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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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躊躇

「全く、話が分からん客だ」

「店長!?」

 突然不機嫌な口調と様子でリビングへと入って来たモルテにディオスは驚いてしまった。

「モルテ、何あったの?」

「どうにか土葬に出来ないかとしつこくてな。処置の不可能と腐敗と言ったのだが納得してもらえなくてな」

「大変みたいだったね」

「みたいではない。火葬など一般的でないから驚かれただけだ」

 これが土葬での埋葬が普通であると思われていることへのギャップだとモルテは椅子に座ると溜め息をついた。

「それで、どう納得させたの?」

「ここにある葬儀屋では土葬は不可能と言ってやった。それでも土葬を希望するなら外で探せとな。火葬以外で受け入れてくれる所などないとも加えてな」

「うわぁ~……」

「完全に行く手塞いだ……」

「それは納得と言うか、そうしないといけないね」

 モルテの言葉に三人の顔は引いていた。

「初めから火葬しかないと受け入れていればよかったんだ。遺体の確認で見ている筈なのにそれでも土葬など考えられん」

「それはずっと過ごしてきた家族だからじゃないかな?」

「それは世間体の問題だ。それがあったとしても無理なこともあるだろう」

 つららの偽善に毒を吐くモルテ。

 納得させるまでの苦労を考えると相手の粘り具合の理解に苦しむところであり、思っていた以上に時間をかけてしまった。


 仕事の話でこれ程までに疲労と時間がかかったのは久しぶりだと思い、ファズマに注文を出す。

「ファズマ、コーヒー」

「はい」

「あと腹が減った。今日は早めに夕飯とする」

「……は?」

 ファズマの料理放棄は半日で終わりを告げたが、まさかの追加注文に目を丸くする。

「モルテ、そうとう疲れたみたいね」

「疲れたに決まっている。だが、火葬は明日だ。今の内にやっておかねばならないこともある」

「それならあたしが適任ね。火葬に必要なものとかも任せてよ」

「ほう、頼もしいものだ」

 つららの援助にこれならば早めの夕飯にも間に合うだろうと考える。

「ならばそれはつららに任せよう。ディオスはつららの手伝いだ。火葬における手順を知るいい機会だ」

「はあ……」

 突然と決まっていく役割にディオスはゆっくりと頷いた。

「私は教会へ行く。連絡はしたが手続きをしてこなければならないのでな」

 火葬など一般的でないから一度に出来るのが一人だけである。

 前もってガイウスとどちらが先にやるのか話していたからよかったものの正式な手続きを踏んで確認をしなければ火葬などしてはもらえない。


 残りの仕事について話し終えると店内からドアベルがなる音が響いてきた。

「ただいまー!」

 次いでミクの帰宅の声も響いた。

「ミクちゃん帰って来たみたいよ」

 つららが言うようにミクが学園から帰って来たのである。

 その直後に廊下を走る音が響き、

「ただいま師匠!」

 モルテに飛び込んだ。

「お帰りミク」

「師匠、朝の話し聞かせて!」

 帰宅したミクに声をかけたモルテであるが、ミクの要望にリビングにいたディオスとつららが苦笑いを浮かべた。

「ミク……」

「急いで帰って来たのそれ……?」

 朝の約束をしっかりと覚えていたミクにディオスとつららは戸惑ってしまった。

 しかし、モルテは冷静であった。

「そう焦るな。ファズマ、コーヒーはまだか?」

「もう出来ます」

「師匠~!」

 まさかのコーヒー催促をするモルテにミクが拗ねた。だが、そんなこと知らないとファズマがキッチンから淹れたてコーヒーを持ってテーブルに置いた。

「どうぞ」

「ふむ」

 そう言われてモルテはコーヒーを飲んだ。

 キッチンの調理台か新しくなったことですぐにお湯が沸きコーヒーを出せるのは大いに嬉しいことであるとモルテとファズマは思っている。唯一欠点を上げるとするなら、お湯がコーヒー豆を挽くよりも早く沸くことくらいである。

「ねえ、師匠~!」

「ミクには菓子だ」

「ファズ……」

「要らねえなら俺らの茶菓子にするが?」

「いる!」

 未だに粘るミクにファズマが菓子で気を反らすことに成功した。

「ならカバン置いてこい」

「うん!」

 菓子が食べられるのならと急いで部屋へと向かうミクを見てまた苦笑いを浮かべるディオスとつらら。

「あらら……」

「また……」

 菓子に釣られるのならまだ子供であるが、少しだけ心配になってしまう出来事である。

「さて、少し休憩をしたら取りかかるとするか」

 ファズマの機転によりゆっくりとコーヒーを飲めるようになったモルテが全員に休憩時間を言い渡したのであった。

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