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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
5章 アシュミスト連続殺人事件
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閑話 モルテの疑問

 ある夜のこと。

 この日もディオスは何かを考え込んだ表情を浮かべていた。

「今度は何考えてんだディオス?」

 そんなディオスにファズマが尋ねた。ここ最近ディオスは何かと考え込むようになってしまったのである。

 考え込んでしまう理由に心当たりがある。ディオスが死神のことについて多く知ったからである。

 死神はその存在と力を秘密にしなければならない。もしも死神が持っている力の使い道を外して堕ちた死神となってしまったら、死神は存在の秘匿と周りに被害が出ないように堕ちた死神を殺さなければならない。

 その殺すということをディオスは納得できておらず、度々悩んではファズマと問答を繰り返しているのである。モルテでないのは言い出す勇気がなく、言い出したら言いくるめられそうだから。ファズマなら歳が近い為に気軽に話せる為に声をかけられるのである。

 だからファズマもまた問答だろうと思っていた。

「あ、ファズマ。いや、その……」

 声をかけられたディオスはファズマから目線を反らした。

 今までにない反応にファズマは腕を組んでどうしたのかと思った。

 ディオスはファズマに目線を向けては反らすとどことなく視線が定まっていない。

 そして、考えても出ないと諦めたディオスは溜め息を吐くと思いきって言った。

「店長って本当に女性なの?」

「は?」

 思いもしないと言葉にファズマは目を丸くした。

「ディオス、店長が女ってことは知ってるだろ?」

「し、知ってるけど店長の女性らしい姿が見たことなくて……」

 知ってるなら聞くなとファズマは溜め息をつくが少しだけ思いに浸った。

(まあ、分からねえでもねえけど)

 ディオスが言いたいことが分からないわけではない。

 モルテはいつも男が着るような服装で日頃を過ごしている。しかも低い声がモルテを男であると誤解を生んでしまっている。

 ファズマもモルテか何故男装しているのか分からないし女らしい格好をしているところを見たことがない。

 だから疑問に思うのも仕方のないことと言えば仕方がないのたが、

「つうか、エノテカーナで店長が女って聞かされてんだろ?どうして今ここでそれを聞くんだ?」

「店長が堕ちた死神に襲われた理由が本当に女性だったからか疑問に思ったんだ」

 堕ちた死神が本能でモルテの性別を見分けたことを知らないディオス。

 例え知ったところで本能と聞いてそれで納得するかと聞かれれば難しいところである。

「犠牲になったのが女なんだ。店長が女と分かって襲われたのなら女なんだよ」

 ディオスに無理矢理理解しろとファズマは言うがどうも納得していない。

「そんなに納得いかねえなら見に行きゃいいだろ!」

「え?見る?」

「今シャワー浴びてんだ。覗きに行けばいいだろ!」

「な!?」

 納得しないならとファズマのディオスにとんでもない提案を出した。その提案を聞いたディオスは顔を赤くして慌てだした。

「な、な、な、何言ってるのファズマ!!もし店長が女性だったらどうするんだよ!」

「待ておい!さっきまで女じゃねく男かもしれねえつってたディオスが言うのか!」

「それとこれは話が別!」

「別じゃねえ!男だったら覗きに行ったって何とも思わねえだろ!行くのをためらっているってことは店長を女かもしれねえと見てんだよ!」

「何だよそれ!知らないから!大体、シャワー中に覗き込むって何考えているんだよ!」

「確認に行けってんだ!」

「無理に決まってる!そもそもきっかけも理由もなしに行ったら怒られる!」

「その心配はねえ。店長からタオル届けるの頼まれているからな」

「何で持ってるの!?」

 覗くなど論外とファズマと押し問答を繰り返すディオス。だが、最後にタオルを手にして見せたファズマにディオスは文句と思考が現実に追い付かない程のダメージを負ったのであった。


 そして、シャワー室前ではファズマが顔を青ざめているディオスの背後にしっかりとにげださないようにしっかりと捕まえて構えていた。

 ディオスが何故ファズマに捕まっているかというと、あの後、どうにも覗く覚悟をしないディオスに痺れを切らして無理矢理捕まえてシャワー室前まで連行したのである。

 これで準備万端とファズマはシャワー室にいるモルテに向けて叫んだ。

「店長ー!タオル持って来ました!」

「そうか」

 ファズマとモルテの声にディオスは二度肩を震わせた。

「ならばタオルをくれるか?」

「はい」

 そうして、シャワーシャワー室の扉をおもいっきり開けて、タオルを持たせたディオスをおもいっきり押した。

「うわっ!ファ、ファズマ!!」

 予想はしていたが抵抗出来ずシャワー室へと入れられたディオスは湯煙の中で慌てて振り返り叫んだが、当のファズマは全力で逃げた後であった。

 すると、突然背後から視線を感じたディオスは振り返ってはいけないと分かっていながらも恐る恐る振り返りると、モルテと目が合ってしまった。

 赤い髪は濡れており、いつも右目の眼帯を隠している前髪はかかっておらず代わりに右目を閉じていた。

 まさかモルテと目が合うとは思っていなかったディオスは視線を外そうと至るところに視線を反らし続けて……

「す、すみません!!」

 気まずさと恥ずかしさからタオルを放り投げてその場から全力で逃げた。


「アハハハハ!アハハハハ!」

 リビングに逃げ込むとファズマが、大笑いをしており、ディオスは顔を真っ赤にしていた。

「ファズマ!」

 もう怒っているのか恥ずかしいのか分からないディオスはファズマを睨んだ。

「だって、逃げる時のあれ!おかしいだろ!」

「それはファズマが押したからだよ!」

 ディオスがシャワー室から逃げる時の様子にファズマはおかしく思い笑っていた。

「それにあれ何!?あの暴力的な大きさは!」

「ちょと待て!しっかり見てんじゃねえか!」

「不可抗力!ファズマが押したから!」

 そして、不可抗力とは言えしっかりとモルテの大きな丸みを見てしまったことを言いファズマに突っ込まれた。ディオスとしてはあんなものどこに隠していたか謎でしかない。

 すると、シャワー室から足音が響き、リビングに怒った表情を浮かべたミクが飛び込んで来た。

「ファズ!ディオ!」

「ミク、どうした……」

「シャワー浴びてたのにどうして覗いたの!」

「え?」

「は?」

 ミクの言葉にディオスとファズマは目を丸くした。

 そして、ミクをよく見ると髪が濡れていた。そこで二人はようやく理解した。ミクはモルテと一緒にシャワーを浴びていたのだと。

「文句ならファズマに言って!」

「何逃げようとしてんだ!」

「そもそもファズマが押したから!」

「ミクの体見ただろ!」

「見てない!」

 責任を押し付けようとディオスとファズマの押し問答が再び開始された。

 だが、そんな押し問答も長くは続かなかった。

「ゆるさないんだからーー!!」

 そう言って手に持っていたタオルでディオスとファズマを叩き始めた。

「ちょ、待ってってミク!」

「ミク、少し落ち着いて!」

 タオルを振り回すミクに地味にまた逃げることとなったディオスとファズマ。そして、二人を追い回すミクの様子を遅れてモルテが見に来た。

「賑やかなものだ」

 眼帯をしていない右目を前髪で隠したモルテは三人の様子に女として温かく見ていた。

5章完。

予定を変更して設定資料(一部キャラ設定)は明日投稿します。

6章は10月1日からです。

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