異常に異常
連絡を受けたモルテはすぐさま警察署へ向かった。
「葬儀屋フネーラの者だが」
「葬儀屋フネーラですね。お待ちしておりました。少々お待ちください」
受付にいる者に言うとやはり待たされた。だが、今はそんな不機嫌な気持ちではない。
連絡はアドルフからであった。
遺体を引き取って欲しい連絡が来る時は警官の役割であるが、アドルフの場合は違う。アドルフも死神である。そうなると生霊関連であり、それについて情報や手助けを求める為に自ら連絡をする。
だが、今回の連絡は少しだけおかしかった。電話越してあるから具体的には分からないがどこか動揺しておる様にも思えた。
それがもしかしたら今朝の新聞と関係があるのではというのがモルテの考えである。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
前回とは違う担当者が現れてモルテを前回と同じ来客室へと案内した。
「失礼します」
担当者は扉をノックして先に居る者へ知らせると開けた。
「モルテですか」
来客室にはレオナルドがいた。
裏の駐車場にレオナルドが使う車があった為に居ることを知っていたモルテはあまり驚いた様子を見せない。むしろ、レオナルドが居るということは富裕街出身者が犠牲にたったということを言っている。
「アドルはいないのか」
「アドルフはまだ訪れていません」
「連絡を寄越しておきながらいないとはな」
「仕方がないと思います。今朝の新聞に載せられていたことへの対処と報告が終わっていないのならまだ訪れずないかと」
アドルフが来客室にいないことに毒づきながら隣に座るモルテにレオナルドがやれやれと肩を落とし
「ところで、モルテは今回の生霊をどの様に思いますか?」
「火を扱う割には随分と優しいと思うな」
「優しい、ですか」
「ああ。レオナルドもわかっていると思うが、火は苛烈だ。力を持っていようがなかろうが性質は変わらん。だが、三つ起きた事件はあまりにも穏便過ぎる」
「確かに。そうなると四つ目は何かに触ったとなりますかやはり」
「そうなるだろう」
火を扱う生霊の性質は気が荒く苛烈である。どんな些細なことをおこしてもそれが火を扱う生霊の気に触れたのなら問答無用で瞬く間に命を刈られてしまう。そんな生霊が何故手を抜くような行為を行っていたのか分からない。
そんな話をしていると扉が叩かれた。
「失礼します」
「おぉ~う、いるなぁ~」
「ガイウスか」
来客室へと入って来たガイウスにモルテが扉が閉まると同時に鋭い眼光で睨み付けた。
「おぉ~い、どうしたんだぁ~?」
「どうしたではない。新聞を見たがどういうことか説明をしてもらおう」
「待てぇ待てぇモルテ!俺だってぇ何があったか分かねえんだぁ~」
「は?」
どういうことだとモルテとレオナルドは顔を見合わせると再びガイウスを見た。
「俺とアドルフが最後に見たのはぁ三人だったんだぁ」
「何だと!?」
「それでは残りの二人は誰だと言うのだ?」
「そぉれがアドルフが呼んだ理由じゃないかと俺はぁ睨んでいるんだな~」
「しっかりと残りの二人についても把握をしておけ!」
あまりにも雑すぎるガイウスの対応に先程の驚きはどこへやら、怒りを込めてモルテが叫んだ。
「外まで声が聞こえているぞモルテ」
丁度その時、やつれた様な表情をしたアドルフが来客室へと入って来た。
「アドルフ、どういうことか説明をお願いします」
「言われなくともそのつもりだ」
アドルフの注意など無視してレオナルドも厳しい表情をアドルフに向けた。
アドルフとガイウスが向こうの席に座ると、最初に切り出したのは呼び出しをしたアドルフであった。
「今回は俺とガイウスの思い込みによるミスだ。まさか、1日に二度も行うと思っていなかった」
「それは新聞を見て感じていた。今回の生霊にしてみればあまりにも積極的でないからな」
これにはモルテとレオナルドも同意であった。アドルフとガイウスが訪れるまでに生霊の行動がおかしいと思っていたのだ。だから追求はない。
「だが、今回犠牲になった五人の内の二人は俺とガイウスが確認した三人の後に殺されたんだ」
「離れて少ししたらぁ~って感じかねぇ」
「本格的に動き出したと言うべきなのか、それとも潜んでいた……いや、それなら私達を狙うはず……」
もう少しその場にいればとタイミングの悪さで犠牲者が増えたことを悔やむ二人の気持ちを感じてレオナルドは色々と考えるがどれも違うと思ってしまう。
「ところで、その二人の身元は分かったのか?」
モルテは犠牲になった二人について尋ねた。新聞では身元が特定出来ない程に焼かれていると載せられていた。
あまり期待をせずに尋ねたのだが、アドルフとガイウスの表情が優れなくなったのが目に見えて変わった。
「……死んだのは見回りの警官だ」
「は?」
「何だと!?」
アドルフの発言に驚くモルテとレオナルド。
驚くのは当然である。今まで犠牲になっていたのは倉庫街て働く者達であった。
最初の犠牲者か出てからの調査で犠牲者達に関係があったことが分かっている。違う倉庫を管理する商会が部下や下請けを担う者、もしくは違うと商会の者達と接触をしているところで焼かれたのだ。
だから、ここに来て警察である。理由が分からないと言うよりも、殺せれば誰でもいいという生霊の本能に従ったと見る方がいい。
「殺すところを見られた……わけではないのだな」
「俺達が来た直後に三人は死んでいた。その後に見回りの警察が来たんだ。それはない」
「なら、何故同じ場所で……?留まっていたなら私達の目で気づく筈なのですが?」
「人ぉの気配もなかったからなぁ」
分からないことが増えてしまったと頭を抱える死神達。
そもそも、アドルフとガイウスは見回りの警察が来るからと明かりを消して代わりに死神の目を使っているのだ。それで生霊に気づかない、見えないということはあり得ない。
「それともう一つ。二人の状態だが」
こちらも問題だとアドルフは考えるモルテとレオナルドの意識を無理矢理こちらに向けさせた。
「二人の体は炭化していた」
それだけで生霊の本気と思える力具合が分かってしまった。




