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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
208/854

ディオスとつらら

明けましておめでとうございます。

今年も「死神の葬儀屋」をお願いします。


今日は元日ってことで2話連続で投稿です。

つぎは14時になります。

「今、何て言いました?」

 店番の最中でディオスは警戒して身構えた。

「だから、ディオス君と二人っきりで話したいって思っていたのね」

 一緒に店番をしているつららの満面笑みの告白にディオスは更に警戒を強めた。

 つららとは会ってすぐに酷いめに遭っている。と言うか口説かれている。

 この手の経験が全くないディオスはどの様にやり過ごせばいいのか分からないからとにかく警戒をするしかなかった。

「そんなに緊張しなくていいね」

「緊張していません」

 ディオスの様子に全く気づいていないつららに警戒ですと訂正は言わない。言ったらモルテとやり合ったように喚くかもしれない。そうなったら対応も何も出来ずに謝るしかない気がするから。

「ふふふっ、ディオス君が考えてる様なものじゃないね。ディオス君に聞きたいことがあるの」

「聞きたいことですか?」

 そう言ってどんなことかと聞こうとして、警戒が弛んでしまっているのに気がついて張り直した。どんな質問をされるかという警戒である。

「ディオス君はどうやってここを知ったの?」

「職業案内場で教えてもらったんです」

「そうなの?」

 出だしから予想外であったことに驚くつらら。

 死神が営んでいる葬儀業は進んで仕事を紹介する場所に募集を行わない。死神のことを教えないという理由からであるから自分で探す、店先に募集をかけるとかして雇い入れる。殆どは自力であるから紹介される方はないと言ってもいい。


 だからつららはディオスがここで働く理由をもっと知りたくなった。

「ディオス君はどうしてここで働いてるの?」

「それは、店長に恩があるからです」

「モルテに?何かあったの?」

「何って……言わないといけないですか?」

「言いたくなかったら言わなくていいね」

 どうしてその様なことを尋ねてくるのかと疑問を抱くが、ただの好奇心ではと考えてディオスは少しだけ警戒を解いた。

「でも、本当にそれだけ?」

「と、言いますと?」

 何かを探るようなつららの言葉にディオスは首を傾げた。

「ディオス君は死神が嫌いなのよね?モルテが死神なのにどうして仕事を続けてるのかね?」

「それはまた仕事を探すのが嫌だからです」

「へ?何それ?」

 質問をしたつららがディオスの予想外の答えに目を丸くした。

「色々と苦労をしてここに就いたんです。また探すのが嫌なんです」

「そうなの?」

 モルテへの恩はどこへ?と聞きたくなるような苦労が見えてしまう様な言葉につららは頭が痛くなる気がしたが、それもすぐに次の言葉でかき消えた。

「でも、死神は嫌いです」

「どうして?」

「人を殺すのが嫌いだからです」

 どうやら死神の弟子ではないが死神の事情をある程度知っているようだと理解をする。

「でも、守るためにって思わないの?」

「それでも殺しは嫌いです」

「そう」

 どうやら葬儀屋フネーラにいるのは何らかの事情があってのことであり、ディオスが心配過ぎるほどの優しさの持ち主であると見る。


 つららの質問が落ち着いたと見たディオスはつららに逆に尋ねた。

「俺もツララさんに聞きたいことがあるんですが」

「何?」

「ツララさんはどこで店長と知り合ったんですか?」

 芳藍出身のつららと流のモルテの出合い。恐らくモルテが芳藍へ訪れてつららと知り合ったのであろうというのがディオスの考えである。

「あたしのじいさまの葬式の時ね。じいさまとモルテが知り合いだったのね」

「え?」

「モルテは昔に芳藍を旅してたみたいでその時にじいさまと知り合ったらしいの。それまでは話しだけ聞かされていて、初めて会ったのが丁度4年前ね」

 予想外の繋がりと出合いに今度はディオスが目を丸くした。


「それじゃあ次はあたしね」

「え?いつの間に交代制に?」

 ディオスの質問に区切りが着いたと見たつららが再度ディオスに尋ねた。

「ディオス君は死神の弟子になりたいと思う?」

「え!?」

「ここに居るってことは死神の目を持つってことね。そうなったらどうするの?」

「なるつもりはありません。持ったとしても生霊リッチの対応を知ればいいと聞いてます」

「そう……」

 あっさりと質問をしたことに答えられたつららは複雑な気持ちを抱いたがすぐに先程まで浮かべていた笑みが消えて真剣な眼差しをディオスに向けた。

「でもねディオス君、それは自分を守る為だけなのは理解してる?もしかしたらその力が誰かを守るのに必要になると思ったことはない?」

「ツララさん、それはどういうことですか?」

 生霊をやり過ごすのは身を守る為であることは理解している。だが、誰かを守るとは考えたことはなかった。

「言葉通りね。ディオス君、もし……」

 ツララが真剣に話すその時、突然電話が鳴った。


 鳴り出した電話に驚いて体が震えたがディオスはすぐに受話器を取った。

「こんにちは。葬儀屋フネーラです」

「ディオスさんですか?」

「オスローさん?どうしたんですか?」

 電話の相手はオスローであった。

「そちらに葬具はございませんか?」

「葬具のですか?」

「はい。どうやら社長が頼み忘れた品があったようでして、届くで少し分けて欲しいのです」

「分かりました準備もあるので少し時間がかかりますがすぐに行きます」

「ありがとうございます。欲しい葬具は……」

 そうしてディオスは、受話器越しからオスローが欲する葬具をメモすると受話器を置いたてじゅんびをしようとすると、すでにつららが持って行く予定であった葬具を準備していた。

「あ……!」

「持って行くのは覚えているから大丈夫よ。早く準備してきてね」

「は、はい……」

 つららに急かされてディオスは身支度を急いで整えるとすでにトライアー葬儀店に持って行く準備を終えた葬具一式を持った。

「ツララさん、すみませんがお願いします」

「いってらっしゃいな」

 つららに見送られてディオスはトライアー葬儀店へと向かった。

 その背中をつららは真剣な表情で見送っていた。

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