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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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酒くさい男

 何とか床に頭を突っ込んでいた人間の男を床から引き抜いたディオスとファズマは顔をしかめた。

「……酒くさ」

 その男、年齢からしておっさんと言っていい中年男性は目を閉じているのだが、これでもかというくらいに酒の匂いがしていた。

「どうゆう事か説明しろ」

 男が床に横たわるのを見てモルテは先に床から引き抜かれていたマオクラフに鋭い目付きで尋ねた。

「拾った」

「えっ!?」

 まさかの理由に驚くディオスをよそにモルテの質問は続いた。

「どこでだ?」

「すぐそこで」

「具体的に述べろ」

「本当にすぐそこ。ウーヴァ通りで拾った」

「ほとんど目と鼻の先ではないか」

 正体不明の男が葬儀屋フネーラがある通りと聞いて頭を抱えたモルテ。だが問題はそこではない。

「何故拾った?」

「倒れてたから」

「だから拾って持ってきたと?」

「そう」

 モルテの質問にうなずきながら親指を立てて答えるマオクラフ。表情は鳥の被り物のせいで分からないが声を聞く限りどことなく声が高い。そこから思うに笑顔で答えていると。

 しかし、その思考は一瞬にして打ち切られた。

「面倒な仕事を持ってくるな!!」

 モルテのアッパーがマオクラフの顎(正確には被り物)を直撃クリティカルヒット。マオクラフの体が僅かに浮き、後ろに倒れた。

「あ、あ、あ、あ……」

「またやった……」

 その光景に驚いているディオスをよそにファズマが呆れた様子で呟いた。モルテの言葉の意味が分かっているだけに正直言ってややこしいことこの上ないこと、マオクラフが自分から行動リアクション)をしたこと二重の意味を込めて。

 そんな二人の様子とは別にミクがカウンターに置いてあったペンで男を突っついていた。

「こんな得たいの知れない奴はアドルに持っていけ」

「店長、一応この人は人間です。得たいの知れない何かではありません」

「そこは警察と言わないんだな」

 モルテの発言にファズマが突っ込み、起き上がったマオクラフが言った瞬間、マオクラフの頭上にモルテの踵が落とされた。

「暴力、反対……」

「黙れ」

 マオクラフの悲痛な言葉を一掃するモルテ。

「それで、誰かも得たいの知れないこれを持ってきてお前はどうしてほしかったんだ?」

 もはや人間扱いをしていない台詞にディオスの表情は青くなっておりそれを横目から気づいているファズマをよそにマオクラフが答えた。

「預かってほしくて」

「そうか」

 その言葉に不敵な笑みを浮かべるモルテ。そして、

「それこそアドルに押し付けろ!」

 そして、短い時間の中でもはやお約束と言うべき鉄槌がマオクラフに降り下ろされた。

「ちょっと待って!モルテ、沸点低くないか!?」

「誰のせいと思っている!」

 怒濤に降り下ろされる鉄槌にマオクラフが非難の声を上げる。

 相当自己紹介を邪魔されたのを根に持っているのだがそうとは知らないマオクラフ以外はなるべく傍観しないようにしている。来て間もないディオスさえも。

「……店長っていつもあんな感じなんですか?」

「いつもってわけじゃないが今日は特にだな……」

 モルテの様子に会話するディオスとファズマ。それとは別にミクは、

「ねえ、水飲ませたら覚めるかな?」

 と周りの様子を気にせず全くピントの違うことを言う。その言葉に全員がミクを見て固まる。

 ちょうどその時、ドアベルが鳴り扉が開いた。

「モルテいるか?おう、マオ坊もいるのか。ちょうどいい」

 入って来たのはアドルフだった。後ろに二名の部下を連れて。

「あ、おはようございます!」

「警察が何の用だ?」

 アドルフに朝の挨拶をするマオクラフだが、モルテは不機嫌を張りつけた表情を向けていた。

「おいおい、何でそんな顔しているんだ?何もしてないだろ」

「なら、何故来た?」

 アドルフの言葉を気にせず尋ねるモルテ。

「実はな……」

「あーー!!」

 アドルフが説明しようとしたその時、後ろに控えていた警官一名が声を上げた。

「警部いました!」

 警官が指差す先にはミクの横に横たわっている酒くさい男。

 警官が急いで駆け寄った。その時、バキィンという音がしたかと思うと警官が倒れ込みバーンと音が響いた。どうやらマオクラフと酒くさい男が頭を突っ込んだ際に出来た穴に足が入り込みそのまま転倒したのだ。

 突然の転倒にディオスは痛そうだと思いながら顔を叛け、アドルフと残りの警官一名は溜め息をついていた。

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