閑話 見学会
新店舗となった葬儀屋フネーラへ最初に訪れたのはこの男であった。
「おはようございます!」
鳥の被り物を被り郵便を届けに来たマオクラフであった。
「おはよー!」
「おはようございますマオクラフさん」
「おう、おはようさん。これ手紙な」
カウンターに座っているミクとディオスから声をかけられたマオクラフは持って来た手紙を渡すと店内を見渡した。
「中は前と同じくらいか?」
「置くものが同じだからと広くしなかったんです」
「その代わりお仕事と倉庫が広いんだよ!」
「へえ、そうか」
ディオスとミクから新店舗の話を聞いたマオクラフは興味が沸いていた。
「あれ、マオ君?」
「ん?ツララ!?」
「マオ君おひさしゅう。相変わらず被り物被ってるね」
「これ俺の防具だからな」
「そうね」
その時に奥から出てきたモルテとつらら。
つららの登場に驚いたマオクラフであったがすぐに知っている仲だからかつららの挨拶代わりの突っ込みにもいつもの様子で言った。
「ところで、奥もどんな感じか見たいんだけど」
「全て終わってからだ」
「……え?」
さすがに無理だろうなとただの好奇心から言った言葉だが、あっさりとモルテが許可したことにマオクラフが驚いた。
「どうせ気になるとか言って昼にも見たいとか言いに来るだろう」
「いや、まあ……そうかも?」
「全て終わったらだからな」
「分かりました!」
モルテから何度も区議を刺されなからマオクラフは今日の仕事を早く終わらせるために仕事を再開した。
「……いいんですか店長?」
「どうせ今日明日とここへ来るのはマオクラフだけではないからな」
「はい?」
「他にもここへ来ると言うことだ」
「どうしてですか?」
「気になるからに決まっているであろう」
だからモルテはマオクラフにあっさりと店内だけではなく、奥の居住区を見たいという者達を見越して許可を出したのだ言う。
「それよりも手紙は?」
「は~い!」
そして、マオクラフが届けてくれた手紙を受け取ったモルテは一つずつ確認をしながら言った。
そして、モルテの見越しは現実のものとなった。
その日の昼。
「こんにちは」
「お邪魔します~」
チャフスキー葬儀商のアリアーナとアンナが仕事のついでに新しい店舗の見学をしたいと申し出てきた。
「あれ、ツララさん」
「おひさしゅうねお二人さん」
「また来てたんだね」
その際につららを見つけてマオクラフ同様知っている者同士ということで挨拶を交わした。
それからしばらくして、
「こんにちは!」
急いで仕事を終えたマオクラフが馬の被り物を被ったまま訪れた。
「早くないか?」
「いやいや、遅いからな。仕事を一区切り着けて急いで来たんだからな」
ファズマの毒を含んだ疑問にマオクラフは仕事の多さを口にしたのである。
そして夕方には……
「こんばんは!」
「ファズマいるか?」
ファズマの仲間であるザックと昨日手伝いに来てくれたリチアが訪れた。
「ザック、俺ならここにいるだろ。それよに何しに来た?」
「リチアに聞いて新しい店がどんなものか見に来たに決まってんだろ」
「ああ、それなら好きなだけ見て行け」
毒を含ませて素っ気なく対応をするファズマ。
この様な態度を取るのも昼ならともかく遅い時間に来るなという一種の現しである。
だが、夕方に訪れた二人にはもう一つの目的があった。
「それとな、ついでにファズマが作る飯食ってこうと思ってな」
「はあ!?」
ザックの言葉にどっちが目的なんだと睨み付けたファズマであり、結局はその後に発したつららの一言によりまた大人数の食事を作る羽目となってしまった。
そして翌日も新店舗を見たさに訪れる者がいた。
「こんにちは」
「こんにちは……うわぁ、綺麗!」
「中の広さは変わってないのね」
リーヴィオの弟子であるフランコ、エミリア、ロレッタが授業を終えて訪れた。
「なあ、リーヴィオ先生から聞いたのか?」
「ううん、ミクちゃんから聞いたの」
ファズマの疑問に今朝に学園へ行く途中のミクから聞いたのだとエミリアが答えた。
それからすぐに、
「ただいまー!」
「お邪魔します!」
ミクがユリシアを連れて学園から帰ってきた。
「うわー!ここが新しいお店なんだね」
「うん!部屋も見る?」
「いいの?」
「うん!もう遊びに連れてきても大丈夫だって言ってた」
「やった!今度からここでも遊べるね」
「うん!」
店内でわいわいと話していた二人はそのまま軽い足取りで住居区へと駆けていった。
その様子をディオスは微笑ましく見ていた。
そして夕方には……
「見るついでにファズマの飯食いに来た」
「お前らどっちが目的なんだ!!」
ファズマの仲間五人が訪れた時点で嫌な予感がしていたファズマの叫び声がこの日も響いたのであった。




