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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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二体の生霊

「これはまた……」

 目の前の光景にレオナルドは顔を歪めた。

「ここまで酷いとは思ってもいませんでしたね」

 クロスビーも同意だとその場で祈りを捧げる。

 目の前には火の海。そして爆発に巻き込まれて息絶えた犠牲者がいた。

「ここで働いていた者達か?」

「みたいだな。加えて家を持たない者達だ」

 犠牲者は誰なのか。そんな予想をアドルフとリーヴィオがしながら死神達は手に鎌を握った。

「レナード、生霊リッチは?」

「この場所から動いていない」

「そうか」

 レナードの言葉を聞くと四人の死神はその場で鎌を振るい炎を消し、ここで命を終わらせた者の魂の繋がりを刈りとり新な生霊や不死者アンデッドが生まれるのを防ぐ。

 だが、


「どう思う?」

「明らかにおかしいだろう」

 炎が消え、死者と魂の繋がりも消えた。それなのにここにいるはずの生霊がいないことはおかしい。

 あまりの不自然に全員が警戒心を抱く。

「逃げろ!」

 レナードの叫びに全員が四方へ逃げ出す。

 すると、先程までいた場所から青い炎が舞い上がり、火の粉が鋭く飛ぶ。

 それを死神達は領域を張ったり鎌を振るって防いだ。死神でないクロスビーはレナードが張ってくれた領域により何事もない。

「助かった!」

 リーヴィオが間一髪だったと呟くと燃え上がっている炎に警戒を示した。

 だが、アドルフだけは違った。

「……おかしい」

「アドルフ、何がおかいしと?」

「俺が見たのは赤い奴だった。それに、尻尾が見えねえな」

 その言葉に全員が驚いて一瞬考え込んでしまった。

 その瞬間を付け入られ生霊が己れを中心として青い炎の爆発を起こした。

「人を殺したから力を蓄えて治したんじゃないか?」

「それによって力も付けたか?洒落にならねえぞ!」

「それによって分身に多くの力を?……いや、待ってください!そうするとおかしいことになります!」

 爆発を避けて明らかにおかしいとレオナルドが叫んだ。

「分身にしては強すぎる。まるで本物のようではないか!」

 今までの考えではあり得ない。けれどもおかしい思いを証明するならこれしかないと言う。その言葉は全員が思っていたことを代弁していた。

「本物のようと言いますか、本物ですあれは」

「そうだな」

「おい!それじゃ向こうの生霊は偽物か!?」

 あっさりとこっちが本物かもしれないと言うレナードとクロスビーにリーヴィオが突っ込むように問うた。


 レナードは本物の生霊と考えている方を対処しているマオクラフに連絡をした。

「マオクラフ聞こえるか?」

『父さん?』

「そっちの生霊は本物か?」

『本物って何?本物だけど』

「特徴は?」

『え?赤い炎の狐だけどそれが?』

 レナードの質問に事情を捉えられないマオクラフの声。だが、質問に返ってきた答えにレナードは顔を歪めた。

「聞けマオクラフ。生霊は二体いる」

『はあぁぁ!?』

 予想していなかった現状を言うレナードにマオクラフの驚く声が響き、聞いていたアドルフ達は目の前の生霊に警戒を示した。

「こちらにも生霊がいる。これは予想だが二体の生霊が同じ姿、同じ怪火として倉庫街に現れた。だが、違うのは力の違い。お前が対処している生霊よりもこちらの方が強い。高温で燃えているんだからな」

 火は温度によって色が違う。赤から白、青へと変わっていく。

 生霊が纏っている火がマオクラフが対処している生霊よりも強いと見た理由である。


『大丈夫なのそれ!?こっちから一人……』

「問題ない。お前はさっさとそっちの生霊を片付けろ」

 まだまだ経験不足だなと思いながらレナードはマオクラフとの話を終えた。

 聞き耳を立てて話を聞いていたレオナルドは悪戯な笑みを浮かべた。

「それで、問題ないとは?」

「この人選を選んだのは俺だ。それに、クロスビーもいるからな」

「恐縮です」

 分かっているだろうとレナードが自信満々に言った言葉にクロスビーが一礼した。


 レナードが選んだ人選はバランスが取られている。

 青白い生霊にはレナードが領域で守りアドルフとリーヴィオが攻める。そこにレオナルドが両方を支えると言うバランスが取れるようになっている。加えてこちらにはクロスビーがいる。生霊対応であるがそのカードを切るのは近いであろう。

 赤い生霊を対応しているモルテとガイウスは超高火力による攻めを持つ。その二人を守るようにマオクラフとつららを加えて対処させることにしたのだ。速攻型に近い形である。

 元々はモルテとガイウスが生霊を討つ手筈であり、その間にレナード達が分身の移動を抑えるつもりであったのだが、生霊が二体おり、知ってからは逆であったかと思ったがそれはないと振り切った。

 生霊が二体いるとは知らないで決めた配置であるが、これはこれでいい人選と配置であったと思う。


 生霊が力を溜め始めたのを見たアドルフ達はいつでも行動に移せる準備に入った。

「クロスビー、頼む!」

「期待に応えるとしましょう」

 レナードの合図にクロスビーは自身が持つ力を解放した。

今更ながら、こんなに長くするつもりはなかったったぞーー!!

でも、まだ続くんだよね……

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