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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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二人の元流

 赤い火の玉は走る。

 走って走って向かう場所は人間が多い場所。

 先程までいた場所も良かったが死神に邪魔をされる為に諦めた。現に最近になって纏っていた炎の衣から体の一部が露になっている。これは許しがたい屈辱である。

 それに、抵抗をしたところで殺られるようでは存在意義がない。それならば人間を殺して力を蓄える。そう決めた。

 だが、初めて最大限の力を振るって分かった。


 死神は弱い。


 邪魔であった領域を壊して分かったことなのだが脆い。

 何故始めから最大限に振るわなかったのだろうか。振るっていたなら死神が邪魔であると思わずさっさと倒して人間を殺せたはず。こんな遠いところまで走らなくてもよかった。

 そう考えて、考えること自体が無意味であると止めた。死神が現れるのなら殺せばいいのだけのこと。

 今の力でも十分に太刀打ち出きる。殺して力を蓄えることも出来る。止められるものはいない。

 自信から再び体に炎を纏わせて目の前の領域へと突っ走る。


 突っ込む!そう思った時、目前に赤い髪の死神が現れて鎌を一振りした。

 たった一振りだけなのに赤い火の玉が纏っていた炎が消えただけてなく、炎の衣も剥がされて狐の姿が露になる。

「そ~おい!」

 次いで上空に黒い影が叫ぶと同時に何かが落ちてきたと思った瞬間、避ける暇もなく巨大な何かに押し潰された。



「嘘だろおい……」

 一連の様子を見ていたマオクラフが信じられないと呟く。

「モルテが規格外っての知ってたけど、ガイウスさんもまた……」

 モルテが生霊リッチの姿を鎌一振りで露にさせ、追い討ちをかけるようにガイウスがゴルフクラブで近くの倉庫に収納されていたと思われる角材を上空から思いっきり叩き落とした。

 生霊が反撃出来ないほどスムーズに行われたのだ。

「そういや、モルテとガイウスは流だったな」

「それだったら強いよね」

 同時に今の役割で合っていたと思う。


 何故マオクラフとつららが傍観するような立ち位置にいるかと言うと、ここへ訪れる途中で役割を話していたのだ。

 モルテとガイウスが生霊に攻撃を仕掛け、マオクラフとつららが領域を張り生霊を追い出させないようにすると。

 二人だけで大丈夫なのかと思っていたがどうやら杞憂で終わってしまった。いや、心配する必要など元からなかったのである。

 何よりもモルテとガイウスは元々は流であったのだ。

 流には強い者が多い。簡単に殺られるはずがないのである。


「それよりも殺った?」

「……いや」

 マオクラフが生霊の気配を察知した瞬間、角材が炎を上げて激しく燃えた。

「あ~、やぁ~っぱり木じゃそんなに効かねえかぁ」

 自身が行ったことがあまり意味がなかったと残念がるガイウス。

「だが、追撃は防いだのだ」

 モルテが意味はあったと言った瞬間、生霊は火の玉程ではないが体に炎を纏わせるとモルテに突進してきた。

 モルテは後に飛ぶも着地と同時に生霊が追いかけてくる。

 火の生霊は苛烈。マオクラフとつららが慌てて見守るもモルテが慌てている様子はない。


 平常心で鎌を着地と同時に一振り。そして後退。瞬間、生霊が急に追いかけるのをやめて後に飛んだちょうどその時、目に見えて地面から斬撃が飛んだ。

 何があったかはすぐに理解出来た。モルテがいた場所に深い亀裂が一本入っていたのだ。

 いつ、どこで?と思い、モルテが着地と同時に鎌を振るった時と見るが、それにしてはタイミングがおかしい。

「モルテ、今何したの?」

「タイミングをずらして入れたのだが避けられたな」

 つららの質問に僅かばかり悔しがるモルテ。

「そんなこと出来るの?」

「やれたのだから出来るだろう」

「答えになってない気がするんだけど……そもそも出来ないと思うよ」

「モルテも父さんと同じ化物だからな……」

 タイミングをずらしての攻撃など出来るかと呆れと恐れを抱くマオクラフとつらら。そもそも、斬ることに特化しているモルテが普通でないと思う。


 斬撃を避けて着地した生霊は纏っていた炎を更に放出された。

 かなりの熱を感じさせる火力であるが上空から気の抜けた、けれども力強い気が籠った声が響いた。

「そ~~おれぇいぃぃ!」

 ガイウスは落下しながら生霊にゴルフクラブを叩き付けた。

 だが、生霊は素早く空中へ避けるとガイウスに狙いを定めて一気に炎を解き放った。

「ガイウス!!」

 炎がガイウスに向けられたのを目にしたマオクラフが叫んだ。

 だが、

「チェストォォォォ!!」

 炎の中でガイウスは生霊に向けてゴルフクラブを振るい上空へと飛ばした。

「うっそぉぉぉ!?」

 炎の中でゴルフクラブを振るうとはどうなんだと、あまりの出来事にマオクラフが叫んだ。

「マオクラフ、領域を強固に!つららは準備を!」

「うぇっ!?」

「分かったよ」

 モルテは驚いている二人に指示を出すと領域内の上空へと瞬間移動した。

 出た場所はかなりの高く、見下ろすとガイウスに弾き上げられ今もなお飛ばされている生霊が見えた。

 モルテは構わず鎌で生霊を切り裂いた。

 だが、それに気づいた生霊は体を捻らせて何とか避けようとする。

 それにより生霊は尻尾を斬られ悲鳴を上げた。

 だが、これで終わらないとモルテはまた鎌を振るった。

 それに対抗するように生霊も炎を盾にして斬撃を防ぐ。

 何度も何度も上空で交わされその度に爆発が起きる。


 何とか距離を開けられた生霊は素早く地面に着地した。

 その瞬間、周りを囲んでいる領域とはまた違う領域に囲まれた。

「さぁて~……」

 驚く生霊に追い討ちをかけるようにガイウスが、遅れてモルテが地面に着地すると不敵な笑みを浮かべた。

「ウォーミングアップはぁここまでだなぁ~。遊んでぇもらうからなぁ~」

 今までの攻撃は序章でしかなく力の一片も見せていなかったのだ。

 そして、生霊は先程までの認識を一部改めた。

 ―――この死神達は強い。

 と。

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