止める役目
次に決めなければならない問題。それは、誰が堕ちた死神になったジーナの相手をするかということであった。それも悪い意味でだ。
「出来ることなら、前のようになってほしくはない」
「あれはレナードの判断が間違っていたことではない。仕方のないことと言って割りきれることではないだろうが、ネストレの実力が強すぎたからだ」
深刻な表情で話すレナードにモルテは厳しい顔つきをしていた。
「……そうだな。おい、聞け!」
モルテの言葉を飲み込んだレナードは未だに資料を見て呟いている死神達に叫んだ。
「これ以上堕ちた死神による犠牲者を増やすわけにはいかないことを知っているな?早いに越したことはない。今夜それを止める!」
レナードの力強い言葉。それが言われた直後、死神達の目付きが怖いほどに変わり、空気がピリピリと鋭く変わった。
「問題は誰がやるかだ……」
「それは私がやろう」
レナードが問題を言っている途中でモルテが割って入った。
「モ、モルテ!?」
「店長!?」
「正気か!?」
モルテの突然の発言は死神達はもちろんディオスにも衝撃を与えた。
「正気も何もやると言っているのだ」
「でも、堕ちた死神は危険なんですよね?どうして店長が止めるんですか?」
ディオスは堕ちた死神の危険性を一部だけ聞かされただけだがそれでもとてつもなく危ないということは分かっている。だから、どうやって止めるか分からないが弱いと言っていた堕ちた死神をモルテ自ら止めようとすることにもしかしたら何かが起こって殺されるのではないだろうかと思ってしまい不安と心配が募っていた。
「奴が私をつけているからだ。ディオスは気づいてないだろうが店を出てからずっと付けられている」
「え……?」
モルテの口から予想していなかった言葉が飛び出しディオスは体から血の気が引くのを感じた。
「そういや、ここに入る時に変な気配を感じたな」
「あ~れはそぉ~いうことだったのかぁ~」
「今も外から感じる」
モルテの言葉に死神達は心当たりがあり、それが何なのか知ると納得した。
「だけど、俺達がここに集まって何かしているってことはバレてるよね?それで止められる?」
「出来るでしょう。死神が集まる場所近くまで来ている。それは、モルテを狙っているからと言っていい。それ以上でもそれ以下でもない。まだ止められます」
マオクラフの疑問にレオナルドがまだ止められる、むしろチャンスであると言う。
「なら、モルテに任せる」
堕ちた死神ジーナがまだモルテを狙っているならとレナードは止める役目をモルテに任せると言い、見回して死神達が頷いたのを見て決定とした。
「あ、ちょっと待った!モルテを囮にするのに一つだけ問題があった!」
「女らしい格好じゃないからか?」
「この格好で女って見破られてるからそれはないからリーヴィオ!俺が言いたいのは一人で出たらすぐに襲われるんじゃないかってことだよ!」
「言われてみたらそうだな」
マオクラフの突然の発言はモルテを囮とする上での予想外の問題点であった。
「多分だけど近くにいる以上、モルテが店から出た瞬間に襲ってくるよ」
「私は問題ないのだがな」
「モルテが強いことは分かっています。ですが……」
「待てモルテ!ここでやられたら店がめちゃくちゃになる!」
「だから影響がない場所まで俺がついて行こうと思うんだ」
地味な問題なのだが堕ちた死神ジーナを止める場所を決めるには大きな問題であった。
「ここは警察署に近いからな。この付近では避けた方がいい」
「そうなると街の外に出るか……いや、それはいくらなんでも怪しまれるか」
「聖ヴィターニリア教会付近なら人気がない。問題なく出来るだろう」
「そぉこしかないかぁ~」
人気がない場所を考えて上がったのは聖ヴィターニリア教会付近で、ジーナを止める場所はそこに決まった。
「決まりだな。そうなると、誰がモルテとそこに行くかだな」
「俺が行く」
「マオクラフ!?」
レナードが次の問題を口にすると直後にマオクラフが挙手した。
「待てマオクラフ!お前にはまだ……」
「父さん、俺だって死神だから。覚悟くらいとっくに出来てる。それに、出来ることと出来ないことの区別くらいつけられる」
マオクラフの口から覚悟と言われ複雑な表情を浮かべるレナードは溜め息を吐いた。
「同じ過ちを起こさせない為か。絶対に死ぬな」
「分かっているから」
返事の軽さに本当に分かったのかと思ってしまうレナードだが方針が決まると指示を出した。
「アドルフ、旧住宅街の見回りをしている警官を頼むぞ」
「任せろ」
「モルテとマオクラフはゆっくりでいい。聖ヴィターニリア教会付近まで歩いてくれ」
「ふむ」
「分かった」
「レオナルドは念のためにに残ってくれ」
「分かりました」
「後は俺の準備が出来たら行動だ」
一通り指示を出したレナード。
終わったのを合図に死神達は行動を開始した。




