一方的
突然大きな音を上げて響き渡る爆発音がマオクラフとつららの耳に届いた。
「えっ!?」
「何!?」
驚いて爆発音がした方を見る二人。そこはもう一体の生霊を対処しているレナード達がいる辺りの場所であり、青白い炎から赤へと変わり周りに燃え広がっている。
「何、これ……?」
その絶望的な光景につららの声が震えてしまう。
レナードの話を聞いたマオクラフから向こうの生霊の方が強いことを教えられている。けれども、ここまで力があると思っていなかった。精々が担当している生霊よりも少し上だろうと思っていただけに衝撃が大きい。
「大丈夫」
何を思ってかマオクラフは力強く語った。
「あれくらいの爆発なら父さん一人で防げる」
「本当にすごいのね、<領域の魔術師>は」
「化物だからな。それに、さっさと片付けろって言われているからやってしまおう!」
「はいはい」
安心させようとしているは分かるが内心では心配しているのだと話しから何となく察したつららは苦笑いをする。そして、全く異次元の空間を見てまた苦笑いをする。
「こっちは別の意味ですごいよね……」
「化物と規格外だからな……」
眼下ではつららが展開している領域内で赤い生霊相手にモルテとガイウスが徹底的に爆発やら炎やら体の一部を鎌で切り裂いていた。加えて斬撃や雄叫びが飛び交っている。
慈悲などない一方的でしか見えないが未だに仕留められずにいる。
理由は生霊が予想以上に抵抗をしているからである。
初めは殺気を立てて襲っていた生霊。だが、モルテとガイウスがそれが攻撃か?と言うように火球や火炎放射に突進とあらゆるものを切るは叩き潰すはで致命傷を与えられず。ならばと分身を作り攻撃をしても呆気なく潰されたことに生霊としては珍しく戦意喪失をすることとなる。
敵わないからと逃げ出すも、周りにはつららが展開している領域が張られている。これくらいなら先程壊した領域よりも脆いから問題ないのだが、それを許すかとモルテとガイウスが追いかける。
生霊としてはとにかく殺されてたまるかと高速で領域内を逃げ回る。領域内は倉庫が並んでいるも、通りや裏道には人間では通れない隙間がある為にそこへと逃げては死神をやり過ごすも見つかるととにかく火球を放ち、それをモルテがぶった切りガイウスが追撃とゴルフクラブを振るうという状況が何度も続いている。
逃げ回る生霊の小細工になかなか一撃を与えられない為に状況が長続きしているのである。
モルテとガイウスの強さは分かるが向こうの雲行きが怪しいとつららが聞こえるように叫んだ。
「モルテ!向こう怪しいから……」
「分かっている。それと、レナード達は無事だ」
「レナードだからなぁ~」
爆発が起こった最にモルテとガイウスは死神の力を片目に纏わせて爆発が起こった場所を見ていた。それにより何が起こったのか、そこにいる死神達がどうなったかを知っている。
「レナードほどとは言わないが最低でもマオクラフほどの領域の使い手がいなければ厳しいだろうな」
「だがよぉ~、今の爆発はよぉマオクラフ二人分……」
「三人だ」
「そんじゃ三人だ。三人分いねぇ~と防げないよなぁ?」
「ああ。レナードならあれくらいは簡単だろうが普通の死神では厳しい。レナードがいたから助かったとも言えるな」
生存にはレナードがいたからと言うモルテとガイウス。その話を離れた場所で聞いていたマオクラフは比較を自分にするなと複雑な気持ちとまだまだ実力か足りていないと落ち込むこのである。
「そぉれよりもよぉ~、白い怪火って聞いたことねぇ~よなぁ~?」
「そうか、ガイウスは知らぬのか」
「何がだぁ?」
「白い怪火だが、過去にも何度か現れている。ただ出現があまりないために口頭でしか伝えらていない。火を操る生霊など、そうそう現れるものではないからな」
生霊や不死者は死に方や場所に左右されやすい。だから怪火は苛烈と伝えられても色までは伝えられない。殆どが炎を思わせる赤やオレンジを思い浮かべる為にその様な生霊なのだと勝手に思うのである。
「ま、青でないだけましだな。青なら街だけではなく国が燃えるからな」
「なぁ~んでそんなこと知ってんだ?」
「見聞きしたからに決まっているだろう」
さも当然と言うモルテにガイウスは更に問いただすのを諦めた。
この間、二人は逃げ回る生霊を追いかけながら話していたのである。
逃げても逃げても追いかけてくる死者に生霊は最終手段を実行した。
体を再び火球にし、そこから小さく沢山の狐火を四方に飛ばす。
「お~い……」
「分裂して逃げるか!」
小さな狐火が襲うでもなく逃げていくのに二人は生霊が分裂したのだと悟る。
「つらら!マオクラフ!手伝え!」
「はいよ!」
「おう!」
モルテの指示にようやく介入出来ると喜ぶ二人。
ちゃんと役割は果たしていたが傍観するような立場になってしまっていたことに心苦しかったのだ。加えて、役割を放棄して輪に入っても超火力の二人の足手まといになり、生霊とやりあうのが一苦労という、用は経験不足による実力不足で役に立たない可能性が高かったのである。
それが状況が変わり、自分達が介入してもおかしくない状況に、生霊が分裂をしたことで攻撃力が大幅に下がっている為に怪我など下手なことをしない限りは負うことはない。
「ツララ、やってもいいよ」
「はいよ」
マオクラフの指示につららは意気揚々とモルテの指示により張っていた布石を使った。
「領域、変質!」




