墓参り
ディオスとファズマが聖ヴィターニリア教会の駐車場に着いてからしばらく、七人はようやく墓地へと足を踏み入れた。
「もう、話しすぎです」
「ごめんねアリアーナ」
「久し振りに皆の顔を見たらつい」
膨れっ面で歩くアリアーナにエミリアとロレッタが苦笑いを浮かべながら謝る。
あれから先程までずっと聖ヴィターニリア教会の駐車場で立ち話をしていたのだ。主に話を切り出したり話したりしていたのはフランコ、エミリア、ロレッタの三人であり、そこにファズマとアンナが参加をするような形になっていた。さらにディオスに話をふって強制的に会話に参加させたことでアリアーナの気が切れて強制的に会話を中断させられた。
聖ヴィターニリア教会の駐車場での立ち話は45分と長く会話をしていた。
これでは聖ヴィターニリア教会の駐車場を利用しようとする利用者に迷惑であるのだが、ファズマが車を止めてからは停車しようとする利用者はいない為に利用者の迷惑にはならなかった。
だが、聖ヴィターニリア教会関係者は立ち話の様子を見ており、いつまでも立ち話をする様子に不信感を僅かばかり抱いてしまい司祭であるクロスビーに相談していた。
なお、クロスビーはそれを聞いて微笑ましく話が続くようなら聖堂で会話をするように進めようと内心で思っており、その前に会話が強制終了された為に残念に思っているのは余談である。
「あった、ここだ」
墓地に入ってすぐの区にあった墓石の前でフランコは足を止めた。
「グイドさん、今年も来ました」
ロレッタは墓石の前でしゃがむと刻まれている名前を懐かしそうに浮かべて呟いた。
ロレッタの言葉を聞き終えるとアンナが持っていた花束から花を一本ずつとりファズマ達に渡した。
「ほら、ディオスも」
「あ、はい……」
その様子をただ見ていたディオスにも花を渡すアンナ。
「えっと、アンナ、この墓石の人は?」
「グイドさん?グイドさんはリーヴィオさんの医学生と死神の先輩でロレッタの叔父だったの」
墓石の下に眠る人物、グイドがどういう人物であるのか聞くと渡された花を墓石に置いた。
墓石にここにいる全員が花を供えたのを見たロレッタは深く深呼吸をすると祈りを捧げた。
「天国に赴かれた魂達に祈り奉る。願わくばこの祈りがそなた達の安らぎとなり神に祝福されんことを」
「……聖句」
ロレッタが唱えた祈りの言葉がロード教の聖典の一句であることに驚くディオス。
「それじゃ、行こう」
祈り終えたロレッタの言葉に次の墓石へと全員が足を運ばせる。
その途中でディオスはファズマに尋ねた。
「ファズマ、さっきのって聖典の一句だよね?どうして知ってたの?」
「知ってておかしいか?」
「いや、おかしいってわけじゃなくて、医学生でリーヴィオさんの弟子なのにどうして知ってるのかと思ったんだ?」
質問に対してファズマが不機嫌な様子で帰ってきた為に慌てて言い改めたディオス。
質問の意味を理解したファズマは呆れた様子を浮かべた。
「死神ってのは宗教と結び付いてるがそれで聖典を覚える必要はねえ」
「でも、ロレッタさんは……」
「一部の職業ってのは形で聖句を唱えるのもある。葬儀業や医者、警察なんかがそうだ。ロレッタは医学生だから知ってんだよ」
ロレッタが何故聖句を知っていたのか理解したがそれと同時に職業で聖句を唱える必要があったことにディオスは驚いた。
「でも、店で働いているけど聖句を唱えた所を見たことないんだけど」
「そりゃまだ葬式に出してねえからな」
どういうことかとディオスは視線でファズマに投げ掛ける。
「俺等は店から遺体を運び出す時に言っている。そこんところをディオスに見せてねえから知らねんだよ」
「そうなんだ。もしかしてファズマも?」
「覚えるのに苦労したぞ。依頼者の希望でたまに聖典の一文を唱えてくれってのもあるからな。間違えられねえから嫌でも覚えたぞ」
まだ知らなかった店の事実に驚くディオスにファズマは聖典を覚える苦労を語った。
「そういや、ディオスはどうなんだ?」
「……少しなら言えるかな」
ディオスに聖句が言えるのか尋ねると以外にも言えると帰ってきた言葉にファズマは溜め息をついた。よく考えてみればロレッタの唱えた言葉を聖句と理解していたから知っているのだと納得する。
「何話してるの二人とも?」
話が区切りつきそうとした所にアリアーナが入り込んで来た。
「ディオスに聖句を少しな」
「そうなの」
ファズマは素っ気なく答えるとなにやら興味を持ったアリアーナが何か言おうとしたがすぐに口を閉ざした。
「ここら辺ね」
「ああ」
先程の会話とは変わりファズマの表情がアリアーナの言葉によって引き締まった様子をディオスは見てしまい、それが意味するのは何かと思った。




