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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
5章 アシュミスト連続殺人事件
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後処理

 エノテカーナでは誰一人として口を開くことはなかった。ただ、ディオスが手に持っている懐中時計が動く音しか響いてこない。

 ジーナを止める為に出てから随分と時間が経った。

 死神の罪を聞いたディオスはモルテ達が無事に戻って来ることを願うと同時に止めることが殺すということを複雑に思っていた。

 しばらく経った頃、突然エノテカーナの扉が開いた。

「たっだいま~」

 エノテカーナに入って来たのはマオクラフを先頭にジーナを止める為に出た四人の死神達であった。

「ジーナは?」

「止めた」

 レナードの言葉にモルテが簡単に言った。

 それを聞いたディオスはジーナを殺したのだと理解して暗い表情を浮かべた。

 他に方法があるのではとレオナルドに尋ねたのだが帰ってきた答えはなしであった。

 過去に同じような考えで試した者がいたのだが、思いつく限りのことをやり、結局は無意味であったのだ。

 だから、何も出来ないディオスは今回の事件に関する結末を聞くしかなく歯痒く感じていた。

「しっかしぃ~モルテは本当~に怖いなぁ~」

「本当だ。モルテを敵に回したくないと改めて思ったぞ」

「あれ?俺は?」

「マオクラフは全然だ」

「えぇぇ~」

 今回の戦闘に改めてモルテの凄さを実感するガイウスとリーヴィオ。マオクラフは自分はと聞くが帰ってきた言葉に少しショックを受ける。

「だが、頑張った方だな」

「そおぉ、そおぉ、頑張ったなぁ~」

「何だろう。すごく適当にあしらわれてる気がするんだけど?」

「そぉ~んなことはないぞぉ~」

 そして、二人の言葉に不満を持つ。

「だが、初めてとは言え堕ちた死神に善戦したのは確かだ」

 そこに共に戦ったモルテが珍しくマオクラフのフォローに入った。

 マオクラフの気持ちを尊重すると言ったモルテはちゃんと見ていたのである。

 それを聞いて師としては嬉しく、父親としては複雑な思いを持ったレナードがわざとらしく咳払いをした。

「ところで、ジーナの遺体はどうした?」

「屋根の上に置いといた」

「馬鹿か!」

 ジーナの遺体が置かれている場所がエノテカーナの屋根の上とマオクラフから聞いたレナードは先程まで抱いていた思いを何処かに吹っ飛ばして声を荒げるように叫んだ。

「何で店の屋根に置いたんだ!馬鹿者!」

「馬鹿は何だよ馬鹿って!ここまで展開して持って来るの大変だったんだから!それにどこに置くかも決まってないから仕方なく屋根に置いたんだ!」

「屋根に置く奴がどこにいる!」

 親子の喧嘩か師弟の喧嘩かもはや分からない中、レナードがマオクラフの襟首を掴んで急いで店の外に出た。

「普通は置かないと思いますが、どうして止めなかったのですか?」

 マオクラフの行動にどうして止めなかったのかとレオナルドがモルテ達に尋ねる。

「マオクラフが言った通り遺体を置く場所がないということだ。あそこに置いたままでは警官を引かせたアドルに責任を押し付けられるからな」

 聖ヴィターニリア教会付近はアドルフによって警官の見回りの間が長くなっている。そこで殺されたとなるとそれを手配したアドルフの責任問題となる為に遺体を置くことを避けたのである。だから、遺体をエノテカーナまで運んだのである。

「だからって、屋根のに置きますか?」

「それはマオが面白いことをするだろうからと止めなかった」

「何やっているんだ!」

 屋根に置いた理由がまさかのマオクラフの行動を見て面白いと思ったからと言ったリーヴィオにレオナルドが突っ込んだ。

「しかし、そうなると困ったな」

「何がですか?」

 どこも困っていなさそうな表情を浮かべるモルテの言葉にレオナルドが不審に思いながら尋ねた。

「止めなかったから恐らく後処理をレナードから頼まれる」

「それは全員がやることですが?」

「ディオスをそろそろ店に帰さなければならない」

「え!?」

 困ったと言う理由がまさかのディオスであったことに指名されたディオスは不意を突かれたように驚いた。

「もうおっそぉいからここに泊めるかぁ~?」

「いや、帰す」

 ガイウスの提案をあっさり拒否したモルテはレオナルドに頼んだ。

「すまないがディオスを店まで送ってはくれないか?」

「上のことがありますからね。分かりました」

 レオナルドがモルテの頼みを聞き入れたのを聞いてディオスが慌てた。

「待ってください店長!俺、終わるまで待てますから!」

「不満を抱えているお前をここに置いておくわけにはいかない」

 モルテの言葉にディオスは堕ちた死神を泊める方法に不満を持っていると見抜かれていたことに驚く。

「さて、帰りますよ」

 その隙にレオナルドがディオスの手を握り急いで店の外にでたのであった。

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