喧嘩両成敗
電話が鳴る音にディオスは反射的に受話器を手に取った。
「お電話ありがとうございます。葬儀屋フネーラです……はい、本日はどう言ったご用件でしょうか?」
電話は仕事についてであった。
いつも行っていることで慣れてしまったディオスは何事もなく用件を聞いた。
「分かりました。後程そちらにお伺い致します。……はい、それでは失礼します」
用件を聞き入れたディオスは静かに受話器を置いて一息ついた。
「だからファズが悪いー!」
「忘れてたミクが悪いつってるだろ!」
まだ口喧嘩をしているファズマとミクの声が耳に入ったディオスはまた一つ息を吐いて顔を引き締めた。
そして、扉を開けてリビングへと向かった。
「ファズばっかりずるいんだもん!」
「何がずりいだ!ミクがまだ無理なだけだろ」
「はぁ……」
リビングを見てファズマとミクの口喧嘩が収まっていない様子にディオスは溜め息をついた。
「そこまでにしなよ二人とも」
「ディオス!」
「ディオ!」
とにかく止めなければならないとディオスはファズマとミクに割って入るように止めに入った。
「いつまで喧嘩しているつもりなんだよ?外まで聞こえていて迷惑だよ」
「だってファズが……」
「ああ?何だミク?」
喧嘩を止めるように仲裁に入ったディオスだが、それをきっかけに口喧嘩がヒートアップし始めた。
「ファズだけ師匠にいっぱい連れて行かれてずるいんだもん!」
「はあ?ずりいって何だずりいって?」
「ずるいんだもん!ファズばっかり頼まれてるじゃん!」
終わらない喧嘩にとうとうディオスの堪忍袋か切れた。
「いい加減にしろ!」
ディオスの予想していなかった怒声にファズマとミクが目を白黒させた。
「何でそんなに喧嘩になっているのか分からないけど、そんなに喧嘩をする様なら話さない方がいいだろ!」
「だってファズが……」
「ミクが振って来たんだろ!」
「聞きたくもないし知りたくもない!」
ディオスの怒声に反発するようにファズマとミクが原因を押し付けあい、ついでに教えようとするようとする様子もたった一言で切り捨てた。
今までに見せたことのないディオスの様子に口調と素早い反応にミクは驚きを隠せずに、まるで毒でも抜かされたように呆然としてしまう。
ファズマも昨晩にディオスと口喧嘩をしたのだが、その時とは違う様子にディオスが怒っているのだと理解してしまう。
だが、ディオスの怒りが今ので収まる訳ではない。
「ミクは一体、何で妬きになって怒っているんだよ!ずっと怒っていたら聞いてもらえないし聞きたくもない!」
ディオスの言葉にミクは口ごもった。
言いたいことを聞き入れて欲しいだけなのにと。それを聞きたくないとはどう言うことなのか。だが、
「そんなに喧嘩になるようなことをするんだったら、そんなものやめてしまえばいいだろ!」
何で喧嘩になるのか分からないが続けるようなら根本からやめてしまえと叫ばれた言葉にミクが絶望的な表情を浮かべた。
「お、おいディオス、いくら何でもそれは……」
喧嘩をしていたから理由が分かっているファズマがさすがに言い過ぎであると毒気がまだ抜けている様子で慌てて待ったをかけるが、ディオスは一睨みした。
「ファズマもその気になればいつだってやめられたんじゃないの?それをいつまでも続けて……引けないことがあったのかもしれないけど、自重しようとかそうと思わなかったの!」
「何も言えねえ……」
ディオスに言われた言葉その通りであると、ファズマは言い返すことが出来なかった。
決して多くの会話をせずに鋭く突かれた言葉にファズマとミクはどれだけ勝手なことをしてしまい、愚かであったのかと落ち込んでしまった。
「これ以上同じことでの喧嘩はなしだからな!」
念のために更に釘を打ったディオスは二人を交互に見た。
落ち込んでいる様子に反省を見せてくれればいいとが、もしまた喧嘩をされては困る。とにかく二人を引き離したほうがいいと考えたディオスは気持ちを落ち着かせる為に深呼吸をした。
「ファズマ、ハイネロテ病院から仕事の電話あった。すぐに向かってくれる?」
「あ、ああ……」
先程まで怒りなから説教わしていたディオスの声がいつもの声に戻っていることに指命されたファズマは戸惑った。
「何?」
「いや、何でもねえよ」
戸惑ってこちらをじっと見るファズマにディオスは不機嫌な様子を浮かべると、ファズマは慌てて視線を反らした。
「それと、市場まで乗せて行ってくれるかな?」
「何でだ?」
「お昼過ぎたけど昼食を買いに」
「作ればいいだろ?」
「作れると思う」
「無理だな」
ハイネロテ病院に行くついでに市場まで乗せて行ってくれるように頼んだディオス。
ファズマはそれを受け入れてすぐさま車の鍵を取りに行った。
「ミクは店番をお願い」
「え?いいの?」
「何が?」
ファズマと同じようにミクもディオスの言葉に驚いた。
だが、それは違う意味であり、ディオスはその理由を知らない。
「だって、やめたらって……」
「どうしたんだよミク?」
何かを伝えたい様子を見せるがなかなか言わないミクにディオスは困ってしまった。
「ディオス、行くぞ」
「あ、うん!」
店内からファズマが呼ぶ声に返事をするとディオスはまだ戸惑っているミクに笑みを浮かべた。
「それじゃ店番を頼むよ」
「あ……」
そう言って店を出て行くディオスにミクは何も言えず、止めることが出来なかった。
「……本当にしてもいいの、店番?」
ディオスが怒りながらやめてしまえと言った言葉はミクに深い傷として突き刺さり、やりたいと思っていた店番を本当にやっていいものかと困ってしまい、涙が出てしまった。




