「何であんな所にいるんだ!?」

 そこにはいるはずのないディオスとファズマの姿があったのである。

天眷術のルビ振りが大変です……

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