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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
6章 死神と少女
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ミクのその後

 ディオスの顔色は文字通り真っ青だ。

「ま、待ってファズマ!生霊(リッチ)って……」

「ああ、危険なあれでディオスが追い回されたあれだ」

 思い出を掘り返すように言ったファズマのの言葉にディオスはやっぱりと血の気が引くのを感じた。

「どうして生霊が?」

「極たまにらしいが、生霊が自制心を持って襲わないことがあるみてえなんだ」

「何それ!?」

「信じられねえよな。だが、極たまにあるらしい、それも一時的みてえだ。店長の経験じゃ長くても8年以上自制心を保ち続けた生霊はいねえらしい。自制出来なくなると生霊の本能で人を殺すみてえだからな」

 生霊にそんなことがあるのかと驚くディオスにファズマは昔モルテから聞かされたことを話した。

「ミクが見えていた生霊はそれだったんだ。その生霊はネストレが入り込んだ時に刈られて店長が駆けつけた時にはいなかったみてえだ」

「だけど、どうして生霊がそこにいたんだ?」

 話は最初に戻った。どうしてミクが生霊を見えたかよりもどうして生霊がいるのか謎だからである。

「それは全員が思ったことだ。ミクに話を聞くと家族は見えていねかったらしい。どうして4才のミクだけがって考えて一つの最悪に行き着いた」

「最悪?」

「家の下に遺体がある」

 ファズマの一言にディオスの表情が強張った。

「それを確かめる為にアドルフ警部が権限を使って床下を掘り起こしたら、少女の白骨遺体があったんだ。その後に色々と分かったんだが死後5年くらい経っていて当時行方不明になっていた11才の少女。埋められたてすぐそこに家が建てられてミクの家族がそこに住むことになった」

「だけど、それでミクだけが見えるのはおかしいんじゃ?」

「ミクが産まれてすぐに住み始めたってことが理由だ。死神の目は遺体の近くに居続けると身に付くんだが、産まれた直後に近くにいるだけで速く死神の目が身に付くみてえだ。墓守や葬儀屋に産まれた子供は物心が着く前には見えるらしい。ミクは偶然にも条件を満たしていたんだ」

 だからミクだけが生霊を見られたんだと言うファズマ。

「だがな、それが死神を悩ませたんだ。家族がいなくなったら父母の親どちらかに引き取られる。そうなったら建前上どうすることも出来なくなる」

「だけど、どっちも引き取らなかった。どうして引き取らなかったんだろう?」

 ミクからしてみれば祖父母に値するのに何故どちらもミクを引き取ろうとしなかったのか。

「言う前に一つ聞くが、ミクの名前ってどう思う?」

「どうって……シュミランぽい名前じゃないってくらいかな?」

「その通り。ミクの両親は二人とも国外の人間だ」

 それが一体何なのかとディオスは首を傾げた。

「父親はイストリアとパシオンとホウラン、母親はプラズィアとスアウィードの国の血を引いているんだ」

「他種族の血を引く混血、クウォーターってこと」

「ああ。ミクの名前はホウランっぽいって店長が言ってたな」

 ミクの名前がシュミランぽくないのはそういうことかと納得するディオス。

「祖父母は国外にいて一度もミクに会ったことがねえ。しかも、引き取るには金銭の問題とか言ってきたんだが、本当はミクの両親が駆け落ち同然で出て行ったことを未だに根に持っているからだろうってのが俺らの考えだ」

 引き取らなかったことの理由が分かるとディオスは小さな怒りが湧いた。

「いくら駆け落ちしたことが許せないからって自分達の孫を引き取らないっておかしすぎる!」

「普通ならそうだろうが向こうはそう思っていねえ。俺らがこれについて言ったところで向こうは聞く耳がねえんだ。感情の問題だからな」

 聞き入れされるのが感情なら拒むのも感情である。つまり、遠回しであるがミクの祖父母に聞き入れさせたいこちらの気持ちはエゴでしかないと言っている。

「……納得いかない」

「だがな、無理に引き取らせてそれがミクの為にならなければどうする?」

「それは……」

 それを言われては答えられないとディオスは言葉に詰まった。

「だから店長はミクを引き取ることにしたんだ。もっとも、ミクが店長になついてしまったってのも理由なんだがな……」

 最後の歯切れの悪さにディオスは気がついた。

「ファズマ、もしかして何か隠してる」

「いや、何も……」

「店長も引き取りたくない理由があったの?」

 ディオスの疑うような視線がファズマに向けられた。

 ファズマはディオスから視線を剃らすように顔を背けるがディオスの視線はまだ離れない。

 沈黙。その沈黙が長く、これでもかと長く続いた。

「分かった話す!」

 そうして、とうとう沈黙に我慢出来なくなったファズマが降参をした。

「店長はアシュミストに定住する気がないんだ」

「え?」

「店を引き継いだのも条件を出したからだ。その条件ってのが、長くて20年アシュミストに住む。それが過ぎたら離れるってことだ」

「え!?」

 モルテが出した条件にディオスは予想外で目を見開いた。

「そもそも店長は繋ぎとして店を引き継いたんだ。店の後継者を作ると後は任せて流に戻るつもりだったんだ」

「流って確か旅をする死神のことだったはず。どうして店長は流に戻ろうなんて?」

「それは俺も聞いたんだが、店長は旅が合っているとか、しなければダメとかよく分からねえ言い方で本当のことを言わねんだ。」

 どうやらモルテにも何か抱えている事情があるのだとディオスは思った。

「だから、長くて20年ってことは今日か明日には出て行くってこともある。それをミクが一人立ち出来るまで見守る必要が出来たから店長は離れられなくなったんだ。負い目もあるからな」

「負い目?」

 ミクを一人前にするからそれまで居続けることになったのは分かったが、負い目とは何かと視線を向ける。

「アシュミスト統治方針改正はこの事件とミクの生存を利用したからだ。そん時の風潮もあったんだが店長はミクを利用したことを負い目に感じている。だから居続けることにしたんだ、ミクの為に」

「だけど、それでも期限が過ぎたら街を出て行く」

「ああ。後13年あるんだがこの事をミクが知ったらと思うとな……」

「ミクが可哀想だ」

 モルテの抱えている事情が慕っているミクには可哀想過ぎる話であるとディオスは呟いた。

後程10月の活動について報告を載せます。

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