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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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密談

 モルテの率直な言葉に場が静まり返った。

 そんな中でディオスは声に出してはいないが内心で焦っていた。

(これって、もしかしてまた!?)

 ディオスの焦り、嫌な予感。それが的中することになるのは少し後である。


 無言の静寂を破ったのはアドルフの溜め息であった。

「焦るなモルテ。長くここにいたくないのは分かるが、もう一人いるんだ」

「もう一人?」

「俺だ」

 その言葉と同時に来客室へ入って来たのはリーヴィオであった。

「リーヴィオさん!?」

「何だ、ディオスを連れて来たのか?」

「ああ。しかし、リーヴィオもいるとは驚きだな」

「少し前にもう一人の身元が判明してな。その死因結果の報告書を持って来てくれたついでに話に加えることにしとんだ」

「なるほど」

 リーヴィオが何故警察署にいるのか納得するモルテ。


 リーヴィオはアドルフの隣の椅子に座ると報告書をモルテとガイウスに見せた。

「二人の死因は全身火傷による火傷死だ。どちらも酷く焼かれていたが、顔はそれほど焼かれていなかった」

「え?どういうことですか?」

 リーヴィオの説明にディオスが何故と短い声を上げた。

「低かったかぁ、わぁ~ざと残したかねぇ~?」

「そんな所だろう。加えて、肺が黒くなっていたんだが手足を縛られていた様な形跡がない」

「至近距離で付けられたか……」

「人間の仕業ならな」

 徐々に険しい顔つきになってあえて核心部分を話さずに憶測を述べていく死神達。

 その話に質問したいところが山積みであるディオスがその雰囲気から臆してしまい聞けずにいた。

「確かに、人間の仕業ならなわざと顔を燃やし過ぎない様にすることは難しいだろうな」

「殺すぅつもりでやぁるなら、分っからないくらいに燃やすだろぉな~」

「そうだな」

「それと、発見時に火を消した様子がなかった」

「濡れてもぉいないのか?」

「濡れてもいないし周りにそれらしい様子もなかった。それに、倉庫街に何かが燃えた様な物も捨てられていなかったことも分かっている」


 アドルフの言葉に死神全員がやはり人間の仕業ではないと決め、モルテが核心へと話の舵を変えた。

「焼死体は喰われていたんだな」

「ああ」

「二つとも綺麗にな」

「やぁぱりぃ生霊(リッチ)だったかぁ~」

 素直に焼死体が生霊の仕業であると認めたアドルフとリーヴィオ。


 二人としては生霊でないという理由で核心の話をしなかった訳ではない。

 今回は色々とおかしい所があり、二人では見過ごしている部分があるのではと考えてモルテとガイウスを呼んで状態と状況を話して聞き入ったのである。

 それでも実りはあまりなかった。生霊である以上は死体の状態から得たい情報がなかなか得られないのである。


「そぉ~なると難しいぃなぁ~」

「火を扱う生霊は多い。一つに絞るには情報も決めてもない」

「レオナルドと同じか……」

 モルテとガイウスの言葉にガックリと肩を落としたアドルフにモルテが怪訝な表情を向けた。

「レオナルドと同じ?……アドル、先程から思っていたのだが何を焦っている?少しばかりお前らしくない」

「焦りたくもなるな。同じ場所で接点のない二人が死んでいるんだからな」

「は?」

「そぉれ本当かぁ?」

「現段階という言葉が付くがな」

 それだけでもアドルフか焦る理由が察しられる。

「無差別か」

「生霊らしいと言えば生霊らしいがそれだけではないみたいでな」

「それは?」

「バルダッサーレ商会から早期解決を言われてているんだ」

「ああ……署長と副署長がぁいないんだったなぁ~」

「ああ」


 例の一件で署長と副署長がいなくなったアシュミスト警察署ではまだ誰も二人の後がないという異例の事態になっていたのだが、アドルフ達、良心の警部達が中心として動いているために大きな問題が起きていなかったのだが、いないことに対する付けが今になって突き付けられた形である。


「だか、それがあった所でこちらの言いたいことは変わらない」

「きついことぉ言うな~」

「事実だ」

 フンと鼻を鳴らして不機嫌を張り付けたモルテにアドルフが溜め息をついた。

「その通りだな。ガイウス、すまんがしばらく倉庫街の監視を頼めるか?俺も出来るだけ協力をする」

「まぁ~、俺の担当区だからなあ~。犠牲が出たとなったら監視強化しないわけにいかないよなぁ」

「助かる」

 これで生霊がどの様な動きをするか分からないが動きにくくなると思う。

「そちらの対策はどうなっている?」

「出来るだけ夜に出歩くなとしか言えない所だ。あそこは夜遅くまで働く者がいる」

「そうか」

 警察側の対策を聞いて、モルテはすぐに興味を変えた。

「それで、焼死体のことだが」

「あ、ああ……」

 あまりの話の変えように死神三人が戸惑ってしまったが、すぐにリーヴィオが気を取り直して違う報告書を示し話し始めた。


 ここまでの会話、ディオスは疲れ果てていた。

(終わった……?)

 苦手で嫌いな死神の会話にディオスの精神はすり減っていたのだった。

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