断罪
モルテは死神の力を目に纏わせジーナが展開している領域を目視した。
モルテとマオクラフが思ったとおりジーナの周りには領域が何重にも展開されていた。
(まあまあと言ったところか)
ジーナが展開する領域にモルテは辛口の評価を与えた。
自身の周りに何重もの領域を張るのが凄いと思われるが、それ以上の使い手が近くにいるために評価が辛口となったのだ。
そのような評価を出すとモルテは素早くジーナへと近づき鎌を振るうと、ジーナも正面から鎌を振るい刃と刃がぶつかる音が響いた。
すかさずモルテはジーナの腹に蹴りを入れて鎌の刃と刃が離れた瞬間にまた鎌を振るい、それをジーナが慌てて領域の一部を硬くして受け止めると鎌を振るった。
「やっぱり俺要らないんじゃないか?」
足手まといと直接言われたわけではないがやはりモルテの戦闘能力の高さにマオクラフは落ち込みそうになるもモルテから与えられた役目と期待に応える為に気持ちを切り替えた。
そんなことを思っている間にもモルテはジーナに隙を与えない為に鎌を振るい続けていた。
戦い慣れていないジーナに防ぐ行為しか与えさせていないのは意識して領域の展開をさせない為である。意識してしまえば再び領域を何重にも展開してしまう恐れがあるからだ。
「……殺す……」
今までモルテの攻撃を防ぐのに精一杯出会ったジーナが突然口を開いた。
「殺す……殺す殺す殺す!!八つ裂きにしてやる!!」
そう言うと自身の鎌に力を纏わせると再び鎌を振るおうとしているモルテに至近距離から斬撃を放った。
モルテは至近距離から放たれた斬撃を鎌の刃で受け止めたがその勢いで後ろに飛ばされた。
「隙を与えるなマオクラフ!」
「分かってる!」
飛ばされた距離はそれほど遠くなかったが勢いに体を乗せて抵抗することなく飛ばされることを選んだモルテはマオクラフに叫ぶと程よい所で着地した。
「悪いけど逃がさない!」
「お前は関係ない!」
「関係あるね!」
モルテの指示を聞いたマオクラフはジーナに鎌を振るい食らいついた。
モルテ程の激しい攻撃ではない為にマオクラフとジーナは互いに鎌を振るっては防ぐと戦いが均衡していた。
「邪魔だぁぁぁぁ!!」
あまりにも粘り強く食らいつくマオクラフについにキレたジーナが己に課した禁を破りマオクラフに研いだ牙を向け、力を纏わせた鎌を振るった。
「くっ!」
力が鎌に纏うのを感じたマオクラフはそこから斬撃が放たれたのを見て間一髪避けた。
「まだだ!」
ジーナが叫んだその瞬間、放たれたはずの斬撃がマオクラフへと戻ってきた。
「ちょっ!?」
まさかあのタイミングで放たれたと思っていなかったマオクラフは焦った。
モルテからあらかじめジーナが曲がる斬撃を放つことを聞かれていたが、それが今であったと思っていなかった為に自身の思慮が足りなく悔いた。
(まずい!)
マオクラフは今の自分では避けられない、防いだらジーナに殺されると手詰まりになってしまった。
その時、マオクラフと斬撃の間にモルテが割って入ると鎌で斬撃を真っ二つに切り裂いた。
「迂闊いぞ。もう少し注意をしろ!」
モルテに一喝されたマオクラフだが斬撃の心配がなくなるとすかさずジーナに鎌を振るった。
「こしゃくな!」
自身が放った斬撃が綺麗に真っ二つに切り裂かれたジーナは再び鎌に力を纏わせた。
「やらせるか!」
力を纏わせるのを感じ取ったマオクラフが自身が持っている鎌を月鎌に変形させ手に持つとジーナが振るった鎌の刃を受け止めた。
死神の武器は死神個人が好きな形に変形出来るのである。
「お前……」
いささか剣のようにも見える月鎌の湾曲に曲がっている先に自身の鎌をからめられるように止められたジーナはマオクラフ睨んだ。
だが、マオクラフはそれを無視してジーナから力任せにジーナの鎌を放り上げるように奪った。
その瞬間、ジーナに向けて無数の斬撃が飛ばされた。
「くっ!」
ジーナがそれに気がついた瞬間にマオクラフはその場から離れると、ジーナもその場から離れようとして動けないことに気がついた。
ジーナの両足にはいつの間にかマオクラフが領域の応用で作った鎖が絡まっていた。
動けないと理解したジーナはその場で領域を固めて防ぎに入った。
だが、領域の硬さに比べてい飛び交ってくる斬撃の方が鋭く音を立てていくつも張っていた領域が崩れる。
全ての領域を使い放たれた斬撃を防いだジーナはいつの間に当てられていたのか分からない冷たい物を感じた。
ジーナの背後にはモルテが大鎌の刃をジーナの首もとに当てていた。
「堕ちた死神となったその魂、刈らさせてもらう!」
その直後、モルテは戸惑いも躊躇することもなくジーナの首を鎌で切り裂き、一瞬で息を枯らせてその命を終わらせた。
ただし首を切断することはなかった。あくまで世間に同じ方法で殺害された五人目の被害者というように向ける為にめんどくさかったがこのような殺し方をしたのだ。
首から流れる血をマオクラフが辛そうな顔を何とか隠しながらこれからの行動を考えてジーナの遺体と血が流れ出ないように領域を展開して受け止めた。
こうしてアシュミストを騒がせた連続殺人事件は幕を閉じたのである。




