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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
6章 死神と少女
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モルテ、怒り爆発

 同じような倉庫が建ち並ぶ倉庫の一つに一人の人物が立っていた。

「ここか」

 モルテはその倉庫を目の前にして睨み付けた。

(手薄なのにも程がある)

 よほど誘拐犯はこの場所が見つからない自信があるのだろうと思うが、それでも見張りくらいはつけるだろうと心の中で吐き捨てた。

 だが、これ幸いにとモルテは無言で扉を思いっきり蹴り破った。鉄で出来た扉を呆気なく。

 その際に何かが割れた音が複数同時に響き、二枚の鉄扉は蹴られた勢いでそのまま垂直に飛んでいった。


 モルテによって蹴飛ばされた二枚の鉄扉はその直線上にいた男二人に直撃した。

「うわぁぁっ!?」

「がはっ!?」

 突然の悲鳴と起きた出来事に倉庫内にいた全員が驚いて光が差し込まれている入口を見た。

「な……!?」

「おい、何でだ……?」

「どうしてここが分かったんだ!?」

 誘拐犯達に動揺が走った。

「師匠?」

 それはミクも同じだった。いや、それ以上だ。

 酷いことを言ったのだから助けに来てくれる筈がないと決めつけていたモルテが一人で来たのだから。

 モルテはそんなこと知るかとばかりに倉庫内へと歩き出した。

「貴様らか、ミクを連れ去ったと言う愚か者は」

 その身から溢れ出る怒りを隠さず、怒りが込められた鋭い言葉を動揺をしている誘拐犯達に睨み付けながら投げつけた。


「それ以上近づくな!」

「きゃっ!」

 突然、一人の誘拐犯がミクを無理矢理引っ張り上げると首元にナイフを突きつけた。

「それ以上近づくな!近づくと切る!」

 その言葉にモルテは足を止めた。

 仲間が発した牽制の言葉に不意討ちを食らって戸惑っていた誘拐犯達が徐々に落ち着きと余裕を取り戻していく。

 どうやって幾つもの鍵を閉めていた鉄扉を扉ごと吹っ飛ばしたのか分からないが、こちらには人質がいる。モルテを懲らしめるための人質が。

 これで形勢は逆転した。その様に誘拐犯達は思っていた。出来たゆとりにやりモルテの怒りがさらに膨れ上がったことなど気づかずに。

 だから、モルテが一瞬でナイフを持つ誘拐犯に駆け寄り、そのまま顔面を殴られて吹っ飛ばされて気絶するまで気づかなかった。

「がっはぁ……」

「な、な、な!?」

 再び起きた突然のことにまた動揺する誘拐犯達。

「私の娘に手を出すな!」

 モルテの怒りがその場に巻き散らかった。

 支えが無くなりバランスを崩しかけたミクは一瞬揺れたが、すぐにモルテが支えた。

「……師匠?」

 支えてくれたモルテにミクは驚きと戸惑いの目を向けた。

 だが、ミクが何かを言う前にモルテはミクを縛っているロープをあっという間にほどいた。

 そして、ミクと同じ目線までしゃがむと怒気が込められていない、優しい声で言った。

「ミク、私が大丈夫と言うまで目を閉じ、耳をしっかり塞ぐんだ」

「え?」

「いいな?」

「……うん」

 モルテの言葉に理由を聞きたい気持ちを抑えてミクは言われた通りに目と耳をギュッと閉じた。


 しっかりと言うことを聞いたミクを見て安心したモルテは引いていた怒りを再び膨れ上がらせると、誘拐犯達を見下した。

「さて、私の娘を危険な目にあわせたのだ。それ相応の報復くらい出来ているのだろうな?」

 体全体を纏っているのは怒りのはずなのに、いたぶるのを楽しそうに見る目に意識がある誘拐犯達は恐れ、戸惑い、引いていた。

「な、何を言うんだ!」

「報復してんのはこっちだ!馬鹿言ってんじゃねえ!」

「元々はお前がやったことだろうが!」

 非はモルテにあると叫び出す誘拐犯達。

「貴様らが言っていることと私が言っていることは全くの逆だ。それに……」

 瞬間、モルテあっという間に三人の誘拐犯を一撃で鎮圧させた。

「報復されると思っていない者の言葉など聞かされるだけでヘドが出る!」

 全く見えなかったモルテの動きに誘拐犯達は声を上げられず、動くことが出来なかった。

 直後に感じられたのはモルテへの恐怖。一つだけである。


「ば、化け物……」

「化け物?はっ、違うな」

 ようやく一人が声を出して呟いた言葉にモルテは鼻で笑い、そのまま狂ったように振る舞った。

「私は死神だ。貴様らの運命を刈り取り、不幸を与える死神だ。さあ、その身に秘められた数々の運命をただ一つを残すのみ刈り取ろうではないか!」

 狂言、はたまた脅し、もしくは絶望の言葉。その言葉は確実に誘拐犯達を恐怖のどん底へと突き落とし、死を与えると言われる死神そのものに見えた。


 それが言い終わった直後、モルテは誘拐犯達を一人残らず報復にかかった。

 拳や蹴りと相手の勢いを利用するだけでなく、普段は見せることも使用することもない力業を叩きつけ、力ずくでコンクリートが敷かれているはずの床に数人の誘拐犯の頭を埋めたり、とにかくトラウマを与えるだけ与え、まさしく報復に相応しい行動を行ったのだった。

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