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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
7章 幻影浮世の狐火
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葬儀屋の新店舗見学

 新店舗の扉をモルテが鍵を開けて中に入ると、店内にあたる場所が意外にも今の店内と同じ位の面積に思えた。

「あれ?」

「思ってたよりも狭い?」

 店の大きさはこちらの方が大きい筈なのに店内が狭いことにディオスとミクが同時に疑問を呟いた。

「ここは向こうと同じ物を置くからな。それなら広くする必要はないだろう」

「そういうものなの?」

 少しだけ期待をしていたのにモルテの方針を聞かされたミクはガッカリした。

「その代わり、ここは広いぞ」

 そう言ってもう一つ鍵を取り出して扉を開けた。

 扉が開けられた部屋には入ったファズマが部屋の目的に気がついた。

「店長、ここは遺体の保管場所ですか?」

「そうだ。そして、奥は仕事で使う物をしまう倉庫となっている」

 そう言ってモルテは奥の扉の鍵を開けて倉庫の中を見せた。

 まだ何もない空間の筈なのにファズマが部屋の目的に気がつけたのは、備え付けられている棚が仕事場とそっくりであったからだ。

「あ、広い!」

「結構あるな。ここなら木材とか大きな物が置けるな」

「収納量も多いかもしれない」

「ここは仕事用だからな。仕事に関係するものは全て収納したいと依頼をして二部屋ほど繋げたのだ」

 倉庫の広さに三者三様の反応を示す。


 今更ながらここが少し前から人が出入りしていたなと思い出したディオス。だから、依頼と聞いた時におかしいと思った。

「依頼?そういえば、誰に改築をお願いしていたんですか?」

 大工に頼むのなら依頼ではなく頼む、もしくは要望をしたとモルテならその様に言うだろうと考えた。だが、依頼となると大工以外に頼んだ様に聞こえてしまう。

 一体誰に頼んだのか気になり尋ねる。

「道具屋だ」

「道具屋さんに?」

「覚えておらんか。前に一度息子と来た時のことを」

「あの時にですか!」

「そうだ。あの時にここの内装を見てもらい希望を伝えた上で改装の間取りを作ってもらったのだ。ここの大工は腕はいいのだが僅かばかりそういったことに不安でな」

 モルテの計画は予想通りに進んだのだ。道具屋が設計図を作りそれを大工が改築する。

 大工が設計図を見た時の顔ときたら、まさかこんな間取り、しかも素晴らしいものだと驚いていたのを記憶している。


 すると、何かに我慢出来なくなったファズマが思いきって口を開いた。

「……店長、そろそろいいですか?」

「何がだ?」

「キッチンが見たいです!」

「あたしも部屋見たい!」

「ちょっ!?」

 そろそろ自分達が見たい所を見たいと痺れを切らしたファズマとミクが堂々と宣言した。

「ふむ、少しばかり早いが見に行くとするか」

「はい!」

「やった!」

 予想していたよりも早く次を見に行くとことになったと思うモルテとようやく目的の場所に行けると喜ぶファズマとミク。その三人を見てディオスは何故か一気に疲れる感覚を味わった。



 仕事部屋から出て店内へと戻りまた違う扉を開けると廊下であり、その奥に一つだけ扉があった。

「師匠、あれは?」

「トイレだ」

「ああ……」

 ようやく住居区に入ったと思ったら最初に見たのがトイレとはどうなのかと幻滅してしまう。

 そんな三人の気持ちを気にせずモルテはさっさと廊下を歩いた。

「ここがリビングとキッチンだ」

 キッチンと言う言葉にファズマがお目当てから反応をした。

 とりあえずモルテが待っているからとリビングとキッチンがある場所へ向かうと、そこは広い空間であった。

「うわぁぁぁ!」

 その広さにミクが声を上げた。

 ディオスとファズマは声を上げていないが、外と反して中が思ったよりも広いことを今になって認識をして驚いていた。

「ここまで広いと思ってなかった……」

「ああ……」

 ディオスがポツリと呟いた言葉にファズマが二度頷いた。


「ファズマ、ここがキッチンだ」

 キッチンへ踏み込んだモルテの言葉にファズマが慌てて向かい、目を見開いた。

「何だこれ!?」

 そこはファズマが予想していた以上の設備が整えられていた。

 調理台は広く幅があり、フライパンや鍋を熱する火の吹き口が三つ。そして特大オーブン。その近くには謎の大きな箱。

「何だこれ!!」

 同じ言葉を二度叫んだファズマはそのままキッチン設備をいじり始めた。モルテ達がいることを忘れて。

「うわぁ……こんなファズマ初めて見た……」

 先程まで騒いでいたのにいつの間にか真剣な表情で設備をいじり始めたファズマの変化にその前の段階が衝撃的であったディオスが引いていた。

「さて、次へ行こう。ファズマ!」

「……は、はい!」

 ここでもモルテは無視をして次に向かうとファズマを無理矢理現実に戻した。


 リビングから出るとすぐ向かいは階段であった。

「上は個室となっている」

「行きたい!」

「慌てるな。まだここの説明が終わっていない」

「ぶー!」

 今すぐにでも二階へと行きたいミクを引っ張ってモルテは一階部分で残っている場所を見せた。

「ここは風呂場だ」

「うわぁぁ!」

 今度はモルテの言葉にディオスが声を上げた。

「店長、これ浴槽ですよね?まさか、お湯も出るんですか?」

「そうだ」

「すごい!」

 シャワーだけではなく浴槽にお湯を張って入ることができることにディオスはお風呂に財閥以来の幸せを感じていた。

「ディオ、何か変」

「だな」

 ディオスの変化にファズマとミクが冷めた目付きをしていた。

 そもそも、風呂一つで変わる理由が二人には分からないのである。


「さて、上へ向かうぞ」

 モルテの言葉にディオスも我に帰って三人一緒に二階へと上がった。

 二階には六つの扉が設置されていた。

「部屋の広さは同じだ。好きな扉を開けてみてくれ」

「やった!」

 そういうとミクが近くにあった扉を素早く開けた。

「ひろーい!」

 そして、部屋に入るとキャッキャッと騒ぎ出した。

「広いって……ミクからしたら広いのか」

 ミクの言葉に部屋を覗き込んでいたファズマが互いに抱いている部屋の広さが違うことを認識した。

「ところで店長、扉が六つあるのはどうしてですか?」

「四つは私たちの部屋だ。残りの二つは予備というか客室だな。もう一つは倉庫だ。仕事以外の物をしまうためのだ」

「そうだったんですか」

 モルテにした質問が帰ってきたことでディオスは部屋の中で騒ぐミクを見た。

「それにしても騒ぐね」

「ああ」

 いつまで騒ぐんだと少しだけおとなしくしてほしいと思う。


「さて、一通り見たことだ。戻るぞ」

「えぇぇぇぇ!」

 店に戻ると言い出したモルテにミクが非難を向けた。

「もう少しいたい!」

「何を言っている。これからはここで生活をするのだ。その時まで楽しみにしておくことだ」

「む~~!」

 モルテに理屈を言われてミクは頬を膨らませて渋々従った。

 こうして、新店舗の見学は数々の驚きに満ちたものとなった。

モルテが5章のラストで不機嫌が治ったのは新たな店舗を手に入れることが出来たからなんです。

言うのが遅れたのは、そこから住みやすいようにと改築を頼んだり色々としていたからです。

ちゃんと出来上がってから言いたかったんですよ。

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