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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
6章 死神と少女
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酒場の集い

 この日の夜、エノテカーナは貸し切りとなっていた。


「全くぅ~、連絡が来ぃた時は驚いたなぁ~」

「それだけいいことがあったと言うことです」

 テーブル席ではガイウスとレオナルドがカクテルを飲みながらエノテカーナに呼ばれた理由を振り返っていた。

「マオクラフ、ブランデー・サワーだ」

「はいはい、お代わりのブランデー・サワーお待ちどうさま」

「一言余計だ」

 レナードの言葉に手伝いをしているマオクラフがカクテルを受けとると、一言添えて差し出してリーヴィオに突っ込まれた。


「ところでさ、よく来れたね。リーヴィオも仕事じゃなかったの?」

「急いで片付けてさっさと切り上げたに決まっているだろう。夜の仕事は担当の奴がやっているから問題はない」

「ですが、クラウディアさんがいますよね?よく許可が降りましたね」

「それを言うなレオナルド!今回はそっちよりも付いて来ようとしたんだぞ!仕事の話がとか言って、それの説得が今まででどれだけ大変だったか分かるか!」

「ああぁ~……リーヴィオ、よぉくやったぁ~」

 リーヴィオをからかうはずが讃える方向へと向かってしまった。

 これはこれでおもしろくないが、リーヴィオか止めていなければ今ごろはレオナルドとガイウスにクラウディアが仕事の話を語りかけて場が気まずい雰囲気になっていてだろう。そうなるとリーヴィオに感謝せざるをえない。


 さて、エノテカーナに死神が集まったのなら死神集会と思いきや、

「アドルフはどうしたんだ?」

「アドルフは仕事みたいだよ」

「あれか……」

「あぁれって確かぁ~、新聞のあぁれぇだよなぁ~?」

「災難ですね」

 アドルフが不参加の理由に話をしていた四人が、カウンターからレナードも含めて首を縦に振ってうんうんと頷く。


 アドルフがエノテカーナにいないのは警察署前に出来た犯罪者の山対処をしているからだ。誰も抜け出せない状況はアドルフも例外なく警察署に閉じ込められている。

 そして、その原因を作った人物を死神は知っているのだが、総じて原因を作るきっかけを作った人物が悪いと意見が一致している。

 アドルフがいないことから死神集会ではない。



「私までご参加させていただけるなんてありがとうございます」

「それはこの集まりを催した人に言って下さい」

 別のテーブル席では深々と頭を下げるオスローにフランコが困った様子を浮かべた。

「でもね、こんなにも早く会えるなんて思わなかった」

「そうね。あの時は話したりないって思ってたけれど、また続きが出来るなんて嬉しい」

「いや、今日はその為に集まった訳じゃないから……」

 エミリアとロレッタの会話に一体何をしに来たのかとフランコは頭を抱えてしまった。


「若くていいですね」

「何を言っているんですか?僕達マオクラフと同い年なんですよ。本当なら死神になっていてもおかしくないんです」

「私達が弟子になるのが遅かっただけですけどね」

「それでも十分に若くて努力をしているではありませんか。私なんて、車の運転の練習をどれ程頑張っても上達せず、つい最近はアリアーナさんとアンナさんが免許を取ったと言うではないてすか。正直なところ、へこむばかりです」

(気にしてたんだ……)

(と言うか、諦めるって選択肢はないんだね)

(オスローさんも頑張ってますよ)

 自分で言って落ち込んだオスローに心もとない言葉を思うフランコとエミリア。唯一ロレッタはオスローを励ましていた。憐れみの目で無言であるあたりオスローには救いようがないが。

 ちなみに、エノテカーナ店内にはアリアーナとアンナはいない。何故いないのかには理由があり、その為にいないのだ。



「何やってんだか?」

「だけど、こんなに集まるなんて思わなかったよ」

 また、別のテーブル席では四人の様子にぼやくファズマをよそにディオスは店内にいる人数に驚いていた。

「なあ、ディオス。一つ聞きてえことがあんだがいいか?」

「何?」

 ファズマが尋ねて来るなんて珍しいとディオスは少しだけ驚いた。

「ディオス、あの話を聞いて安心したつったよな?何でだ?」

「ああ、あれ」

 ファズマが聞いているのはディオスかモルテがした話に安心したと言うことだ。

 あれを聞いたファズマか何故ディオスがそう言ったのか分からず悩んだが結局何も分からなかったのだ。


 真剣に尋ねるファズマの顔にディオスはそんなに大袈裟じゃないのにと苦笑いをした。

「店長って普通だったんだって思ったんだ」

「は?」

 言葉の意味が分からずファズマは声を上げた。

「俺さ、店長が完璧に見えていたんだ。完璧過ぎて、近づきにくいっていうか、どちかって言うと苦手だったんだ」

 ディオスから語られたモルテへの印象と思いに聞いていて意外なことだとファズマは驚いた。

「だけど、話を聞いて思ったんだ。店長は悩みもすれば考えるし、何かが悪かったらどうすれば良くなるのか努力をする。心配をかけないようにとすれば隠す。それが全部、俺達にやっていることを気づせないのが上手いだけで普通の人と同じなんだって。それに、一度決めたら行動に移す、信念って言うのかな?それがものすごく強いものなんだって思ったんだ」

 ディオスが語った話にファズマは衝撃を打たれた。


 モルテと一番長くいるファズマはモルテの行動を何とも思わず、むしろあれがモルテなのだと思っていた。

 それがディオスか語れば違った印象が見えてしまう。

 何事にも億さず勇敢であり、慈悲の名を冠する死神ではない。

 周りに何も悟らせることなく最善の手を考えることで億さない勇敢さと揺るぎない信念を持ち、善意と慈愛を供えた慈愛の名を冠する死神であると。

(こりゃ、ディオスも敵わねえな……)

 人を見る目と言うよりは人をしっかりと見て感じる思いがディオスには敵わないと両手を上げて降参をするファズマであった。


「だけど、死神だけはどうしても好きになれないかな」

 また苦笑いをして白状をしたディオスの困ったという表情にファズマは先程まで考えていたことを中断させてしまい、ふっ、と笑いが口から吹き出た。

「それでこそディオスだ!」

「え、な、何だよ一体!?」

 敵わないと分かった相手が変わるわけでもないのに何を難しく考えていたのか馬鹿馬鹿しく思う。

 分かったところで相手がそのままなのだ。それによって自分がどの様に変わるのかは別だが、態度を変える必要も見方を変える必要もない。

 それに気づかせてくれたディオスは敵わないディオスではなくいつも通りのディオスなのだとおかしくなって、ディオスの背を強く叩くのだった。



 さて、死神とその弟子、そして死神を知る人物が集まっていることから死神関連の集まりと思われるが、残念ながら死神の集まりではない。

あまりにも文章が長くて2分割しました。

一体何の集まりなのか、続きは次回です。

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