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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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囚われの場所

 その頃、モルテはディオスと共にマミューと会った場所へと訪れていた。

「なるほど、ここか」

 そこは新住宅街では珍しく建設途中で放棄された場所であり、ディオスの学友カリーナの遺体があった場所である。

「まさかここに訪れていたとはな」

 少しだけ冷たい声が込められた言葉にディオスは寒気と少しの恐怖を感じた。

 そう、トライアー葬儀店から葬儀屋フネーラへの帰り道に寄り道をしたとバレたからである。怒られることが予想出来、それが声からそうであると断言されたからだ。

 そんなことを思うディオスに気づいてモルテが呆れた様子で促した。

「何も怒ってはいない。羽目を外し過ぎない寄り道で怒るはずなかろう」

 その予想外に語られた不意討ちにディオスは一瞬だけ驚き、徐々に緊張感を解いていった。


 モルテは腕を組んで少し考えると建物の中へ入って行った。

「ディオスも来い」

 立ち尽くしているディオスにも一言かけ、慌てて駆け寄って来るのを待った。

「私から離れるな」

 そう言って改めて入って行くモルテをディオスが複雑な表情を浮かべて歩いた。


 フーゴを交えた夕食後、モルテとつららが出掛けると言ことを聞かされた。

 フーゴがその場にいての話であったから詳しいことは聞かされなかったが、すぐに生霊リッチの対応の為に出掛けるのだと理解した。疑問としては何故つららもと思うも自分には関係ないことだと深く考えなかった。

 だが、自分の部屋へと行こうとした時に誰もいない所でモルテによって悲鳴を上げることも抵抗も出来ないまま街灯が消えて暗くなった外へと連れ出されてしまった。しかも、つららはファズマが運転する車で何処かへ行ってしまったことを聞かされてモルテとつららが別行動なのだと知らされたのである。

 何故と暗闇の中で聞くと、

「マミューと会った場所を知りたいからだ」

 と言われ、それなら何故店で聞かなかったのかと問うと、フーゴが聞いて勝手に行ってしまっては困るからと言われてしまい納得してしまうが、それで連れ出されてしまうのまでは納得していない。


「あの、どうして俺まだここに?」

「ふむ、戻ってフーゴに教えたりでもしたら困るからだ」

「そんなこと……言いますね」

 否定しようとしたが、考えて素直に言ってしまうだろうと認めてしまう。

 これがもし死神が関係していることと悟ったなら言わないように努力をするだろうが、知らなければ教えてしまう。

 故に、今回はどちらになるかと言うと後者になってしまうのである。隠すのがうまいモルテにより死神関連となっていることに気づかなかったのである。

 そうなるとフーゴに教えられないことであるとディオスはガックリと肩を落とした。

「だから連れて来たのだ」

 どうやら悟ったのだろうと話を終わらせてモルテは用心深く建物を見渡した。

「やはりか」

「店長?」

「ここ最近出入りしている者がいる」

 その言葉にディオスは先程までの不満を消して緊張感を張り巡らせた。


 そのままモルテとディオスは建物の二階部分へ上がった。

 モルテは死神の目で暗闇でも見えているがディオスはようやく暗闇に目が慣れてもよく見えていない。

 そんな中でモルテはしゃがみこんだ。

「店長?」

「そういえば見えなかったのだな」

 ディオスが不思議そうな表情で見るのを死神の目で見たモルテはそうだと気が付くと立ち上がりディオスの肩に手を当てて暗闇でも見やすくした。

「見てみろ」

 視界が明るくなったことに驚くディオスを促してモルテは先程までの見ていた場所に指を指した。

 その指している先を目にしたディオスはそれを見て信じられないという様子を浮かべた。

「……血?」

「そうだ」

 ディオスが呟いた言葉にモルテは肯定した。

 床には血の色を残した血溜まりの跡が残っていた。

「風も光も届くことがないから残ったのだろう」

 何故血溜まりが残っているのかと予想をディオスに教えるように呟くモルテ。

 二階部分は周りが殆ど壁で閉じられているために風も光も届かなければ雨が入ることもない。しかも、誰も近づくことがないために何かが残るというのであれば一定の条件が整っているのである。

「どうして?」

「ここで自殺を図った者がいるのだ」

 何故血溜まりがあるのかと尋ねるディオスにモルテはあっさりと何事もなく教えた。

「じ、自殺ってどうして……?」

 ディオスの驚く言葉を無視してモルテは更に上へと上がる階段を上った。

「分からんか?ここはどういう場所だ?」

「……建設途中で放棄されて、カリーナが死んだ場所です」

「そうだ。そんな場所で自殺をしたい者など限られているだろう」

 まさかと驚くディオス。だが、同時に内心ではもしかしてと思い、それが当たってほしくないと願う。


 そうして、途中の階層に止まることなく屋上へと出た。

 屋上には既に先客、目的であった人物がいた。

 その人物がいることにディオスは戸惑い口を開いた所でモルテが先に声を出した。

「ご無沙汰している。今宵は聞きたいことがあり訪れた。意識はまだあるようだな。マミュー・リダン」

 モルテは正面に立っている虚ろな目をしたマミューへと語りかけた。

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