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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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二つの記事

 朝食に出された芳藍料理を食べ終えての感想は、食材の味がこんなにもすることの驚き、そして美味しい。であった。

 しかし、この料理に納得していない者が二名。作った本人であるつららと葬儀屋フネーラ料理担当のファズマである。

 つららとしては使い慣れていないアシュミスト食材ではどれだけ工夫をしたところで納得する味が出せないとなこと。

 一方のファズマは芳藍にある食材かアシュミストにない以上は同じ味を作ることが間違いであり、作れる物にも制限がある。加えていくら工夫をしたところで似ていないことは仕方のないことであると言う。

 このまま話は平行線。と思われていてが、ファズマとつららが二人でアシュミスト風芳藍料理を作るということで早期決着した。

 この話は朝食後の休憩一杯を使われることとなりその間、学園へと行く時間になったミクが深刻な顔をして新聞を読んでいるモルテを気にして少しでも長くいようとしたが遅刻するからと促されてしまい、帰ったら話すと約束をしたことでようやく出て行った。


 残った者達はもう少し長い休憩として各々コーヒーや緑茶を飲みながら本題へと入った。

「それでモルテ、難しい顔して何読んでたの?」

「ふむ、これだ」

 つららに促されてモルテは読んでいた新聞の記事を上にしてテーブルに置いた。

 置かれた新聞を覗き込むディオス、ファズマ、つらら。

 すると、つららが早々に困った様子を浮かべた。

「モルテ、字読めない……」

「芳藍と文字が違っていたな。ファズマ、すまんが読んでくれ」

「はい」

 シュミランと芳藍では使われている文字が全く違うことを思い出したモルテはファズマに記事を読むように促し、ファズマは快く記事を読み始めた。



 本日より倉庫街ドゥーエ区に新たに建てられたバルダッサーレ商会の第5倉庫が本格的に活用されることとなった。これによりアシュミストへの物流はさらに増えることになり、さらなる発展が期待されている。―――



 新聞の記事を読んではみたがどこが気難しくなるのか分からなかった。むしろ、アシュミストの発展を期待されているし期待出来る出来事である。

 バルダッサーレ商会といえばアシュミストにおいて一番の商会である。

 利点しかないような記事にどこに問題があるのかとバルダッサーレ商会のことを知らないつららも含めて三人が頭に疑問符を浮かべた。

「店長、これのどこに問題が?」

「その記事だけでは特に問題はない」

「それならどうして?」

「これだけではだ。次のページに載せられている記事と合わせて問題なのだ」

「次?」

 モルテに促されてディオスとファズマが新聞を覗き込んだ。つららは文字が読めないので聞かされ待ちである。

 そして、問題と思われる記事をディオスが見つけて読み始めた。



 本日未明に倉庫街において二人の焼死体を仕事に訪れた者が発見した。

 遺体は全身が焼かれており性別および身元特定に繋がるものが見つかっていない。

 警察は事件と調査をしており、身元の情報提供を呼び掛けている。―――



 新聞の記事を読んでディオスが顔を歪ませた。

「うわぁ……」

「焼死体か……」

 焼死体が倉庫街で見つかったというのは記憶している限りないことだとファズマは顔を歪ませた。


 そもそも倉庫街は10の区画に別れており、真夜中になると裏取引や訳ありの者が集まりやすい。そうすると時々であるが負傷している者が転がっていることがある。事件や殺人を犯せば見回りの警官に見つかる恐れもある為にそう言ったことは余程の理由がなければ行わない。

 たが、これは違う。遺体を焼くと煙と臭いに光で何かが燃えていると分かるものであるが発見されたのが仕事に訪れた時間帯であるから早朝だろうと思われる。その間に誰にも気づかれず、見回りの警官も見つけていない。

 異常であるが先程の記事を思うと理由が僅かばかり弱い。


「モルテ、これとさっきの記事のどこが問題なの?」

 バルダッサーレ商会の倉庫は利点。焼死体はただ気づかれなかっただけと考えると、この二つが繋がりが見えない。

 そんなつららの言葉にモルテは恐い表情を浮かべて言った。

「遺体があった場所が載っていないのだ」

「場所?」

 それを聞いてディオスとファズマは改めに記事を目にし、つららは聞かされた内容を思い返していた。

「店長、遺体は倉庫街ですが?」

「倉庫街のどこだ?」

「それは……」

 モルテが何を言いたいのか分かったディオスは口を閉じた。

「恐らく、バルダッサーレが情報を規制したのだろう。これからという時に遺体が同じドゥーエ区にあると知られたら足元を救われる恐れがあるからな」

 モルテが何を難しい顔をしていたのか理解した三人。

「いずれにせよ、とんでもない方法を取ったものだ」

「そうね」

「どういうことですか?」

 モルテとつららの重たい声で発せられた言葉にディオスが尋ねた。

「人を焼くというのはだな、もっとも(むご)い殺し方なのだ」

 モルテの口から殺害方法が語られたその時、店内に置かれていた電話が鳴る音が響いた。

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