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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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炎上

 日が沈んで空が闇に染まり、しばらく前まで付いていた街頭が消えたアシュミストの倉庫街では訳ありの者達が密談を行っていた。

「報酬はこれでいいか?」

「……いいだろう」

 提示された金額にいかにも汚れ仕事を請け負いそうな小汚い男が一つ頷いた。

「それよりも、前の報酬を早く!」

「そう焦るな」

 小汚い男にせかされて妙に小綺麗な男が前の仕事の報酬を小汚い男に渡した。

 小汚い男は報酬を確認するとしっかりと握りしめた。

「確かにもらった」

 前もって提示された金額通りであったことに小汚い男は内心で安心したが、目の前の小綺麗な男にそれを悟らされない様に必死であった。

「それでは今後も頼むぞ」

 だが、そんな小汚い男の様子など手に取るように分かるという様子で小綺麗な男はしっかりと首輪をかけた。


 その時、小綺麗な男の耳に微かであるが何かが鳴く声が聞こえた。

「ん?」

 こんな夜更けに一体何が鳴いているのか分からない。遠くから鳴いているのか分からないがそれは犬や猫ではない。聞いたことのない声に鳴き声と鳴き方である。

 そして。

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」

「ひぃっ!」

 突然小綺麗な男の体が青白い炎を上げて燃え出した。

「た……たす……」

 助けを求めるように伸ばしたその手は小汚い男に触れるこなく崩れ落ちた。

「あ……あぁ……」

 小汚い男の目の前で炎はそのまま小綺麗な男を燃やし、突然として消えた。

 そこにあったのは先程まで生きていた小綺麗な男の焼き爛れた焼死体であった。

「な……何が……」

 突然青白い炎を上げて燃え出し、消えてしまった状況に小汚い男は訳が分からず怯えていた。

「ひぃ!?」

 小汚い男の耳に掠れた何かが鳴く声が聞こえた。

 普通なら何とも思わない所だが、今は目の前の状況があるために恐怖しかない。

「いや……た、助け……」

 急いでその場から逃げようとする小汚い男。だが……

「いぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 青白い炎は逃がさないと小汚い男の体を包み込み燃やし始めた。

「いぎぁ……だれ……」

 そして、小汚い男もその場に崩れ落ち、青白い炎によって焼かれることとなった。


  * * *


 時間は流れ朝。

「おはようミクちゃん」

「ん……おはよぉ~」

 キッチンから出てきたつららの声にミクがまだ眠そうな声で返事をした。

「ツララさん、もしかしてこれって……」

「そう、芳藍料理」

 テーブルに並べられたつらら特製芳藍料理を物珍しそうにディオスが目にしていた。


 何故つららが故郷の料理を作ったかというと、ここ数日で新店舗の見学をかねてファズマの料理目当ての見学者に散々料理を作ったファズマがふてくされたのである。

「しばらく作ってやるか!」

 と、ものすごく嫌だったのかひねくれてしまい全く料理を作ろうとしないのだ。

 それでもすぐに担当だから作るだろうというのが全員の見込みであるが、問題はその間に誰が料理を作るかであった。

 モルテは気が進まない限りは作らないし、ディオスに至ってはまだモルテが満足するような味付けは元より量を多く作ることが出来ない。加えて時間がかかる。そういうわけでつららに白羽の矢が立ったのである。

 つららもお世話になっているからと快く受け入れてくれた。

 アシュミストで食べられている様な料理は出来ないが故郷の料理を作ることが出来るからと前もって道具屋息子が置いていった調味料があるから問題なく料理を作ることとなったのである。


 そして、テーブルには芳藍料理。特に目を引くのが炊き上げられた白い米と茶色のスープである。

「これ、コメですか?」

「そう、炊くとふっくらするの」

 コメを使った料理と言ったらリゾットくらいしか思い浮かばないディオスは米だけで料理が出来ることに驚いた。

「それと、この茶色のスープは?」

「それはお味噌汁ね。具は卵と玉ねぎね」

 実は地味に味噌汁の具材に悩んだつららである。

 食べやすいよりも今ある具材で出来る味噌汁を考えて、モルテの元でしか目にしない食材があるために普段から食する具材がなく、やっとのことで卵と玉ねぎを使った味噌汁にしたわけである。

 他にもテーブルにはつららが妥協しながら食材を変えて工夫した芳藍料理が並べられた。


「これで全部ね。モルテ、準備出来たよ」

「ふむ……」

 作った料理を全部テーブルに置いてモルテに声をかけたつららであったが、新聞を読んでいるモルテの反応が鈍かった。

「どうかしたモルテ?」

「……少しな」

 つららに声をかけられたモルテであったがその顔はどこか深刻そうであった。

「師匠?」

「店長、どうしたのですか?」

 ファズマもミクもここまでモルテが深刻な顔をしていることが気になり尋ねるが、モルテは手早く新聞を畳んだ。

「朝食が冷める。食べよう」

 説明よりも朝食を選んだモルテに全員が唖然としたが朝食の祈りを捧げると言われて気持ちを変えて祈りを捧げた。

「いただきます」

 その間につららが食べる時の挨拶をして先に手を出したのであった。

途中で、「まるで夫婦の様だ」と書きたかったのはここだけの話。モルテは女性ですが外見が男ですので……

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