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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
6章 死神と少女
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勉強

 翌日、葬儀屋フネーラはいつも通り営業をしていた。

「ここ違うよ。ここはここを……」

「待って!ちょっと待って!」

 本を睨み付けているディオスにミクが慌てて待ったをかけた。

「ここがこうなるんじゃないの?」

「違うよ。これだと正しい答えが出ない。この式にこれを入れないと」

「むむむ」

 紙に書かれた式をミクが手に持っていたペンでなぞるとディオスが本に書かれている内容をより詳しく砕いて説明するがミクは難しい顔をして唸った。

 ミクは店内で客が訪れない時間をディオスから勉強を教わっているのだ。


 学校に行かなくなったミクは店番をしながら空いた時間を使って本を片手に勉強に費やしている。

 勉強を教えられるのがモルテとディオスのみ。ファズマは文字の読み書きと簡単な計算が出来るのみで学はなく、モルテも仕事でミクに勉強を教える暇がない。その為にディオスがミクに勉強を教える役割を担っている。

 ディオスが店に来るまで一人で勉強をすることが多かったミクであるが教えてくれる人がいると理解出来ないものが理解出来る嬉しさでもっと勉強したいと思うものである。それでも難しい問題や苦手な所では度々首を捻っては唸っている。


「それじゃあ、これは?」

「これはこの部分とこの部分を……」

 ディオスはミクが質問してきた所と本を見ながら頭の中で素早く教えやすい教え方を形作りながら説明をしていく。

(よくやってられんな)

 そのやり取りを耳にしながらファズマは昨夜のことを思い出しながら考えていた。


 ミクが店で勉強をやるのは問題ないがこれからのことを考えるとやはり同じ年頃が集まる場所に通わせたて学ばせた方がいいかもしれないと思っている。

 その為にはどうやって行きたいと思わせるかが問題でモルテとファズマは悩んだがいい策は思い浮かばなかった。

 その続きを今に持ってきたファズマは気づかれないようにミクを見た。


「そうなんだ。ファズも分かった?」

「何で俺に振る?」

 分からなかった所が分かるとミクはこちらを見ていたファズマにどうかと尋ねた。

「だって、ファズ勉強出来ないから」

「あのな、俺は店長から教わっていたんだぞ。それに今さらそんなもん要らねえだろ。勉強なんざ仕事に必要なことだけでいいんだよ」

 ミクの言葉にファズマは片手を上げて払うように手を振った。

「そう言えば、ファズマは学校に行ってたの?」

「行くわけねえだろ。スラム街の人間だったし、自由に学校に行けるようになった頃には俺の年だと金を出さねえと行けねえ。それなら仕事をしながら勉強した方が余程いい」

 ディオスの疑問に自身の身の上を朝笑うかの様にファズマは言った。


 統治方針改正後は学校へ特定の年齢以下なら自由に行けたがそれを過ぎてしまうと入学金という形でお金を払わなければ入学出来ない。

 当時のファズマはその年齢を過ぎたところであった為に学校へは行かなかった。いや、初めから行く気がなかったから今のミクと同じように店で最低限の勉強をしていたのである。


「だけど、前から思ってたんだけどファズマも勉強したらどうかな?」

「は?」

 本から目線を反らして述べたディオスの言葉にファズマは目を丸くして驚いた。

「だって、ファズマ読み書きと計算が出来るだけであとは何もできないから」

「俺はそれでいいんだよ」

「それに、ミクだけ勉強するのって不公平と思うんだ」

 不公平という言葉にファズマはディオスを軽く睨み付けた。

「ディオス、お前俺に何をさせたいんだ」

「え?」

 ディオスはどうしてファズマが睨み付けてくるのか分からず一瞬戸惑ったがすぐに言った。

「だって、ファズマだけ何もしてないのはどうかなと思って」

「は?」

 何だそれと言うようにファズマは変な声を上げた。

「それに丁度計算問題をやってるんだ。多分ファズマこの式分からないよね?」

「そうなの?」

「待てよおい!」

「だからついでにどうかなって」

「だから待てつってんだろおい!どうしてそうなんだ!」

 どうしてもディオスは勉強に参加させたいのだと気がついたファズマは心の中で呟いた。

(ディオス、お前ぜってえ仕返しのつもりだろ!)

 ミクが今解いている方式をファズマが解けないとどうやって見破ったのか分からないが、ディオスの前では否定や嘘は墓穴を掘るだけと瞬時に悟り内心で毒づいた。

 仕返しというのは恐らくファズマがディオスに料理を厳しく教えているからと思われるし。そして、内心では絶対に仕返し出来ると笑っているだろうとさらにファズマはディオスを睨み付けた。

 すると、突然店内に呼び鈴がなった。

 完全に会話に熱が入ってしまった三人は慌ててゆっくりと開けられる扉を見た。

 開けられた扉から恐る恐る店内を覗く来客が顔を出すと顔を綻ばせた。

「あ、お兄ちゃん!」

「ユリシア!?」

 誰も予想していない来客、ユリシアに兄であるディオスは驚いた。

10月後半の予定どうしよう……

あはは、笑っちゃいます。その予定に……

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