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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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振り分け

 真夜中の倉庫街へとモルテは屋根を蹴って向かっていた。

 その間に様々なことを考えていた。伝えなければならないことが沢山ある。それが今回の生霊リッチ騒動を終結出来るものと思っているから。


 そうしていると倉庫街ドゥーエ区に入り、よく知る人影が見えた。

「早いな」

「既に着いている者から早いと言われた所で嬉しくはないな」

 アドルフの言葉にモルテは毒舌で返した。

「そぉ~りじゃあ、モルテが来たことだからぁ~やるかぁ?」

「待ったーー!!」

 ガイウスが見回りを始めようと言った時、背後から聞き覚えがある声が響いた。本来なら呼んでおらず居る筈がない人物の声である。

「マオ坊?」

「どおしぃて居るんだ~?」

「父さんに頼まれたんだよ」

 マオクラフの登場に驚くアドルフとガイウスだがその理由に納得する。

 レナードにも今回の事は電話で伝えている。その対策強化の為にマオクラフも見回りに加わるのだと瞬時に理解したのだ。

「それで、行くようにって言われただけでどうするか聞いてないんだが?」

「ドゥーエを中心としてウーノ、トレ、クアットロを見回る」

「うえっ!?そんなに!?それを三人でやるつもりだったの?」

「マオ坊が来たからウーノを加えたんだ。ドゥーエを中心としているなら近くに接している三つの区画でも起こる可能性がある。現にクアットロで起きているのだからな」

「うえぇ~……」

 一人一つの区画を持つ厳しい対策にマオクラフのぼやきが漏れる。

「本命はドゥーエだろう?」

「ああ。一人はドゥーエを中心に。残りは三つの区画と掛け持ちだ」

「ハードだぁ……」

 モルテが確かめるように尋ねたアドルフの返答にマオクラフのぼやきは止まらない。


 だが、モルテの提案がさらにハードを上げる。

「アドル、一つ試したいことがある」

「何だ?」

「試すという言い方は悪いな。確めると言った方がいい。トレとクアットロは領域を展開して見回って欲しいのだ」

「うわぁ……」

 モルテの提案にマオクラフが顔をしかめた。

 モルテが口にした提案はこれまでアドルフ達が行ってきた見回りがどの様に行われていたのか考えてのことであり、一つの可能性を確認する為のものである。

「ここを見回っていた時は展開などしていなかっただろう?」

「そうだが」

 それが普通だからとアドルフは肯定した。


 死神が生霊を探す際に領域を展開しないのは生霊の警戒があるからである。

 緊急事態により領域を展開したり、領域を無視する生霊の過剰な行いなどは除かれるが多くの生霊は死神が展開する領域を警戒する傾向がある。

 その理由は、死神と遭遇すれば存在を消されるからと本能で知っているからである。

 だから生霊は死神と遭遇すれば消されまいと大多数は襲いかかり、少数は逃げる。逃げ道を持つ生霊は別であるが。


 モルテは領域の存在を犠牲覚悟で使おうとしたのだ。

「私の予想が正しいならば、展開で生霊はドゥーエとウーノで事を起こすと考えている」

「すればぁ~ときたかぁ」

「領域を展開すれば生霊でもどこにいるか分かる、か」

「だが、随分と煮えきらない言葉だな」

 モルテの狙いに気がついた三人。だが、断言していないことに気がついたアドルフの言葉にモルテは厳しい表情を浮かべた。

「もう一つ予想がある。それの確認だ」

「予想?」

 モルテが気にしている予想が何かと尋ねるマオクラフにモルテは腕を組んで冷たく突き放した。

「お前も死神だ。それくらい考えろ」

 まだまだ新人死神には難しいだろうがこれも経験だと答えを言わない。

「……なるほど、あれか」

「あぁ~れだったら難しいがな~んとかなるかねぇ~」

「問題は何故そこに気がつかなかったかだ」

 一方でアドルフとガイウスはモルテの予想に行き着いていた。だが、今まで考えていなかっただけにアドルフがぼやく。

「ならば、モルテとマオ坊がトレとクアットロを頼む」

「ふむ」

「えぇ!?俺も!?」

 アドルフの振り分けに頷くモルテと対照にマオクラフは尻込みした。

「レナード仕込みの展開を期待しているんだ」

「期待しないでほしいんだけど!」

「ならば訓練だ。トレを頼もう」

「って、訓練って言葉使って広い所押し付けるなよモルテ!」

「こ~れくらい死神が展開して当然だからなぁ~。しぃかりやれよぉ~」

 どうにかして領域展開区画から外れようとするマオクラフであったが、モルテが逃げ道に立ちはだかり、ガイウスが完全に逃げ道を塞いだ。

「俺とガイウスはドゥーエとウーノだ」

「そぉ~れじゃ、俺はウーノに行こうかぁ?」

「なら俺はドゥーエだ。それじゃ頼むぞ」

「俺の拒否権なし~?」

「くどい!」

 担当区を決めてさっさとその場を離れたらアドルフとガイウスに悲鳴の如く叫ぶマオクラフをモルテが一喝するとトレ区に行けと威圧感をかける。

「分かりました!分かったから頑張ります!」

 モルテの威圧感に負けてやけくそで叫ぶマオクラフ。

 キツイことであるがこれも将来の為と決めて持ち場のトレ区へと向かう。

「さて、どの様に動くか」

 それを見届けたモルテもクアットロ区へと向かった。

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