ど忘れ
ユリシアはディオスが店にいたことに喜ぶと大きく膨らんだ鞄を肩に下げた姿で入った。
「ユリシアどうして!?」
「お兄ちゃんが来ないからだよ」
「え?」
ユリシアの一言に驚いたディオスは目を丸くした。
「お兄ちゃん、電話しても来ないんだもん」
「ああ……ごめん」
何の事かと思い出したディオスは膨れっ面に言うユリシアに申し訳なく思い謝った。
「何だディオス、何か忘れてたのか?」
ここぞとばかりにファズマが茶々を入れた。例の勉強発言の仕返しである。
「一度家に戻るように言われてたんだ。春になるから衣替えしないといけないって言われてたんだけど……」
徐徐に言葉が詰まっていくディオスにファズマは溜め息をついた。
「あのな、それくらいなら言えば考慮出来たんだぞ」
「で、でも、ここ最近忙しかったのに言えるわけないし……」
少し抜けても問題ないというファズマにディオスは慌てて否定した。
ここ最近のアシュミストの葬儀業をいとなむ者達大いに忙しかった。
墜ちた死神となったジーナが殺した犠牲者の葬式の準備に追われ、事件後に備品の補充や事件をきっかけにいきなり殺された場合に遺族に負担をかけたくないというよく分からないことを考えて相談しに来た者達の対応にあたったりと忙しかったのだ。
そうなればディオスが一時的に仕事を抜け出そうとする気持ちはない。
「ミクちゃん久し振り!」
ファズマの言葉にディオスが焦っているすぐ近くではユリシアがミクに気がついて笑顔で声をかけると駆け出した。
「ユリシア久し振り!」
駆け寄って来るユリシアにミクも笑顔を浮かべた。
(あれ?)
その様子にディオスは疑問に思った。
前回ユリシアと久々に会った時、ミクはユリシアの前で笑顔を浮かべるがいなくなるとどこか暗く変な間があったことを思い出した。
この変わり様という違和感は何なのかと考えてしまう。
「おいディオス、聞いてんのか?」
「え、何!?」
「何じゃねえよたく……」
今まで話していたのにそれがディオスの耳に入っていなかったと知ったファズマはまた溜め息をついた。
「あ、ユリシア、それで来たのってもしかして」
「うん。服持って来たよ」
ディオスに言われてユリシアは膨らんだ鞄からディオスの服を数着出した。
「ママからお兄ちゃんの冬服預かって来てって言われたからちょうだいね」
「ああ、うん」
「それとね、今度はお家に取りに来てって言ってたよ」
「分かったよそれは!」
ユリシアから母親であるシンシアの伝言を言われてディオスは忘れていたことに申し訳なく思った。
「そういや、ユリシアは学校じゃねえのか?」
そういえばと思い出したファズマがユリシアに尋ねた。
「学校?学園はお休みです」
「休みなのか。学園に行ってんのか?」
ユリシアの言葉にだから店に来たのかと理解したファズマはディオスに説明を求める視線を送った。
「元々ユリシアは母さんの薦めで学園に通ってるんだ」
「なるほどな」
ディオスの言葉にファズマは今の話を頭に置いた。
その時、店の電話が鳴り出した。
電話から一番近かったファズマがいつも通り受話器を手に取った。
「おはようございます……」
「ファズマ!一体いつまで店にいるの!」
電話をかけてきた相手にファズマはいつも通りの対応をしようとしたらその相手はチャフスキー葬儀商のアンナであった。
「何だアンナか。うるせえぞ、一体何だ?」
「何かじゃないよ!約束すっぽかしてんじゃないよ!」
「は?」
電話の内容にファズマは目を丸くした。
「何かあったか今日?」
「やっぱり忘れてる!前から言ってたじゃん、集まるって!」
「集まる……ああ、あれか!」
「あれか!じゃないよバカ!もう、久々に集まるって言うのに何忘れてんのよバカ!」
「バカは余計だ!」
「何よ忘れてたバカに言って何が悪いのバーカバーカ!」
「アンナそこまでよ!」
一気に話は進み罵倒になりかけた所を受話器からアリアーナがアンナを止めたことで一旦区切りがついた。
どうやな何からファズマはアンナ達と約束をしていたのだがそれをファズマが忘れていた様である。
「たく、今出るから待ってろ!」
そう言うとファズマは急いで受話器を奥と車の鍵を取りに行って戻って来た。
「ディオス、お前も来い」
「ええぇ!?」
ファズマの言葉にどうして自分もと驚くディオスだがファズマはそれを無視してディオスの手を引いた。
「悪いが服は後だ。そのかわりゆっくりとしていけ」
「ちょ、ファズマ!?」
何が何だか訳がわかっていないディオスをファズマは問答無用で店から連れ出した。
21日~30日までお休みします。詳しくは活動報告に載せてます。




